ブラームス「6つの小品Op.118:第1曲 第2曲」構造と旋律は両立できるのか:ラドゥ・ルプ
作曲者:ブラームス
曲名 :6つの小品 Op.118 第1曲 第2曲
演奏者:ラドゥ・ルプ
リズム:★★★★☆
旋律 :★★★★★
構造 :★★★★☆
満足感:★★★★★
ラドゥ・ルプはちょっと特殊な立ち位置に居るピアニストだ。
そこのところを中心に紹介してみようと思う。
Brahms: 6 Piano Pieces, Op. 118: No. 1, Intermezzo in A Minor
Brahms: 6 Piano Pieces, Op. 118: No. 2, Intermezzo in A Major
ルプは驚くことに演奏で旋律を重視するタイプでいながらも、
構造も美しく表現することが出来るという人だ。
普通は旋律と構造は相反するものだから両方とも美しく表現するっていうのは難しいことだと思う。旋律とリズムどちらも良くしたいというのの更に上の段階に居るようなものだと思う。
構造が崩れない演奏にするにはリズムが必要で、残りを旋律に回すということをしなければならない。リズムと構造は密接に繋がっていて、リズムの甘い演奏は構造をきちんと維持できなくなる。構造を維持した上に美しくしたいなら尚更きっちりとしたリズムが必要になる。
それほど多くのピアニストを見てきたわけでもないけども、
旋律と構造のどちらも美しくというタイプはルプの他に見たことがない。
ケンプやリヒテルのように構造を優先するタイプに近いけども、ルプの場合は逆で旋律を優先して残りを構造に使っている感じだ。
何に一番驚いているかと言うと、
普通は旋律重視ならリズムも構造も維持できるだけの配分にして、できるだけ旋律を美しく見せるタイプが多いから、わざわざ旋律から削って構造の美しさに回すのは何故だと疑問に思うのだ。
だけどこれは良く考えればわかることだ。
バッハの曲がそうであるように美しく旋律を歌わせながら構造も美しく見せる。この両立を目的にしていたんだと思う。これはかなりバランスの取り方が難しい選択だと思う。
多くのピアニストは構造は美しくよりも明晰つまり見やすく。
そして旋律は美しくという選択をすると思う。
構造は美しくまでは行かなくても見やすいだけでも成立するのだ。それを構造も美しく旋律も美しくということになると難易度が上がるんだと思う。
ルプの演奏での構造が完璧に美しいかと言われれば旋律に配分の多くを割いている分だけ構造が甘いとは言える。構造優先タイプのピアニストの構造の美しさほどは出ていない。だけどここまで両立させようとするのは大変なことだと思うし、普通はやれないことだと感じる。
今回の話しでなぜ私がブラームスの曲でルプの演奏を選ぶかの理由が見えてきたんじゃないかと思う。構造の美しさと旋律の美しさが両立した時にどういう演奏になるかというものをルプの演奏で感じてもらえたらと思う。
