「社長には、見栄が必要だと思っている。」
売上より先に、生活レベルだけが上がっていった。
会社を作って、周りから「社長」と呼ばれるようになった頃。
今振り返ると、会社の成長より先に、自分の生活だけが少しずつ変わっていきました。
飲みに行く回数が増える。
付き合いが増える。
ゴルフに行く。
服や持ち物も、それなりのものを選ぶようになる。
「社長なんだから、これくらいは」
そんな感覚が、少しずつ普通になっていきました。
でも当時の会社は、そこまで余裕があるわけではありませんでした。
売上が安定しているわけでもない。
利益が十分に残っているわけでもない。
資金繰りに余裕があるわけでもない。
それなのに、自分の感覚だけが先に“社長仕様”になっていました。
ただ、「見栄」が全部悪いとは今も思っていない
経営者には、ある程度の見栄も必要だと思っています。
特に社員の前では。
会社が少し苦しいからといって、
社長が毎日のように不安な顔をして、
「金がない」
「今月厳しい」
「どうしよう」
そんなことばかり言っていたら、社員まで不安になります。
社員には生活がある。
家族がいる。
給料日に給料が入ることを信じて働いている。
だから経営者は、本当は不安でも、
「大丈夫。」
「仕事は俺が取ってくる。」
「給料の心配はするな。」
そう言って立っていなければいけない時があります。
僕は今でも、それも経営者の仕事だと思っています。
ある意味、それも「見栄」です。
でも、
社員を安心させるための見栄と、自分を大きく見せるための見栄は違う。
当時の僕は、その違いが分かっていなかった。
必要だったのは、自分のための見栄ではなかった
良い車に乗る。
飲み歩く。
ゴルフに行く。
経営者仲間との付き合いを増やす。
それ自体が悪いとは思いません。
信用につながる場面もあるし、
付き合いから仕事が生まれることもあります。
ただ、
「社長だから」
という理由だけでやっていたものも、正直ありました。
本当に守るべきだったのは、
自分が社長らしく見えることではなく、
社員が安心して働ける会社をつくることでした。
給料を遅らせない。
仕事を切らさない。
社員の前では慌てない。
問題が起きた時は自分が前に出る。
会社に何かあれば最後は自分が責任を取る。
そういうところで見栄を張るべきだった。
会社のお金を、自分のお金のように見ていた
当時は「経費」という言葉にも甘えていました。
「仕事だから」
「付き合いだから」
「営業だから」
理由をつければ、使うことへの抵抗が薄くなっていく。
でも、
経費だからタダになるわけではありません。
1万円使えば、会社の現金は1万円減る。
その1万円は、
社員が現場で汗をかいて稼いだお金かもしれない。
取引先から信用してもらって入ってきたお金かもしれない。
そう考えると、
使い方はもっと慎重であるべきでした。
売上があると、お金があるように錯覚する
会社を経営していると、大きなお金が口座を通ります。
100万円。
500万円。
1,000万円。
すると、
「結構お金あるな」
と錯覚してしまう。
でも、その多くはこれから出ていくお金です。
材料代。
外注費。
給料。
社会保険。
税金。
家賃。
車両費。
借入の返済。
口座に1,000万円あっても、
自由に使える1,000万円ではありません。
僕はそこを理解するのが遅かった。
社長が格好をつけるなら、会社のために
今の僕なら、こう考えます。
経営者が見栄を張るなら、
社員の給料を守るために張る。
仕事が厳しい時ほど堂々とするために張る。
取引先との約束を守るために張る。
社員が不安にならないように張る。
そして自分自身には、できるだけ見栄を張らない。
良い車に乗っているかより、
会社に現金が残っているか。
周りから成功していると思われるかより、
社員が安心して働けているか。
そっちの方が大事です。
昔の僕は、
「社長に見えるための見栄」と
「社長として背負うための見栄」を混同していました。
今なら分かります。
経営者には見栄も必要です。
ただし、
その見栄が誰のためなのか。
そこを間違えてはいけなかった。
これも、失敗してから気づいたことの一つです。
