2025年11月後半の遺伝子治療・細胞療法業界動向:非ウイルスベクター台頭、in vivo CAR-T、編集技術の拡張が加速
2025年11月後半は、非ウイルスベクター技術の台頭、in vivo CAR-Tを含む次世代細胞治療の加速、そしてCRISPR技術の適応拡大と特許強化が目立ちました。主要企業・学術機関による発表を通じ、遺伝子治療・細胞療法の実用化に向けた技術進展が明確に表れています。
1. 眼科領域では遺伝子治療の新潮流が始動
Coave Therapeuticsは、滲出型加齢黄斑変性症(wAMD)や糖尿病黄斑浮腫(DME)を対象とした新規遺伝子治療「CoTx-101」をリードプログラムとして選定しました。
抗VEGF薬の頻回投与が課題となる領域であり、長期発現型の遺伝子治療への期待が高まります。
2. CRISPR編集の新たな応用と特許強化
CorriXR Therapeuticsは、扁平上皮肺がん(LUSC)に対するCRISPR編集の前臨床成果を報告。腫瘍領域でのCRISPR活用がさらに前進しました。
ToolGenは、CRISPR-Cas9 RNPの細胞内直接送達に関する基盤特許取得に加え、香港GenEditBioとのクロスライセンスも発表し、in vivo遺伝子編集のエコシステム構築を加速しています。
東京都立産業技術研究センターとベックスは、国産ゲノム編集技術「UCAY」の編集効率向上とガイドRNA設計ツールの開発を報告し、国内からも技術発展が進んでいます。
3. 非ウイルス性DNAドナーテンプレートの重要性が浮上
CellectisおよびMoligo Technologiesは、「Nature Communications」において、
円形一本鎖DNA(CssDNA)
酵素合成ssDNA
を造血幹・前駆細胞(HSPCs)への高効率な挿入に利用できることを報告。
これらの成果は、ウイルスベクター依存からの脱却を示し、製造性・安全性の観点からも産業的意義が大きい進展です。
4. in vivo CAR-T開発が急伸:投与一本で体内生成へ
Azalea Therapeuticsは、独自のEDV技術によりTRAC-CAR T細胞を体内で生成できる前臨床データを発表。
Kelonia Therapeuticsも、抗BCMA CAR-Tをin vivoで生成するKLN-1010の第1相試験初期データを公表しました。
製造工程を外部化し、患者体内でCAR-Tを誘導するアプローチは、今後のコスト構造とアクセス性を大きく変える可能性があります。
5. AAV・遺伝子治療の最新動向:中枢・筋疾患領域で前進
Solid Biosciencesは、次世代AAVカプシド「AAV-SLB101」を巡り、Andelyn Biosciencesとグローバルライセンス契約を締結。高効率で組織特異性の高い新規カプシド開発が本格化しています。
YolTech Therapeuticsは、一次性高シュウ酸尿症1型(PH1)を対象としたin vivo遺伝子編集薬YOLT-203のIND承認を発表。モデル疾患からの臨床展開が進みます。
Novartis Gene Therapiesは、SMAに対するItvisma®を成人まで適応拡大。AAV治療の対象年齢拡大に向け、臨床上の知見が蓄積されています。
Sarepta Therapeuticsも、ELEVIDYSの非歩行DMD患者を対象としたコホート8における免疫抑制レジメン評価が承認され、適応拡大に向けたデータ取得が進んでいます。
6. 腫瘍溶解ウイルス(OV)領域の強い動き
サーブ・バイオファーマと鹿児島大学は、原発性悪性骨腫瘍に対するOV「Surv.m-CRA-1」の第Ⅲ相医師主導治験を開始。国内発のOVとして注目度が高まります。
ImugeneとJW Therapeuticsは、onCARlytics(CF33-CD19)× CD19 CAR-Tの併用を進める協業を発表。腫瘍細胞にCD19を発現させ、CAR-Tの適応を固形がんに拡張する革新的アプローチです。
7. 免疫腫瘍領域での技術・特許強化
Anixa Biosciencesは、FSHR標的CAR-T療法の一般名称として「liraltagene autoleucel」がWHO INNで承認されたと発表しました。
Genprexは、遺伝子治療Reqorsa®とPD-L1抗体の併用用途に関する特許を取得し、非ウイルス遺伝子治療+免疫療法の組み合わせ戦略を強化しています。
Xenetic Biosciencesは、全身投与型DNase IとCAR-Tの併用研究を延長し、腫瘍微小環境(TME)改善戦略を深化させています。
AGC Biologicsは、Repair Biotechnologiesと動脈硬化プラークを標的としたmRNA治療薬で提携し、治療領域の多様化が進みました。
総括:非ウイルス化・低侵襲化・in vivo化が2026年に向けた主要潮流に
11月後半は、次の3つが特に鮮明になりました。
① 非ウイルスベクターの台頭
CssDNA、酵素合成ssDNAなど、製造性・安全性に強みを持つ技術が論文と企業活動の両面で存在感を拡大。
② in vivo CAR-T・遺伝子編集の実用化モード
固形がん・血液がんの両面で、投与1回で治療細胞を体内で生成する潮流が加速。
③ AAV治療の適応拡大と次世代カプシドの競争
SMA成人適応、DMD非歩行患者、PH1遺伝子編集など、対象患者が拡大しつつ、カプシド最適化の競争も激化。
2026年に向け、「製造プロセスの外部化」「in vivo生成」「非ウイルス化」の三軸が産業全体の構造を変えていくと考えられます。
