創作の領域と決済インフラのポリシー
近年、日本の同人誌や成人向け漫画、ゲームといったコンテンツを扱う販売プラットフォームで、クレジットカード決済が突然停止されたり、特定の表現が削除されたりする事例が相次いでいます。
これは政府の法規制によるものではなく、VisaやMastercardといった国際決済ブランドが定めるグローバルポリシーが原因です。
国内法で合法とされる創作物であっても、民間企業が運用する決済インフラの規約変更により、予期せぬ影響を受ける事態が発生しています。「決済の論理」が、現実の表現活動を静かに制約し始めているのです。
犯罪対策のルールと現場への波及
国際ブランドの規約の根底には、児童虐待素材の撲滅や、人身売買、近親相姦、獣姦など、実在の被害を伴う深刻な違法行為への資金流動を断つという明確な目的があります。この原則自体は理解できるものです。
しかし、このルールが決済代行会社(PSP)などの多層構造を経て現場に降りてくる過程で歪みが生じます。下流の事業者は、国際ブランドからのペナルティや契約解除を避けるため、安全策として過剰な自主規制に走りがちです。その結果、機械的な「禁止キーワードリスト」が作成され、作品の説明文に特定の単語が含まれるだけで一律に決済を拒否されるといった、形式的な対応が横行しています。
フィクションの表現と文化の疎外
こうした規制の影響を受けているのが、日本で長年育まれてきた架空のキャラクターによるエロティックフィクションの文化です。
例えば、フィクション特有の心理描写や、強引なシチュエーションといった定番表現。これらは現実の暴力や搾取とは明確に区別された、表現の中でのみ成立するファンタジーであり、国内法の基準を満たしています。
しかし、機械的なキーワード規制や海外の厳格な基準に当てはめられると、こうした繊細な描写までもが一括して対象に含まれてしまいます。創作者やファンからは、自分たちの愛する表現が、グローバルな決済インフラの基準と噛み合わないことへの戸惑いの声が上がっています。
ルールの壁と、居場所を失う不安
実在する被害を防ぐためのルールは、当然維持されなければなりません。金融システムの健全性を守るための一定の線引きも、現実として必要です。
ただ、その一方で、フィクションの表現や個人の楽しみが、こうしたシステム上の制約によって徐々に制限されていく現実は看過できません。現代社会において不可欠な決済手段の基準によって、特定の文化が縮小せざるを得ない状況は、考えていくべき課題の一つです。
この構造的な問題に対して、サブカル文化の多様性をどう守っていけばよいのでしょうか。ルールの正当性を理解しつつも、大切なものが形式的な基準によって失われていくことへの懸念が残ります。
#クレジットカード規制 #表現の自由 #金融検閲 #げんしけん
