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銀河英雄伝説クラシック音楽一覧 │ (6)映画「新たなる戦いの序曲」その1

OVA「銀河英雄伝説」で使われているクラシック曲をGoogleスプレッドシートにリスト化し、Webサイトで公開しています。
🔗銀河英雄伝説クラシック音楽一覧 Musik und Szenen – ein Strauß gelber Rosen

このnoteでは曲のことや物語のこと、ミッターマイヤーのこと、そのほか銀英伝に関するいろいろを書いていきたいと思います。
⚠️ネタバレを含みます。

前回までに、映画「わが征くは星の大海」と、本伝の1、2話について書きました。
それと同じ時期を扱った映画「新たなる戦いの序曲」がありますので、今回はそちらを。同じシーンが出てきますが、音楽がけっこう違います。
2時間ぐらいあり曲数も多いので、いくつかに分けてお伝えします。


あらすじ

宇宙暦486年。第四次ティアマト会戦後、ヤンは友人ラップからジェシカへの求婚を告げられ、想いを胸に祝福する。一方ラインハルトは武勲により上級大将に昇進。アンネローゼは急速に出世する弟を心配する。帝国軍上層部は彼の勢いを警戒し、ミッターマイヤーやロイエンタールら有能な部下を外して、シュターデン、エルラッハなどを配属する。

曲について

1.ワーグナー

1-1 「さまよえるオランダ人」序曲

この映画では、オープニングとエンディングがいつものマーラー3番ではありません。マーラーは勇ましい感じですが、こちらはもうちょっとドラマチックな、そして不穏な雰囲気がします。
「オランダ人」とは、神を冒涜したために呪いを受け、死ぬこともできずに永遠に海をさまよっている、幽霊船の船長のこと。ただし呪いを解く方法はあり…というストーリーなのが、このオペラ「さまよえるオランダ人」です。
ワーグナーのオペラには、登場人物や事象を表現する「ライトモチーフ」というメロディーがあって、序曲にはそれがてんこもりに詰まっています。そうなると、呪われたオランダ人の話、序曲も不穏でドラマチックになりますよね。

⬜05分 オープニングタイトル
序曲の冒頭部分から流れます。いきなり耳をつんざくような弦楽器のトレモロからはじまり、次に出てくる管楽器のメロディーが、オランダ人のモチーフです。そして、下から弦楽器が半音階でせりあがり、そのあとに何度もうねります。これは荒れ狂う海にしか聴こえませんよね。かっこいいです。
🎧曲を聴く

⬜1時間01分 物語中盤、ラップがいる同盟軍第6艦隊が壊滅するシーン。ラップが所属する第6艦隊、やられっぱなしで見ていられないぐらいひどい…。
そしてラインハルトの部下として的確な指示を出すメルカッツ提督。横にシュナイダー君が立っている姿が、なんだか新鮮です。
ここでは曲全体約11分のうちの3分すぎあたりの箇所から流れます。嵐がおさまったのか、静かなメロディーが流れ、ホルンとファゴットがそれぞれソロでオランダ人のモチーフを静かに吹いたあと、ティンパニーのロールが入って、また最初のような劇的な音楽に戻る、という部分です。攻撃の激しさが音楽で増すようです。
🎧曲を聴く 2:54

⬜1時間25分 エンドロール
曲全体の約11分のうち、6分台後半ぐらいあたりから流れ、曲の終わりと同時に映画も終わります。
🎧曲を聴く 6:46

銀英伝と全然関係ないのですが、以前SNSで、イギリスのイマーシブミュージアムの動画を見たことがありました。レンブラントの「ガリラヤの海の嵐」が動画になって壁一面に映し出され、まるで自分がその中に入っているような体験ができるのですが(イマーシブですからね)、そのときに流れていたのがこの序曲でした。
たぶんこちらです。かっこいい。
Frameless Immersive Art Experience
https://frameless.com/

「さまよえるオランダ人」の序曲が使われるのはこの映画だけです。
あとは第一幕のオランダ人のアリアが、3回出てきます。またそれがかっこいい曲でして、それはまたそのときに。


1-2 「ローエングリン」第3幕への前奏曲

⬜40分 同盟軍の出発と作戦会議
ヤンやラップ、同盟軍の兵士たちがシャトルに乗り、宇宙で待機している戦艦に乗りこむシーンから、戦艦内で各艦隊の司令官が、今回の作戦について説明しているシーンにかけて。
そう、同盟軍は、帝国みたいに戦艦が地上にあってそれに乗り込んでから宇宙に出るのではないのですよね。おもしろい。
🎧曲を聴く

