バッハ「パルティータ第2番:第6曲」強気の声部がとても恰好いい:マルタ・アルゲリッチ
作曲者:バッハ
曲名 :パルティータ 第2番 ハ短調 BWV826 第6曲
演奏者:マルタ・アルゲリッチ
リズム:★★★★☆
旋律 :★★★★☆
構造 :★★★★☆
満足感:★★★★★
アルゲリッチでパルティータ2番の良い演奏があったので、
どこが良いのかを中心に紹介してみようと思う。
J.S. Bach: Partita No. 2 in C Minor, BWV 826: VI. Capriccio
この演奏のアルゲリッチは圧倒的に格好がいい。
なにが凄いのかを考えてみると、
娘と思われるソプラノが:「私は行きます。やれるんですよ」
母親と思われるアルトが:「まちなさい」
父親と思われるバスが :「ばかもの、話を聞け」
という、強気で押し出す娘を二人の親が止めるけども、聞き分けないで突き進む娘を、アルゲリッチは娘の気の強さを強調して前面に押し出すことにより、この演奏の格好良さあるいは爽快感とドラマチックな展開を生み出しているように思う。この登場人物の設定がまず凄いと思う。
アルゲリッチの設定した娘は、このグッと押し込んでくる気の強さが何とも言えず魅力的で演奏での主導権をきっちり握っている。
演奏を聴いていると強気な娘も一度は親に説得されそうになるが、
「いいのいいのマイウェイよ」と、また強気さを取り戻していく。
この演奏では登場人物たちの気合の入り方が違う。
それだけ強い打鍵でアルゲリッチが感情を表現しているんだろうけども、
「頑固おやじと、気の強い娘、そしてオロオロする母親」
こんな感じではないだろうか。
この演奏のいいところは感情がこもっている分だけ、何を言っているのかが何となく伝わってくるほどに理解できる点にある。
他の人の演奏だとここまで登場人物の性格やセリフが曖昧になってなかなか伝わってこない演奏も多いと思う。
声部の性格とかの設定をどうするのは演奏者の解釈次第だけれども、そこの作りが演奏者の個性が出ていて一番面白い。
グールドの演奏を聴いてみたら娘はもっと知的で大人しい子になっていて驚いた。この登場人物の性格と演技の違いを感じるためにも、多声を使った曲は演奏者ごとの個性が出ていてどれも違うから色々聴くと楽しい。
チェンバロで演奏すると、この親子三人の掛け合いがもっとコミカルだったりするんだろうけども、アルゲリッチは音を強くした分だけ、コミカルさが弱くなっているように感じると思う。だけどもこの演奏ではコミカルさを弱めた分だけ、よりリアルで感情でぶつかり合う真面目な演劇に仕上がったのではないだろうか。そしてそこがアルゲリッチが一番表現したかったことではないかと思う。
この演奏での聴きどころは娘である主旋律がどう周りを振り切って突き進んでいくかを中心に聴くと良いと思う。確かに父親や母親も大事な役目ではあるものの、この演劇の主役は娘だから、そこを中心に聴くと良いと思う。
