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鬼婆の里で、猫に救われる

10月のとある晴れた日、二本松の安達ヶ原に行ってみた。

「行ってみた」と言っても、最初から安達ヶ原に行くつもりがあったわけではない。
適当に国道4号を走っていたら「安達ヶ原ふるさと村」の看板が目に入ったからに過ぎない。

「安達ヶ原といえば、鬼婆だな」

独り言をつぶやきつつ、ハンドルを「ふるさと村」にむけた。

かなりざっくりだが、鬼婆伝説とはこんな話だ。

遠い昔、老婆が病気の主人を助けるため、赤子の生肝を求めていた。
そこへ条件に合致した旅人がやってきたため殺してしまったが、その相手は自分の実の娘で、その赤子は孫だった。事実に耐えきれず老婆は発狂し、以後、旅人を襲っては殺し、殺しては食べる「鬼婆」になったという。

あらすじとしては大体合ってると思う。 能の演目「黒塚」の元ネタとしても有名だ。

このふるさと村は、その鬼婆伝説の舞台となった地であるという。

伝説とはいえ、赤子の生肝を得るために・・・、とは凄く物騒な話だ。鬼婆の伝説がどうして生まれたのかは定かではないらしいが、伝説として残っている以上、それに準じるような「何か」があったのだろうか。

そんなことを考えながら園内を巡っていたら、鬼婆が起居していたという岩屋があった。パッと見ではとても人が住めるような空間も無さそうだったし、仮に住んでいたとしても生活は過酷だったと思う。

これが不動産だったら、生活空間は激狭な上に事故物件と言う最悪の条件で、借りる人も買う人もいないだろう。

他にも宝物殿があって、ここでは鬼婆が使用したという出刃包丁が展示してあった。シリアルキラーが使った得物を展示しているのだ。恐ろしい。

さらに歩くと、鬼婆が退治されたという場所があった。名目上は鬼婆のお墓で、ここが能の演目名「黒塚」の由来だろう。

安達ヶ原の黒塚

遥か昔の伝説だとしても、この地で鬼婆が襲った旅人に対して凄惨な暴力と食人を行っていたというなら、現代で言うとここは「連続猟奇殺人事件現場」だ。そう考えると、背中が少し寒くなった。

馬鹿馬鹿しい、子供じみた想像である事は重々承知の上だったが、それでも思わずにいられなかった。

「本当に、『伝説』でよかった」

気がつけば園内を巡り始めてから1時間以上が経過していた。帰ろうとしていたら、どこからともなく一匹の猫が足にまとわりついてきた。とても人懐っこくて、触っても逃げない。通りかかった従業員の女性が教えてくれた。

「園内で飼っているんですよ。可愛がってあげてください」

お言葉に甘えて猫を触りまくり、撫でまくり、可愛がりまくった。鬼婆伝説の恐ろしさを忘れるために。

最後に猫に救われる

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