呪われたオランダ人と違って、こちらはキラキラの白鳥の王子様、円卓の騎士パルジファルを父にもつローエングリン。そのオペラから第3幕の前奏曲です。
明るく華やか、スピード感のある曲で「ドライブのときに聴くといいワーグナーは?」と聞かれたら私はこちらを挙げます…って、スピード出しちゃうからだめですね。でもそういえば、車のCMで使われていたような気もします。そのように、ふとしたところで流れていることもある曲です。単体で、コンサートでも演奏されます。
明るい未来を予感するような印象ですので、同盟軍の司令官が意気揚々と作戦を説明しているシーンによく似合います。

このオペラ「ローエングリン」の第3幕は結婚式から始まります。この前奏曲がそのまま結婚行進曲へとつながります。「パパパパーン パパパパーン」では"ない"ほうの結婚行進曲です。みなさん、きっとお聞きになったことがあるはず。
なんて縁起の良い…と思いますが、このオペラは喜劇か悲劇かというと悲劇なのです。つまり、幸せな結婚では終わらないというわけです。
むかーし見たドラマで、いいところのおうちに嫁ぐことになった一般家庭のお嬢さんが、結婚式の曲にワーグナーのほうを選び、お姑さんから「これは結婚破棄になる話の曲なのに、そんなことも知らなくて、なんて教養のない」と嘲笑われる…みたいな場面があった気がします。

この「ローエングリン」が銀英伝で使われるのはこのシーンだけなのですが、第一幕の前奏曲も素敵です、すんごい、いいです、おすすめです!!
物語は、聖杯伝説の聖杯が天から降りてくるところからはじまります…よく考えたらおかしな状況ですけど、だからこそ神がかっているような、「聖」の意味がよく現れているように思います。さわやかで優しく美しく、そして和音の動きがちょっと切なく感じられるところもあり。
ぜひ聴いてみてくださいー!


1-3 「タンホイザー」第2幕 大行進曲

⬜15分 ラインハルトとキルヒアイスが、アンネローゼに会いに、宮廷内を馬車(!)で向かうシーン。

こちらは、「ワーグナーのオペラハイライト集」というものがあれば、たいていとりあげられるであろう有名な曲です。
タンホイザーは騎士なのですが、当時、中世ドイツでは騎士が吟遊詩人として歌う習慣があり、こちらはその大会、歌合戦が開かれるときの行進曲。(というか、正式なタイトルは「タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦」なのです)
「オランダ人」のような不穏さ、呪い、のような印象はありません。
曲はファンファーレからはじまりますが、この馬車のシーンで流れているのはほぼその部分。「宮廷」の雰囲気にあっています。
🎧曲を聴く 

そういえば、外伝でミューゼル姓時代のラインハルトがタンホイザーという戦艦に乗っていました。特に意味はないのでしょうね(かな?)。
タンホイザーは愛欲に溺れてだらだらしていた人ですので…

あと、全然曲と関係ないのですが……タンホイザーのつづりは
Tannhäuser
です。
ドイツ語はローマ字読みに近いのですが、äu は「アウ」ではなく「オイ」となります。
私はタンホイザーのおかげで覚えられました。

1-4 ジークフリート牧歌

⬜24分 キルヒアイスが、アンネローゼ、ラインハルトとのお茶会を回想するシーン
主にこういった、3人の幸せなシーン、または昔の感傷に浸るようなシーンで、この曲は何度も出てきます。
🎧曲を聴く

タイトルを見ると、ジークフリートって…キルヒアイス?! と思っちゃいまいませんか? ドイツ語のDは濁らずTで発音します。なので、ジークフリードもジークフリートも同じです(たぶん!)。
この曲のジークフリートとはワーグナーのオペラ「ニーベルンゲンの指環」の登場人物のこと。ニ作目「ワルキューレ」と三作目「ジークフリート」からのライトモチーフがたくさんつまっています。
ワーグナーはこの曲を、奥さんの誕生日であり、クリスマスでもある12月25日の早朝に、自宅の階段に演奏者を並ばせて、自らの指揮のもと演奏させたのでした。それまでこっそり練習して。つまりいわゆるサプライズです。
このときふたりの息子は1歳。そしてその子の名前は、ジークフリートです。

