紅き人魚
「ああ、喰ろうたわ」
紅い口がそう言うと、紅い鱗で覆われた魚肢を一振りくねらせた。
紅い髪が水の流れに巻かれ、ふわりと揺れた。
「なぜ、喰ろうた?」
銀髪と銀の髭を揺らせて人魚の長が、人魚裁判所の場で問う。
「____人間は、海を穢しにきよった」
と 紅い人魚は応えた。
「喰らわずともよかろうものを。
喰ろうたら己がどうなるかくらい知っておろうに?」
と銀の長が問うと、紅い人魚は嗤った。
「よいわ、永遠の命などくれてやるわ」
唸るようにそう言うと、深紅に光る眼を細めて銀の長を見やる。
「己らが、放っておくから、海が穢れていきよる。
もう この地から 何が失せたか、皆もわかっておろうに?
人間らは、己勝手に穢れで海を染めよるぞ。
元凶を喰ろうて何が悪い?
穢れた海で、生き永らえて何を見る?
海は、人間らのものに非ず。
____穢れし者の血は、海に舞わぬよう、鱶にくれたわ」
そう言うと、紅い口をにぃっと引き上げた。
「こ奴を連れていけ」
銀の長は、静かに目を伏せた。
この作品は、田原にか さんの 毎週ショートショートnote ・お題【人魚裁判所】に お邪魔させていただきました。
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