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ベートーヴェン「ピアノソナタ第2番」曲の構造を優先するのもいいよね:エミール・ギレリス

作曲者:ベートーヴェン
曲名 :ピアノソナタ第2番 イ長調 Op.2-2 第1楽章
演奏者:エミール・ギレリス

ここのところギレリスの記事を書いてないなと思って、
久しぶりに紹介してみようと思う。

Beethoven: Piano Sonata No. 2 in A Major, Op. 2 No. 2: I. Allegro vivace

この第2番はベートーヴェンから、どこかハイドンのような構造の美しさを感じる曲だ。構造に強いロシア系のピアニストとは相性がいいからギレリスの演奏がとても合う。この演奏でギレリスがいいのは曲の構造を維持することから生まれる曲の奇麗さだ。旋律を優先する演奏じゃこの構造の美しさが出ない。

ギレリスは私の原点のピアニストの一人だ。
ギレリスの悲愴を聴いた時の衝撃は忘れられない。
今にして思えばソ連というかロシア的な演奏法を使っていたんだけども、
私にはそれがギレリスが生み出したかのように思えてしまって余計に衝撃を受けたんだと思う。

深い打鍵と低音の使い方。弦をそのまま目いっぱい鳴らす鋼鉄のような芯のある音。そして何と言っても精密な構造維持。
ポーランドのピアニストも低音を使った構造維持を大事にすることはロシアと似ている。だけど構造ごとリズムを揺らすという特徴が違う。

例えば、リヒテルがなぜ構造の維持を優先する演奏をするのかは最初のうちはわからなかった。リヒテルならもっと本能で自由に演奏できると思ったからだ。だけども、リヒテルの演奏を支えているのが構造だった。
リヒテルの生み出す豊かなグルーヴも完璧な構造が生み出していたと気づくまでに結構時間がかかったように思う。
リヒテルとギレリスを比べて何が違うかと言ったら演奏が生み出す構造の精密さの違いだ。特にギレリスのベートーヴェンは曲の持つ構造美とギレリスの持つ構造美が掛け合わさって強力なものになっていて、ギレリスの演奏するベートーヴェンのレベルの高さは驚くほど高いと思う。

私が音楽の演奏を構造で考えるようになったのも、構造が崩れるのを嫌がるのも、ロシアのピアニストの演奏を聴いていたからというのが大きい。
私のソ連およびロシア系のピアニスト贔屓はリヒテル、ギレリスそしてグリンベルグから始まったと言っていい。

ドイツ的なケンプの構造美も大好きだけど、ケンプみたいなタイプは特殊だから同じような人が出てこない。
だけどロシアはそこが違う。ヴィルサラーゼの演奏にギレリスを感じるように、構造美の普及というか広まりがある。キーシンのように今までと違うタイプの演奏者も生まれている。そこに教育の完成度を感じてしまう。


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