「牧歌」と題されているように、ホルンが角笛のようだったり効果的に使わているなどのんびりと素朴で優しく、ノスタルジックさもあわせもつ曲です。何より奥さんのお誕生日に流す曲ですからねえ…。
知名度から言えば彼のオペラよりも低いのかもしれませんが…いや、そうでもないのかな…レアな曲というわけでもなく、オーケストラの演奏会ではときおり演目に入ることがあります。
おうちの階段で演奏したぐらいですので、本来は、少人数の室内楽曲ですが、作中ではフルオーケストラバージョンです。


1-5 交響曲 ハ長調 第1楽章

⬜44分 5人の提督がラインハルトに意見具申するシーン

このシーン、本伝第1話では、マーラーの交響曲第3番第1楽章の、緊張感あるメロディーが流れていました。
提督たちから作戦について問われ、ラインハルトが確信を持って説明する場面に、このワーグナーの交響曲の冒頭、きっぱり堂々と鳴る和音が、よく似合っています。
🎧曲を聴く

ワーグナーが作曲した交響曲は、この1曲のみです(実際は、一応2曲目もあるのですが未完…?? 録音もされてはいます。CD持ってます)。
よって一番とか二番とかはなく、よく「交響曲ハ長調」と書かれています。
彼がオペラで台頭する前、まだ若い頃、19才のときに(あっ、このころのラインハルトと同じぐらいでは?!)、敬愛するベートーヴェンに影響を受けて書いたものだったかと。冒頭で和音が鳴るところがベートーヴェンの「英雄」にそっくりだと言ったのは、シューマンの奥さんのクララだったか。
…えー、似てるかなあ。でも当時はこういうイントロが珍しかったのかもしれませんね。「英雄」は革新的な交響曲なのですからね(前回参照)。

この曲は他の楽章も含め、銀英伝では何度も出てきます。最後の110話でも…。


さて、ワーグナーといえば、有名なのは先ほど書いた「結婚行進曲」や、「ワルキューレの騎行」(映画「地獄の黙示録」のあれ)です。しかしそれらではなく、オペラの曲でもない交響曲や「ジークフリート牧歌」を使うあたり、どのような意図で…?! 交響曲なんて、超マイナー曲とまでは言わないにしても、たぶん、世の交響曲好きの方々にもたいして重要視されていないと思います。「みんな知ってるー? ワーグナーは実は交響曲も書いてるんだよ~」「えーそうなんだー知らなかった~~」というレベルかと。

私はこの交響曲と「ジークフリート牧歌」とは、銀英伝のサントラで出会いました。当時、アニメは見たことがなかったけれど、本伝の最初のサントラは買ったのです。こちらで紹介しています。
交響曲の各楽章の始めのほうと、ジークフリート牧歌の始めほうが、メドレーのようにつながって収録されていて、子どもの私はそれまでに聴いてきた曲とは違う何かを感じとったようで、何度も聴き返しまた。それを言ったら、次回以降でお伝えするマーラーなんかのほうが、よっぽど衝撃的な出会いのはずなんですけれどね、なんでしょうね、マーラーよりもこちらのワーグナーだったんです。
そういえば当時、そんな話を友人にしたら、"ワーグナーの交響曲を聞いたときから君は変わった"のような歌詞のさだまさしの曲がある、と教えてくれたことがありました。何かひきつけるものがあるんでしょうか。

その後、大学進学で上京したときに、大きなCDショップでアルバムを買いました(ネット通販とかなかったので)。これはまさに銀英伝で使われているのと同じ音源なのだと思います。ハインツ・レーグナー指揮ベルリン放送管弦楽団、ドイツシャルプラッテンレコード、発売元 株式会社徳間ジャパンです。

このジャケットは今はないようです。というか…「ジークフリート牧歌」と「交響曲ハ長調」のカップリングのCDって…ない…?? AmazonやHMVを見ましたが…

CDを入手するとますます何度も聞きました。私の宝物です。
で、おかげで私は自称ワグネリアンです。「ありがとう、あなた、わたしの人生を豊かにしてくださって」です。

今回はワーグナーの曲だけしか書いていませんが、ちょっと長くなってしまったのでここまでに。


BGMリストについて

BGM全曲をスプレッドシートでリスト化し、該当曲がアニメで流れる箇所からYouTubeで聴けるようにリンクを張っています。
今回ご紹介した映画「新たなる戦いの序曲」のリストが見られるのは  こちら です。

このnoteをお読みになって曲に興味を持たれた方や、アニメを見て「聞き覚えはあるけれど曲名が思い出せない」「この曲をフルで聴いてみたい」「あの場面ではどんな曲が流れていたのか知りたい」と思ったとき、ぜひご活用ください。


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