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ベートーヴェン「ピアノソナタ第30番:第1楽章」感情表現を優先すると美しさが弱くなる:エミール・ギレリス

作曲者:ベートーヴェン
曲名 :ピアノソナタ第30番 Op.109 第1楽章
演奏者:エミール・ギレリス
リズム:★★★★☆
旋律 :★★★★★
構造 :★★★★☆
満足感:★★★★★

この曲はベートーヴェンの感情がどうなっているかに
注目が集まりやすい曲だけど、ギレリスはどういう解釈をして、
それはなぜなのかを紹介してみようと思う。

Beethoven: Piano Sonata No. 30 in E Major, Op. 109: I

今までこの30番の記事を書かなかったのは、ギレリスの解釈を上手く理解することが出来ていなかったからだ。

この30番の第1楽章の解釈は、他の演奏ではベートーヴェンが病気で苦しんでいる状況の感情的な揺らぎを「焦りや、悲しみ、戸惑い」などでの感情表現として演奏していることが多いように思う。
だけどもギレリスの解釈だと焦りや戸惑いよりも、穏やかに語りかけるようなベートーヴェンの美しい音楽が表現された解釈になっている。

良く考えてみると確かにこの曲で、自分は苦しんでいるとベートーヴェンが表現したくてこの曲を作ったかと言うと、そんなことよりも美しい曲を作ることを優先していたのではないかと思う。そうでなければ後期ソナタがこんなにも美しく仕上がっていないと思うのだ。
特に後期ソナタの最初の30番が感情的な苦しみの表現ばかりになると、曲としての美しさが上手く出てこなくなるように思う。
つまり感情を優先するとこの曲の本当の美しさが出なくなる構造をしているのではないか。
この曲の演奏でのギレリスはテンポを遅くして旋律を1音1音を大事に見せながら演奏する。それはこの曲がこんなにも美しいことを証明したかったのではないだろうか。

ベートーヴェンが現実では、どんなに苦しんでいたとしても、作りたかったのは苦痛を表現した曲ではなくて、自分の全てが詰まった集大成としての美しい後期ソナタだったのではないだろうか。そうでなければギレリスの解釈で、こんなにも美しく演奏できる作りにはなっていなかったのではないかと思うのだ。

記事にして整理してみてやっとギレリスの解釈の意味と曲の構造を理解でき始めたけども、今回のは中々の難問だったように思う。なぜなら評価の高い演奏ほど感情面を強く表現しているんだけど、それをすると曲の美しさが弱くなることに気づいたからだ。この感情と美しさのトレードオフの関係は、この曲の最大の難しさなのではないかと思った。


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