⑤「売れないバンドマン」だった僕が、工場勤務で再スタートするまで ⑤
音楽という夢を追って借金まみれ。
営業に疲れ、タイで人生をやり直そうと決意した矢先、世界が止まった。
帰国後は、彼女の部屋で居候生活。
お金がなくても、嘘をついてでも、守りたかった。
これは、どん底から「一緒に生きる」を選んだ僕の話。
日本へ帰国して
飛行機のドアが開いて、久々の日本の空気を吸い込んだとき、なんとも言えない懐かしさが込み上げた。
たった半年離れてただけの日本やったけど、すべてが懐かしく感じた。
ずっと常夏のタイにいたから、日本の冬は驚くほど寒く感じた。
身にまとっていたのは、薄いユニクロのウルトラダウン。
浮いていたのは仕方ない。これしか冬の服を持ってへん。
エスカレーターがかなり遅く感じた。
電車の料金も高いし、ご飯も高い。
ひとつひとつに“日本の現実”を突きつけられた。
帰国後、真っ先にコンビニに立ち寄って買った缶コーヒーの味は、想像以上に沁みてきた。
はぁ、ずっとこの味は変わらん。
この一杯に、どこかホッとする“救い”を感じた。
——ああ、帰ってきたんやな。
久しぶりの彼女の部屋に
帰国後は、すぐに彼女の部屋に転がり込んだ。
まだほんとにお互いのことをよく知らない仲なのに、「おかえり」と迎えてくれた。
8畳のワンルーム。決して広くはないけれど、暖かかった。
浴槽にお湯をためてくれた。
肩まで沈んでみる。思わず「はぁ〜」と声が漏れる。
こんな何気ない瞬間に、涙が出そうになった。
タイではずっとシャワーだったから、湯船に浸かる文化すら忘れかけていた。
彼女は、何も責めなかった。
「しばらく、ここに居ていいよ」
その言葉に甘えるしかなかった。
外出禁止、止まったままの時間
数日後、街には張り紙が増えていた。
「外出禁止」「マスク着用」
テレビをつけると、ニュースでは
「パンデミック」「ロックダウン」
そんな言葉が飛び交っていた。
彼女が仕事に行っている間、時間を持て余した。
なんとなくパチンコでも……と思ったら、すべての店が閉まっていた。
世界は、本当に止まっていた。
「仕事を探そうかな……」
「いや、すぐコロナ終わるやろ……」
そんな言い訳を心の中で繰り返していたら、いつの間にかダラダラと半年が経っていた。
タイのコンドミニアム、立て替えられた家賃
時々、コンドミニアムのバルコニーから見下ろしたバンコクの夜景を思い出した。
夜になると、よくビールを片手に生ぬるい風を感じながら夜景を見ていた。
あれは、自分にとってほんま贅沢やった。
今はもうそこには居ないけど、
確かに自分の居場所がそこにあったんや!
とふと寂しさが胸に押し寄せた。
コロナが終わったら、すぐに帰れるように、タイの物件はそのまま残していた。
引き払う勇気もなかったし、何より“戻れる未来”を信じたかった。
住んでもいない家に、毎月支払いが発生する。
家賃、水道光熱費、管理費——出ていくだけのお金が、じわじわと精神を削っていく。
オーナーは優しかった。
帰国できないのは仕方ない。
戻った時に払ってくれたらいい。
その一言が、どれだけ救いになったか。
“善意”に甘えてはいけないと思いつつも、甘えるしかなかった。
「まだなんとかなる。なんとか持ちこたえられる!」
そう自分に言い聞かせて、せめてなにか仕事しようと思った。
リモートワークという名の試練
毎朝、彼女が出勤するのを見送ってから、自分はノートパソコンを開く日々。
部屋着のまま座って、画面とにらめっこしながら時間が過ぎていく。
メール、チャット、表計算、翻訳、取引先との調整。
メールの返信が即レスだったり、2日待っても帰ってこない事もある。
zoomで話すアポをとっても、
時間を守れないのは、タイの人気質なので仕方ない。
なにも進むことがなく一日が終わって、
夜、彼女が帰ってきた時の
「おつかれさま」
って一言が唯一の救いやった。
リモートワークという名の試練②
タイに戻っても、繋がるような仕事をネットで見つけた。
“海外輸出を行うネット販売会社”
運よく、オンライン面談を経て採用された。
これで、自分にもできることがある!
