外注3件中2件を作り直し。手戻りを消したのは見本30分
お迎えまであと2時間、手元には3件残っていて、どう並べ替えても2件しか終わらない。その日の夜、私は初めて外注のボタンを押しました。
人に仕事を渡すのが怖かったのは、失敗したら申し訳ないからではなく、結局自分でやり直すことになったら意味がないから。今回はその「やり直し」を実際にやることになったので、記録として残しておきます。
何を出して、いくら払ったか
頼んだのは3件、合計42,000円でした。
セミナー資料の図版づくり:12,000円
顧客向け説明文のリライト:15,000円
過去1年分の請求データの転記・突合(突合=2つの資料を並べて、数字が合っているか確かめること):15,000円
クラウドソーシングで見つけた方2名にお願いし、納期はどれも1週間前後。個人情報や顧客情報を含む部分は、識別できる形にしないよう手を入れてから渡しています。守秘義務のある業務を外に出せるかどうかは、契約や業務の種類によって違うので、迷ったら先に契約内容を確認したほうがいいと思います。
結果として、42,000円のうち28,000円分の2件を、自分で作り直すことになりました。

作り直した2件に共通していたこと
図版は「見やすくしてください」としか書いていませんでした。私の頭の中には「この資料は初めて聞く人向けだから、専門用語は図の中に入れない」という前提があったのですが、それを一文字も書いていなかったのです。
リライトも同じでした。「やわらかく」とだけ伝え、私が本当に欲しかったのは「言い切らない、断定を避ける」書き方でした。
どちらも、成果物の質が低かったわけではありません。相手は、渡された指示どおりに作ってくれていました。抜けていたのは、私の頭の中にしかなかった判断基準のほうです。
「見やすく」「やわらかく」「いい感じに」は、自分の中でしか意味を持たない言葉でした。
手戻りゼロだった1件、渡す前の30分
データの転記だけは、手戻りがありませんでした。渡す前にやったのは、これだけです。
完成見本を1件分だけ自分で作って添付した
判断に迷いそうな場面を3つ先に書いた(金額が空欄のとき、日付の表記が揺れているとき、同じ会社名で表記が違うとき、それぞれどうするか)
「迷ったら手を止めて質問してください、質問は減点ではありません」と1行入れた
かかった時間は30分。この30分が、あとの6時間を消してくれました。
指示に足した時間を比べると、手戻りが出た2件は合わせて15分、手戻りゼロだった1件は30分。差はたった15分です。それなのに、作り直しには子どもが寝てから2日分、合わせて約6時間かかりました。
元教員としても、これは覚えのある失敗でした。「はい、まとめてみましょう」とだけ言って、教室が固まったことが何度もあります。何をどこまで書けば「まとめた」ことになるのか、こちらが示していなかったからです。「3行で」「理由をひとつ入れて」と条件を足すと、子どもたちは急に動き出しました。外注もAIも、たぶん同じです。
実際、AIに文章の下書きを頼んだときも、出力自体は数分で出るのに、確認と直しに30分以上かかることがあります。原因はいつも同じで、私が「何をもって合格とするか」を渡さずに、作業だけを渡しているからでした。人に頼むときは相手が「これで合っていますか」と聞き返してくれることがありますが、AIは聞いてきません。判断の抜けが、そのまま出力に化けて返ってきます。だから見本を渡す効果は、AI相手のほうがむしろ大きいと感じています。

いま使っている、出す・出さないの線引き
今回のことがあってから、外に出す前に自分に聞くようにしていることが3つあります。
正解が1つに決まるものか(転記、突き合わせ、形式そろえは出す。私の頭の中にしか正解がないものは出さない)
完成見本を1件、自分で作れるか(作れないなら、自分でもまだ基準が固まっていない証拠)
相手の名前で外に出るもの、責任がこちらに残るものではないか(署名する書面や個別の判断が入る回答は出さない)
出さないと決めたものは、諦めるのではなく、短くする・やめる・時期をずらす、のどれかで処理することにしています。
作り直しになった2件については、報酬は満額そのまま支払いました。指示どおりの納品だったからです。相手には「こちらの指示に条件が抜けていました」と先に伝え、1名には条件を書き直して再依頼しました。2回目は、手戻りが1か所だけで済んでいます。ただ、報酬や再依頼の扱いは契約や利用するサービスの規約によって変わるので、これは私の判断であって、正解ではありません。
渡しているのは作業で、判断はまだ自分の手元にある。そのことに気づけるかどうかが、外注でもAIでも分かれ目でした。
次に人やAIに渡す仕事を1つ選んで、渡す前に完成見本を1件分だけ自分で作ってみてください。作れなかったら、それはまだ自分で持っておく仕事だと判断していいと思います。

