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【地方創生 第11弾本編】ロッカールームを飛び出した「問題児」の猛追。台風前夜、那覇の街を疾走したシーサー班が掴んだ覚醒のストーリー

どんな組織にも、最初から光る優等生と、何度言っても腰の上がらない問題児がいる。だが、地方創生の舞台で本当に恐ろしいのは、その問題児が「本気で化けた」瞬間だ。

ほんの1週間前、那覇市首里を舞台に選んだシーサー班の動きは、最も遅く、最後まで要注意の班だった。研修会場では活発に議論しているように見えて、実態は腰が重い。第1回から第2回の一月の間は、ほぼ何もしていなかった。

見かねた事務局は、彼らに強力なテコ入れを行った。長年かりゆし塾で商品開発関連の講義を担当していただいている、沖縄物産コーディネーターの池村博隆氏を、彼らに紹介したのだ。

そのフィードバックに、私はこう題した。

「このままでは危ないですよ。まだピッチにすら立っていない」

冷徹な一言だった。しかし、この一言が、彼らの魂に火をつけた。

「一番下を取ったのだから、あとは上がるだけ」という最高にポジティブなマインドセットのもと、彼らは見違えるほどの進化を遂げ、一気に戦況をひっくり返す猛ダッシュを始めたのである。


◆ 台風前夜、泥をかぶった3日間の怒涛のヒアリング

8月4日から8月6日にかけて、沖縄に台風が接近しつつある緊迫した暴風雨の裏で、彼らはロッカールームを飛び出し、ユニフォームを着てピッチを猛スピードで走り始めた。

主要関係先である、首里琉染、首里染織館suikara、人力車事業者、琉球びんがた事業協同組合のすべてに、怒涛の連続ヒアリングを自力で行ったのだ。机の上の議論を終わらせ、自分たちの足で泥臭く現場の生の課題を掴み取るプロセスは、100点満点だった。

ここで彼らは、現場の現実に基づいた冷徹かつ的確な軌道修正を自発的に下す。

伝統工芸の拠点である首里染織館suikara(首里織)へのヒアリングにおいて、「今年は組合の50周年記念で超多忙であり、新規連携の余力がない。外部委託を行わず自分たちで賄う直営主義である」というリアルな拒絶に直面したのだ。

普通の大人ならここで立ち往生するか、計画にしがみつくだろう。しかし、彼らは違った。昨年の先輩方が「首里全体」と対象エリアを広げすぎてまとまりきらなかった懸念を自分たちで分析し、今回は「首里琉染のサンゴ染め」と「目前の通り(綾門大道)」へと取り組む範囲をギュッと絞り込んだ。


◆ 先方の「2つの悲鳴」を狙い撃ちにする、お助け黒子プラン

「良いものを作れば売れるではない。どこで誰に売るかという出口(販路)から逆算すること」

池村氏からのシビアな助言を受け、彼らは先方がヒアリングで吐露した「本当に困っている2つの悲鳴」に狙いを定めた。

悲鳴①:布小物の縫製・加工職人が圧倒的に不足している。伝統技法の伝承に特化しているため、バッグや小物に加工できる人材が不足しているという現実。

悲鳴②:自分たちで観光人流や消費データの分析を行う余裕が一切ない。

よそ者から「一緒に新しいイベントをやりましょう」と提案しても、まず断られる。だからこそ彼らは、「先方の作業や負担は一切増やさず、自分たちの強みで彼らを助ける」という、お助け黒子プランという武器を携えた。

ここで、シーサー班のメンバーが持つ「所属企業の看板」という最強のカードが、解決のピースとしてカチリと噛み合う。

市が持つ観光人流・消費データを共有する仕組みを設計。さらに、行政のハブとして地元の福祉作業所や専門学校をマッチングし、「布小物加工人材育成プログラム」の行政提案書(骨子)を描く。

さらにアップサイクル小物をフェアで販売し、クレジットカード会員向けのプレミアムギフトとして流通させるなど、民間主導の確実な出口戦略を設計する。

これこそが、先方に新しい負担を一切かけず、先方の課題だけを解決する「三方良し」の地域活性化プランへと昇華した瞬間であった。


◆ 人間味あふれるリアルな交渉と、コロンブスの卵

彼らの実務レベルの解像度は、恐ろしいほどに高い。

人力車を走らせる上での最大の障壁となる「車庫の確保」において、彼らは最有力候補である安国寺に対して、極めてリアルな交渉ストーリーを展開した。

車庫の保管要件:高さ2.2m以下、幅1.2m程度、2台分、夜間セキュリティを明文化した上で、リーダーの友人の実家という人脈を活用。その友人が「求職中」であることと、「市役所の臨時職員募集情報を紹介し、信頼関係を築いた上で最初の打診を打つという、人間味あふれる生々しい交渉を実践しているのだ。

さらに、お金をかけて物理的に中山門を復元するのではなく、「現地にある、道路と並行で目立たない既存の看板の向きを、通りに対して垂直に変えるだけで視認性を劇的に高める」というアイデアを弾き出した。よそ者視点ならではの低コスト・高効果な、コロンブスの卵である。


◆ 始まりの終わり。「大丈夫です」から正念場へ

11月23日の首里城一般共用イベントに合わせた「1週間から10日間の人力車実証運行」の確定、そしてメンバーのプログラマーが1ヶ月勉強して挑む「中山門ARデジタル復元プロジェクト」など、彼らのプランはすでにゴールの枠を捉えてシュートを打ち始めている。

本日の第3回講義、ディスカッションタイムにおいて、メンバーから私へ直接届いた報告。

「フィードバックメールで気合が入りました。大丈夫です!」

その力強い言葉を受け取った時、指導者として、大人の部活の顧問として、胸の奥から湧き上がったのは、ただただ純粋な嬉しさだった。この人たちには気持ちがある。必ず化けるという確信が、本物になった。

しかし、先日の対象地域と地域資源の決定は、長い旅路における「始まりの終わり」にすぎない。本番はこれからだ。

9月から11月にかけて、実証実験イベントの実施と、地域活性化プランレポートの作成という、2つの大きな山が容赦なく同時に迫ってくる。

この8月後半は、その試練に向けた、地域の方々とのイベント企画や開催場所の確保、緻密な利害調整という仕込みの時期となる。今、動かなければ、10月には確実に頓挫する。

私は本日、彼らにディスカッションを加速させるための「地域活性化プラン設計アプリ」を手渡した。

チームビルディングにおける最大の壁である「混乱期(Storming)」を突破し、お互いの強みを認め合い自発的に走り出す「統一期(Norming)」へと完全に突入したシーサー班。

彼らの躍動感あるフットワークで、11月23日の実証運行という小さな勝利を掴み取るまで、私はどこまでも彼らの気持ちに寄り添い、全力で伴走支援を続けるつもりだ。

問題児と呼ばれた彼らが、たった1週間で、ここまで走った。

しかし、11月の実証実験が、本当に成功するかどうかは、まだ誰にも分からない。

彼らの正念場を、私も一緒に見届けたいと思います。

本日もお読みいただきありがとうございます。

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