銀河英雄伝説クラシック音楽一覧 │ (7)映画「新たなる戦いの序曲」その2
OVA「銀河英雄伝説」で使われているクラシック曲をGoogleスプレッドシートにリスト化し、Webサイトで公開しています。
→銀河英雄伝説クラシック音楽一覧 Musik und Szenen – ein Strauß gelber Rosen
このnoteでは曲のことや物語のこと、ミッターマイヤーのこと、そのほか銀英伝に関するいろいろを書いていきたいと思います。
⚠️ネタバレを含みます。
今回は映画「新たなる戦いの序曲」の2回目です。
あらすじ
宇宙暦486年。第四次ティアマト会戦後、ヤンは友人ラップからジェシカへの求婚を告げられ、想いを胸に祝福する。一方ラインハルトは武勲により上級大将に昇進。アンネローゼは急速に出世する弟を心配する。帝国軍上層部は彼の勢いを警戒し、ミッターマイヤーやロイエンタールら有能な部下を外して、シュターデン、エルラッハなどを配属する。
曲について
【2】ブラームス
2-1 ハンガリー舞曲 第7番
⬜11分 ヤン、ラップ、ジェシカで食事をするシーン。
ハンガリーとは、国のハンガリーのことです。ブラームスが伴奏者として演奏旅行をしていたときにジプシーの音楽を知り採譜、でも彼はそれをハンガリーの民族音楽だと思っていた模様。そしてピアノ連弾の曲として楽譜を出版したところ人気を博したそうです。
全21曲。5番はみなさんご存知だと思います(なぜだろう?)。6番もまあまあ有名かと。恥ずかしながら私はこの2曲しか知りません…。ちゃんと全部聴いたら、耳にしたことがある曲もあるのでしょうか。
というわけで、ここで流れるのは私が知らない7番。
私の印象では、民族音楽っぽさが感じられない、ヨハン・シュトラウスのワルツのような雰囲気に思いました。…いや、ワルツは3拍子でこちらは4拍子ですけれど。
3人が行ったのはダンスもできるお店のようですので、パーティーのようなにぎやかな雰囲気に似合います。ああ、学生のころの合コンを思い出しているでしょうしね…
他にこの曲は
▻第10話「ジェシカの戦い」のダンスパーティ
▻外伝「千億の星、千億の光」第9話「パーティーの夜」パーティーでラインハルトとリューネブルク夫人が会う
の場面で使われます。
やはりパーティーのシーンですね。
2-2 ハンガリー舞曲 第3番
⬜48分 ジェシカの生徒たちが署名活動をしているシーン。
こちらも、5、6番しか知らない私は知らない3番。
音楽学校で教師をしているジェシカが学校を出ると、校門の前で女学生が文化系・芸術系学部への助成金廃止反対の署名をしています。門には
Ternuzen School of Music
Ternuzen Conservatoire
と書かれています。テルヌーゼンは首都星ハイネセンのとなりの惑星。そうか、ジェシカさんはテルヌーゼンの議員になったんですよね。で、士官学校がテルヌーゼンにあるんですよね(というのはOVAのみ?)。
ここで流れるのは前奏の頭の少しだけ。フルートのメロディーと、フルートを吹いている学生の映像が重なります。
この曲じたいは前奏が終わると、いかにも民族舞踊っぽい音楽に展開していきます。
こちらは同じく外伝「千億の星、千億の光」第9話「パーティーの夜」で、ヴェストパーレ男爵夫人がパーティーに向かうラインハルトを見つけて声をかけたあと、今度はヒルダに偶然会うシーンで流れます。
また、ハンガリー舞曲としては17番、こちらはそのラインハルトに声をかけたあと夫人の説明ナレーターのところで使われています。こちらの話のはまたそのときに。
ここも、実はあのときふたりは近くにいた的なエピソードで素敵ですよね。あとヴェストパーレ夫人が素敵。
【3】レーガー/バレエ組曲 ニ長調 op.130 Ⅴ愛のワルツ
⬜12分 先ほどのハンガリー舞曲7番のあと、ヤンとジェシカがお店でダンスをするシーン。
ラップとジェシカの婚約が決まり、ヤンには切ない場面ですね…
曲は華やかな正統派ワルツという雰囲気です。
他には、第4話「帝国の残照」の、貴族たちの夜会のシーンで使われます。はい、正統派ワルツです。
バレエ組曲なんですよね。バレエの演目として、演じられることは今もあるんでしょうか? 私はまったく知りませんでした。
マックス・レーガーはマイナーな作曲家というわけではありませんが、どんな曲があるかと言われても私は何も言えません。オルガンが専門の人のようです。
なんとなく…弦楽器のアンサンブル曲を書いている人というイメージが…
私が合唱団に入っていたときに、ミサ曲を歌ったことがあったような…
しかし調べてみると、なんとワーグナーの曲を2台ピアノに編曲しているようです。また、バッハのオルガン作品や、ブラームスの歌曲、R.シュトラウスの歌曲をピアノ独奏用に編曲しているようで……もしかしてご同胞?
買う。楽譜買います!
とりあえず、IMSLPにありました。ありがたい。
https://imslp.org/wiki/Category:Reger,_Max
【4】マーラー
4-1 交響曲第5番 第4楽章 アダージェット
⬜14分 酔ったラップをジェシカに任せてふたりをタクシーに乗せ、ひとりでバーにいくヤン。
さらに切ない場面です。冒頭部分が少し流れます。
本伝でジェシカがピアノを弾く場面ではブラームスの小品が使われており、あの曲がジェシカのテーマかなと思っていましたが、このマーラーの「アダージェット」もよく流れます。たぶんサントラCDではこちらがジェシカのテーマになっていたように思いますが、ヤンとジェシカ、ふたりがいるとき、という場面もけっこうあるような。
他にはこちらで流れます。
▻第3話「第十三艦隊誕生」 空港でジェシカを見送るヤン
▻第10話「ジェシカの戦い」ヤンとジェシカが再会
▻第21話「ドーリア星域会戦、そして… 」ジェシカの死
また、下記でも流れます。
▻第098話「終わりなき鎮魂歌」 ヒルダのことを考えるラインハルト
▻外伝「朝の夢、夜の歌」Kap.Ⅳ 連行されるハーゼ
こちらは冒頭ではなく、終わりの部分が流れます。
▻外伝「決闘者」Kap.Ⅱ 決闘の日時が決まるシーン
この曲、また輪をかけて切ないですね! 泣けるクラシックみたいな企画では必ず入りますもんね。
こちらは映画「ベニスに死す」で使われ、広く知られるようになったと聞いています。そういえばあの映画の主役である少年(の役のビョルン・アンドレセン)の美少年ぶりは、もしも銀英伝が実写化されたらラインハルトはあんな感じと言われることも多いです。
…で、語彙力がなく「切ない」しか出てこないのですが、切ない曲です。美しく、ものがなしい曲。
以下、私がそう思う要素をお伝えします。あくまでも、私「が」です。

