【先生のひとりごと】はじめて呼んでくれた日。
これまで「せんせい」として教育・保育・療育に関わってきました。子どもたちから学ばせてもらう日々の中で、自分なりに感じたことを「ひとりごと」として置いていきます。
誰かを呼ぶということはとても尊いものですよね。「あなたに気づいてほしいよ」「あなたに伝えたいことがあるよ」という時に、初めて人は自分ではない誰かにはたらきかけます。
手を伸ばす、顔を向ける、目を合わせる、声を出すことで大人が反応してくれると「気づいてくれた」と安心する。やがて、移動ができるようになるとその人のところまで行くことができます。手で触れる、トントン…のつもりが時々バシッと叩いてしまうこともある、引っ張ったり、もしかしたら噛んじゃう時もある。
親御さんはお子さんがはじめて呼んでくれた日のことを覚えているのではないでしょうか。いつだったかわからないけど、自然と「まま」「ぱぱ」と言っていたかもしれません。
発語が少ないお子さんがいました。「ぱぱ」「まま」、自分の名前の頭文字、好きなキャラクターと好きな食べ物ひとつずつ。あと「いや」がはっきり言えていました。
聞いてわかっていることは多いけれど、なかなか言葉が出ないな、言葉を獲得する時期にコロナ禍だったので、口の動きを見て真似ることができにくかったからかな、そんな話をしながら見守っていました。
1人遊びが主なお子さんでした。ブロックやパズルをしていて、上手くいかないことがあると、怒った大きな声を出して周りに「どうしたの?」と気づいてもらう、という人でした。
「困った時は『せんせい』って呼んでくれたらいいよ」と伝えると「へーへー」と真似て言うことができましたが、何かあったら大きな声や物投げで表現することが真っ先に浮かぶようでした。
そういうお子さんがある日突然、
「せんせ」
とはっきり呼べる日が来る。
「え?今『先生』って呼んでくれた?はあい、なんですか?」
思わず目が見開き顔が綻んでしまう瞬間ですね。子どもも「へへ」と嬉しそう。それから、
「先生!」
と遠くからでもはっきりと分かるように呼べるようになり、「こっちに来て一緒に遊ぼうよ」というように手招きして、自分の隣を指差してくれるようになりました。
家族以外の人を、他の誰でもない「あなた」と認識し必要として、呼ぶことができる。対人関係、社会性の大きな一歩ですよね。その子が自分と家族の枠組みから、外の世界へ踏み出す大事な瞬間です。
こういう瞬間に出会えるから、この仕事はやめられない!
嬉しい時、楽しい時を共有したいと思って、目を合わせてくれたり、名前を呼んでくれたりすることから始まりますよね。ただ、困った時、嫌な時に呼んで伝えることはもう少し先。
苛立ってしまった時、慌ててしまった時にすぐに思い出せるように「せんせい」と呼ぶことを繰り返し伝えます。そのうち、先生は複数いること、それぞれに名前があることに気づいて「○○先生」と呼べるようになりますが、それも大変嬉しいことです。
