緊急闘病入院記〜『やまぬ感謝』 ③最初の夜があけた

病棟の夜はとても静かだった。
点滴のおかげで、呼吸はできていたが、咳は変わらない。
体の外に聞こえてくる音は、笛の音に加え、低音のドラムロールも加わった。
何らかの1位発表の前の、あのドラムロールだ。
この気管支からする音は、
そばにいる人まで普通に聞き取れる音量だ。
いつまでたっても1位発表されないドラムロールと、笛と、咳。
寝静まっている同部屋の方達に申し訳なかった。

20数年前、同じ病院の産科での夜は、一晩中賑やかだった。
赤ん坊たちのふにゃふにゃな声、あやす声、オムツ替え、看護師さんの声、母親たちの会話、時々出産の叫び。
昼間より少し暗いくらいで、さほど昼夜の違いはない。
……あの時とは大違いだ。

スマホを見ると0時半。
咳のしすぎで暑くなっていたところ、看護師さんがアイスノンを持ってきてくれた。
ひんやりすると睡魔が来た。


「シャーーーッッッ!!」という音で目覚める。
4時。
窓際の方がカーテンを開けた。
早い。病院の朝は早いとは知っていたが。
お姿は見えないが、何やら足踏みトレーニングのような音もしてきた。
リハビリだろうか。
その後、何かのページを「ペラッ!」「ペラッ!」とめくる音に変わる。
お経か?聖書か?


とにかく3時間はしっかり寝れたようだ。
昨日のことは、なんだか夢のようだと思った。
救急搬送されるのは、間違いなく夫が先だと思っていた。
「キャシャリン」と呼ばれるほど華奢で虚弱な夫の方が先に入院するはずだった。
おもむろに「喘息」とググってみた……。

(自己流まとめ)
⚫︎国内の大人の5〜10%は喘息持ち。
⚫︎なんらかのきっかけで、気管支が炎症
⚫︎腫れて凸凹になった気管支をカバーしようと粘液増える
⚫︎よけいに気管支狭くなる
⚫︎空気通らなくなっていく

「喘息」と言う言葉にこわさを感じたことがなかったが、呼吸不全に直結していることはわかった。

しかし。
自分が罹患するのは、まず糖尿病か脳疾患のはずだ。
この体型でいまだ糖尿病になってないのは奇跡でしかない。
数年前には、片手首にチカラが入らなくなって自力で「脳梗塞になったと思います!」と救急に駆け込んだこともある。
医療従事者の友人たちから爆笑された。
「脳梗塞では走れない」と。
とにかく、かまえておくべきは糖尿と脳のはずだった。
喘息とは、全く想定外。


入院して初めての食事がやってきた。
運ばれきたトレーは熱々で、急に食欲がわいた。
ひとつひとつのフタをあけて思った。
(おや?これ、誰か食べたか?)
あまりの少量に驚き、思わずすぐ写真を撮って家族に送った。
まぁいいさ、この機会に痩せるのも。


朝いちでサツキ先生がきてくれた。
⚫︎喘息の対応をすすめていく
⚫︎ステロイドと抗生物資の点滴
⚫︎落ち着き方を慎重にみる
「ですので、少しお時間くださいね」と改めて言われた。 

「お時間くださいね」……?
もしや、先生は何かを隠しているのか?
喘息というのは退院を伸ばす口実か?
私は急に疑心暗鬼になり、サツキ先生に聞いた。
「昨日のレントゲン写真、右下に写っていた白いものは………あれは一体何なんですか???」

サツキ先生は満面の笑みで
「はい、元気な心臓です。」
「私の心臓は右に?」
「お写真なので。」

冷静さを失うとは、恥ずかしく、おそろしい。




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