1️⃣ヴィオラ(Violen)やチェロが、小さい音でそーっと鳴る中(①)、ハープもそっと入ってくるところ。
2️⃣第1ヴァイオリンのメロディーが始まる(②)。こちらもそーっと入るのだけれど、「ド・レ・ミ」と一個ずつ、少しだんだん大きく、だんだんゆっくりとなるところ。espressivo(表情豊かに)という指示も入っています。

3️⃣ 2で「ド・レ・ミ」ときてそのまま「ファ」といかずに、「ミ(丸で囲っているところ)ファ」とくるところ。「ドレミ・ミーファー」
加えて、「ド・レ・ミ」でだんだん大きくなっていたのに、その「ミーファー」で急に小さい音になるところ。
4️⃣そんな「ド・レ・ミ・ミーファー」のところに青線を引きました。その次の青線部分も「ファシラ、ソー」といかずに「ファシラ・ラーソー」と「ラ」が入っているところ。
※3の「ミ」、4の「ラ」は、本来の和音の音とは違う音です。そして本来の音のとなりの音で、本来の音につなげる橋渡しのような役割をしています。
こういうのを倚音(いおん)といいます。
和音と同じであれば、きれいに素直に響くところを、違う音が入るということは、音がぶつかりあうわけです。そこがドラマチックになるというか、切ないというか、そういう効果が出ます。
※和音は基本的には「ファラド」など、間をあけて3つ重ねた音ですが(三和音)、これを4つ「ファラドミ」、5つ「ファラドミソ」ともっと重ねる場合もあります。
4つ重ねた和音(四和音)はセブンスコードといって、特にジャズやポップスでは普通にバンバカ使われています。こんなふうにセブンス、ナインス…と重ねると、なんだかこじゃれてかっこよくなるのです。クラシックにはそれがないのではなく、逆に和音によってはセブンスのほうが普通な場合もあるんですが。
そのように、四和音で考えると3の「ミ」は、セブンス(四和音)「ファラドミ」のミともいえます。
ちなみに4つなのになぜセブンかというと、「ファラドミ」でファからミまでが7個分あいているからです。ファ、ソ、ラ、シ、ド、レ、ミ、で7つ。これを7度といいます。
5️⃣3つ目の青線部分も同じような「タタタ・ター」というリズムできたのに、今度は倚音なしで、「ソラシドー」と素直に続くところ。
ソラシ・シードー ではなく。