そう思ったのも束の間。 やることは山ほどあった。
コロナの影響もあり、海外輸出も売上が大きく傾いている。
社長はいつもイラついていた。
いつも仕事にスピード感を求められる。
オンライン会議で成績が悪いと詰められる。
Zoom越しに詰められた。
「なんで終わってないの?」
「それ、誰が責任とるの?」
胃がキリキリする。
それでも、毎日食らいついた。
けれど、月の手取りは16万円前後。
給料日を迎えても、手元には何も残らなかった。
支払いでほぼすべてが消えてしまう。
生活が、苦しかった。
頭の中は、常にお金のことでいっぱいだった。
将来のことなんて、考える余裕もなかった。
でも、彼女の前では見栄を張っていた。
早くコロナが終息し、タイに戻ったら、もっと稼げるようになるから。
自分に言い聞かせながら、頑張った。
彼女との同棲
8畳ワンルームの彼女の部屋。
今までの家賃は全て彼女が払ってくれてた。
「ねえ、そろそろもっと広いところに引越ししない?」
う、うん。そうだね!
いつか、タイに戻る。
それもほんまに何時になるか分からへん。
あやふやに、返事してたけど、 ホントは
引越しの費用を出すのもしんどい
という気持ちが強かった。
なぜならもう貯金もなく、毎月足りない分をカードローンに頼ってる自分がいたから。
あー情けない。
ある日、彼女に言われた。
「いつも、お金ないお金ないって言ってるけど、もしかして、借金とかある?」
即答で答えた。
「ないない!絶対ない!」
思わず、話を変えた
「そやな、引っ越そか!いいとこ見つけて」2人で住もう!
彼女との新しい新生活
人生で初めて、2人で住むアパートを決めた。
僕はなるべく安い賃貸を必死で探したが、築年数が古く、少しボロいとこばっかり。
これでは彼女は、納得してくれない。
ようやく見つけた。
家賃と、生活費で、毎月8万円ほど渡すことにした。
新しい部屋はリノベーション仕立ての綺麗な1LDK。
新生活にはなにかとお金がかかる。
引越し代を浮かす為に、トラックを借りて荷物を運んだ。
彼女はせっかく綺麗な部屋になったからと言って、
タオル、食器、カーテン、照明、家電、生活雑貨。
いろいろ新品を揃えたがる。
どんどん、出費がかさむ。
心の中ではお金がなく、借金が増えることに苦しんでた。
大丈夫!
タイに戻れば、なんとか巻き返せる!
自分の仕事が軌道にのれば、一攫千金のチャンスがある!
いつしか金銭感覚がマヒしてて、借金はかさんだ。
普段の生活で買い物するものも、とくに安いものばっかり買うようになっていた。
洋服も、セール品しか買わない。
ビールも発泡酒の中で1番安いやつをまとめ買い。
閉店前のスーパーにより半額シールが貼られたものを買って晩酌する。
彼女はいつも不満そうだった。 「ねえ、お金ないの?」
…。
両親との挨拶
帰国して、一緒に過ごすようになって1年半。
彼女は将来のことをよく話すようになった。
結婚。
そうか。
俺はこの子と結婚するんだ。
ほんとに好きになってたし、結婚するなら彼女としたい。
でも、俺は情けないことに今の年収すら彼女に言えない状況。
この時年収が総支給240万円。
国保、年金、所得税、住民税などは天引きされず、なぜか自腹。
もちろん払えるわけない。
延滞してる。
雇用保険も加入してくれてなかった会社。
どうしようも無い状況。
「ねぇ、私たちどうするの?
彼女の、両親が来て挨拶することになった。
その前夜、
眠れずにずっとスマホで
“結婚指輪 安い”
とか
“指輪なし 結婚”
とか調べてた。
心臓がずっとドクドク鳴ってた。
「何も準備できてへんのに、俺ほんまに大丈夫か?」
そう何度も自問自答して、トイレの鏡に映る自分を見てため息をついた。
結婚指輪を、買うお金なんてない。 もちろん。結婚式なんて、とうてい夢のまた夢。
苦しかった。
そして、
結婚し、彼女は妻となった。
その三ヶ月後、別居がスタートした。
(この続き:結婚と借金バレ、はまだ続きます。)
追記。
ブログみたいな感じでNOTE始めてみました。
知り合いにバレたくないので、偶然目にしてくれたあなたが貴重な視聴者さまです。
なんとか、最後まで書き上げたいので、いいねやコメントもらえたら喜びます。
なかなか、書き上げるのに苦戦してました。
だいたい9割がリアル話です。
お金が無すぎたことを、書いてるとほんとに気が滅入ります(笑)
ま、今もないんですけど。
あと2回くらいで終わる予定です。
続きをお待ちくださいm(_ _)m
