『チャップリン自伝』新潮文庫を読んで
「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇である」
そんなチャップリンの言葉を、少しだけ信じてみたくなるような一冊だった。
私は、チャップリンの映画をちゃんと観たことがなかった。けれどその名前と、どこか切ないような笑顔の白黒のイメージだけは、ずっと昔から知っていた。
この本を読みながら、私は初めて“チャーリー・チャップリン”という一人の人間と向き合った気がする。
彼の子ども時代は、映画のように華やかではない。
極貧と孤独、母の病気、弟との支え合い。
そこには、笑いとは遠い現実があった。けれど、だからこそ彼は“笑い”を武器に、世界を生き抜いていったのかもしれない。
印象的だったのは、自分の仕事に対してまっすぐで妥協しない姿勢。
「喜劇王」と呼ばれながらも、自分の芸術に対する誇りと、政治や社会への眼差しを決して手放さなかったその気骨。
どんなに人々に笑いを与えながらも、ずっと“人間”の本質を見つめていたのだと思う。
読み終えた今、私はチャップリンの映画をちゃんと観たくなった。
ただ笑うためじゃなく、その奥にある“生きる強さ”を感じるために。
この本は、エンタメでも教養でもない。
一人の人間が、どう生まれ、何に傷つき、どう歩いたかを静かに綴った、誠実な人生の記録だった。
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