物語の主人公は自分Ⅱ|探求が動き出すワークの設計――「問い」を行動に変える授業のつくり方
このシリーズでは、ヒロT先生とモブ太の対話を通して、探求学習の現場で実際に起きていること、そしてそこから見えてきた「組み直し方」を共有しています。
前回は、「探求が止まる本当の理由」と
デザイン思考での組み直し方について話しました。
今回はその続きです。
「考え方は分かった。じゃあ、実際の授業ではどう設計すればいいのか?」
そこを、もう一段具体的に見ていきます。
モブ太「先生、前回の“組み直し”の話、めっちゃ腑に落ちました」
ヒロT「それはよかった」
モブ太「でも正直なところ…じゃあ明日の授業で何したらええんですか?って思ったんです」
ヒロT「うん、それ普通やと思うで」
モブ太「フレームワーク覚えなあかんのかな、とか…」
ヒロT「ちがうちがう。今日はな、“ワークの形”の話をしよか」
モブ太「形?」
ヒロT「そう。探求が動き出すかどうかは、
問いの内容より、置き方で決まることが多いんや」
探求が動き出すワークに共通する
「3つの条件」
ここからが今日の本題です。
これまでいろんな学校、授業、ワークを見てきて、「これは動くな」と感じた探求には、だいたい共通点がありました。
条件①
最初から「未完成」で終わると決めている
探求が止まる授業ほど、
実はきれいに終わろうとしています。
・スライドをまとめる
・結論を出す
・発表して拍手で終わる
でも、探求にとって一番もったいないのは、
「はい、終わり」の空気が流れること。
動き出すワークは逆です。
・途中で終わる
・答えが出ない
・「続き、気になるな…」で止める

ヒロT「探求はな、完成させたら終わってしまうんや」
モブ太「未完成のほうが成功…ってことですか?」
ヒロT「そう。“続きが生まれた”時点で、もう動き出してる」
条件②
問いが「一人称」になっている
よくある問いがあります。
・この地域の課題は何か
・この会社の強みは何か
これは悪くありません。
でも、多くの場合 調べたら終わる問い です。
動き出す問いは、
必ず一人称が入っています。
・もし自分がこの地域で何かするとしたら?
・自分ならこの強みをどう使う?

ヒロT「問いが他人事のままやと、行動は起きへん!」
モブ太「“自分なら”が入るだけで、急に重たくなりますね」
ヒロT「せやけど、それが探求や」
条件③
「考える大人」は前に立たない
前回も触れましたが、
ここが一番誤解されやすいところです。
探求が動くワークでは、
先生はあまり説明しません。
・正解を言わない
・まとめない
・評価基準を先に出さない
代わりにやっているのは、これだけです。
・問い返す
・立ち止まらせる
・考えが浅くなったら、揺さぶる

ヒロT「先生はな、考えさせる人じゃなくて、考え続けさせる人や」
45〜90分でできる
「問いを一歩だけ進めるワーク」
ここで、実際に使えるシンプルなワークを一つ紹介します。
📒ワークの目的
・探求を完成させない
・でも、確実に一歩進める
■流れ
① 調べて分かったことを1行で書く
→ 事実・気づき・違和感、なんでもOK
② その横に、この問いを書く
「じゃあ、このあと自分は何を試したい?」
③ ペアで仕分ける
・できそう
・無理そう
・ちょっと怖い
ここで大事なのは、
全部やらせないことです。

ヒロT「一歩でええねん」
モブ太「え、そこで止めていいんですか?」
ヒロT「止めるから、次に進みたくなるんや」
😊ちょっと、私の話をさせてください
私は、義務教育の現場経験はありません。
芸大や専門学校で講師として教育に関わってきました。
そのため、小・中・高校の先生からすると、
「デザイン的思考とか言われても、ちょっと違うんやけどな」
そう感じる方も、きっといらっしゃると思います。
以前、私が芸大の専任講師をしていた頃、
教え子の教育実習を見学する機会がありました。
実習先は中学校でした。
担当するのは、普段どちらかというと少し頼りなく見える男子学生。
正直なところ、
「ほんまに授業できるんかいな?」
と、半分ドキドキしながら授業開始を待っていました。
そして授業が始まります。
しばらく聞いていると……あれ?
「ん?この話、どこかで聞いたことあるな……」
えっ!?
僕の授業内容、パクってるやん!!
そうなんです。
私が普段やっていた授業内容を、そのまま中学生向けにアレンジして使っていたんです(笑)
最初は、
「大丈夫か?ほんまにできるんか?」
と不安でした。
ところが、授業が進むにつれて、
生徒たちが「はいっ!」と手を挙げて発言し始めたんです。
その瞬間、
「わぁ……中学生って、こんなに普通に手ぇ挙げるんや……」
という、まったく別方向の驚きと新鮮さに包まれました。
そして、その授業を見ながら、
私は確信したんです。
「あ、これ。中学生でも使えるやん」
🌟探求は、才能じゃない
探求が動き出すかどうかは、
生徒の能力の問題ではありません。
ほとんどの場合、
ワークの設計で決まります。
・どこで終わるのか
・誰の問いなのか
・先生はどこに立つのか
それが少し変わるだけで、
教室の空気は大きく変わります。
探求は、
「うまく教えること」ではなく、
「考え続けられる場を置くこと」。
そんなふうに捉えてもらえたら、
現場は少し楽になる気がしています。
📣次回予告
次回は、
「問いを返す技術」について。
正解を言わない先生は、
代わりに何をしているのか。
探求が止まらない教室で、
大人が実際にやっている関わり方を
もう少し具体的に話してみます。
