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【AI格闘記89】一晩で完成した6作目の最高傑作。されど「魂」はまだ宿っていなかった~三現主義が仕上げる、現場で凍らせないロジックの話~

深夜2時。画面に浮かんだ「完成しました」の文字を見て、私は思わずガッツポーズをしました。

崩れ落ちたのは、その7時間後です。


◆6作目の最高傑作、一晩で誕生

老眼トレーニングアプリに始まり、カロリー記録アプリ、フィードバック面談設計アプリ……。Claudeと二人三脚でアプリを作り続けて、今回が6作目になります。

お題は、研修「かりゆし塾」で使う「地域活性化プラン骨格設計シート」。第1章から第5章まで、論理を積み上げながらプランの骨格を作っていく、これまでで一番骨太なWebアプリです。

依頼した夜のうちに、動くものが仕上がってきました。5つの章、検図スタンプ、自動保存、印刷プレビューまで、一晩で。「これはもう、神の領域だ」と、私は本気でそう思いました。


◆魔法のAIが突きつけてきた「机上の空論」

ところが、翌朝改めて動かしてみると、妙に息苦しいのです。

原因はすぐに分かりました。「地域資源の魅力(機能・体験・物語)は、3つとも必ず地域の課題解決に結びつけなさい」。

AIが組んだロジックは、そう研修生に迫っていました。

理屈としては、完璧です。分かります。でも、現場を知っている人間としては、ここで「うっ」と唸ってしまいます。

初めてプランを考える研修生が、3つの魅力すべてを無理やり課題にこじつけようとしたら、間違いなく手が止まります。「これで合っているのか分からない」と固まってしまう顔が、目に浮かびました。

正しいロジックが、必ずしも現場で使えるロジックとは限らない。AIが一晩で仕上げてきたのは、あくまで「机上の空論」だったのです。


◆魂は細部に宿る。貫いた「三現主義」

建築家ミース・ファン・デル・ローエは「神は細部に宿る」と言いました。私はいつも、これを「魂は細部に宿る」と勝手に言い換えて使っています。

現場を渡り歩いてきた人間のはしくれとして、私が譲れないのは「現場・現実・現物」三現主義(※)です。

※三現主義は、問題解決や意思決定を行う際の基本原則です。机上の空論やデータだけに頼らず、「現場」に赴き、「現物」を手に取り、客観的な「現実」を直視して事実に基づいた判断をすることを指します。

過去に研修生が実際に仕上げた「南風原町のスターフルーツ」「うるま市のやまぐすく茶」「西原町の島おから」、この3つの現物をAIに読み込ませました。そして、こう指示を出しました。

「3つ全部じゃない。どれか1つでも課題にしっかり繋がっていれば、それでいい仕様に変えてくれ」

実際の資料を見比べると、3つの実例とも、課題にはっきり繋がっていたのは1つだけ。あとの2つは、資源そのものの魅力を語る役割でした。理屈より現物です。AIの「完璧な正論」は、この時点で静かに書き換わりました。

ついでに、「3ステップの前に、キャッチコピーを入れる箱も作ってくれ」と、細かい注文も重ねました。実際の資料には、あったりなかったりする、そういう箱があったからです。

配布したときのセキュリティ面まで、遠慮なくAIと突き詰めました。「サーバーを持たない」「秘密情報を埋め込まない」。

ここまで確認して、ようやく肩の力が抜けました。


◆現場知への執念と、終わらないアップデート

AIという道具は、とんでもなく強力です。一晩で、私一人では到底作れないアプリの骨格を組み上げてくれます。

けれど、それだけでは「本当に使えるもの」にはなりません。現場を知っている人間が、泥臭く手を動かして、魂を吹き込んで、初めて研修生の手に渡せるものになります。

今回のアプリも、まだ完璧ではありません。きっと来月には、また違う場所でつまずくのでしょう。

それでも構わないのです。この手作りの道具を、毎年少しずつアップデートしていく。そのこと自体が、もう私の楽しみになってしまっています。

さて、あなたが最後に「細部」へ手を伸ばしたのはいつでしょうか。その一手間を、誰かがちゃんと見てくれていると、信じられていますか。

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