6️⃣……素直に続くんですが、そのかわり、ソラシドード「レー」ド と上がります。そしてその「レー」のところで(オレンジの四角)調ががらっと変わるところ。
ハープと、下のほうのチェロ、コントラバスに♭がついており、へ長調だったのが、ヘ短調の和音に。突然曇り空。

長調から短調に変わるのは、よくあるのは平行調といって、ト音記号の横についている♯や♭が同じ調(この場合はニ短調)に移るパターンなのですが、こちらは同じ「へ(ファ)」の調に変わりました。これだと、よりドラマチックになります。泣かずにいられましょうか。
以上。私が切ない…と感じる要素です。
このヤンのシーンで流れるのはたったこの1段だけなんですが、これだけでこんななので、この先ももっとあれやらこれやら……ぜひお聴きになってみてください。
ところで倚音は、別に珍しいものでもなく、曲の終わりなんかにもよく使われます。
外伝「決闘者」Kap.Ⅱでは終わり部分が使われていると書きましたが、ヴァイオリンがながーーい倚音を弾いています。
クラシック音楽はもちろん、ポップスなんかでもよくある形ですけれど、えーと、何か例になる曲はないかしら……ではこの話は「決闘者」のときに。
4-2 交響曲第1番「巨人」第4楽章
⬜51分 ファーレンハイトが戦闘開始
(速水さんの声が素敵です……)
こちらは4楽章の頭から。いきなり1拍目からシンバルが入り、すぐに大音量の管楽器がサイレンのように鳴ります。そのあとも緊迫感のあるメロディーで戦闘シーンに似合います。かっこいいです。
シンバル奏者は、なかなか緊張しますよね。いきなり、ジャーン!ですからね。
🎧曲を聴く 36:35
リンク先は、アンドレス・オロスコ=エストラーダ指揮のhr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)のYouTube動画ですが、私がシンバル担当だったら入れるだろうか…という指揮なんです。これは彼の特徴なのか、どの指揮者もそうなのかと気になって、この頭のところだけ、いろんな指揮者の動画を見てみました。すると普通に「さん、はい」みたいな分かりやすい指揮者もいましたし、いろいろですね。
⬜55分 同盟軍第4艦隊の壊滅
先ほどは4楽章の頭、こちらは終わりの部分です。同盟軍がドカスカやられているシーンですが、帝国側からすれば勝利なわけで、そんな感じの晴れ晴れとしたフィナーレです。
ヤンの言うことをきかなかったパエッタ提督……銀英伝の物語の終わりのほうで、その行く末が出てきますね…
マーラーの交響曲第1番は、19か所のシーンで使われています。
4楽章はそのうち13か所と、圧倒的に多いです。
4-3 交響曲第2番「復活」第5楽章
⬜21分 皇宮から帰る馬車の中でのラインハルトとキルヒアイス
5楽章はドラが鳴り、金管楽器が鳴り響く激しい音楽で始まるのですが、そのパートが3分ぐらいでひと段落したあと、静かにホルンが鳴り、オーボエの3連符のソロがはじまります。その箇所です(オレンジの矢印)。

短調でちょっと不安げな悲しげな感じもする響きです。ラインハルトが、あと何回戦えば姉上を救い出せるのだろうと言います……そうですよね、発端はそこだったんですもんねえ。
【5】グリーグ/抒情小曲集 第3集 春に寄す
⬜16分 アンネローゼがふたりを出迎える
はい、いつもの皇宮でのアンネローゼさまと、ラインハルトとキルヒアイス。幸せシーンです。
今回はここまで。次は、ベートーヴェンなどなど。続く…
BGMリストについて
BGM全曲をスプレッドシートでリスト化し、該当曲がアニメで流れる箇所からYouTubeで聴けるようにリンクを張っています。
今回ご紹介した映画「新たなる戦いの序曲」のリストが見られるのは こちら です。
このnoteをお読みになって曲に興味を持たれた方や、アニメを見て「聞き覚えはあるけれど曲名が思い出せない」「この曲をフルで聴いてみたい」「あの場面ではどんな曲が流れていたのか知りたい」と思ったとき、ぜひご活用ください。

