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人員が確保されているときほど、クレームが増える

患者(客)は、店舗の中を見ている。

待ち時間が長くなると、携帯電話を見ていた患者(客)が顔を上げ、店内を見渡し始める。「まだできないかな?」「私の薬の準備はどこまで進んでいるのかな?」という気持ちからである。

しかし、待ち時間がさらに長くなると、患者(客)の視線は少しずつ変わってくる。調剤室を見たり、職員の動きを見たり、「職員がどんな動きをしているのか?」を確認するようになる。

ここに、待ち時間クレームの一つの真相がある。

こんな経験はないだろうか。職員に欠員があり、「この人数で回せるか分からないけれど、やらなければならない」という日に限って店舗が混雑する。案の定、うまく回らず、待ち時間もかなり長くなった。その日の夕方には、「今日は患者さんに迷惑をかけたね」「さすがに今日は大変だったね」と職員同士で話になる。しかし、振り返ってみると、その日に限って待ち時間に対するクレームはそれほど多くない。

一方で、職員の人数が十分に確保されている日に混雑し、店舗がうまく回らず、待ち時間が明らかに長くなっていると、待ち時間クレームが一気に増える。小売店や薬局など、店舗で働く職員や責任者であれば、一度は経験したことがあるのではないだろうか。

なぜ、人が少ない日の方がクレームが少なく、人がいる日の方がクレームが増えるのか。

患者(客)の行動から考えれば、それほど難しい話ではない。

職員が少ない日は、朝から全員が「今日は人が少ない」ということを理解している。一人ひとりが「自分が止まったら回らない」「次に何をすべきか」「誰を手伝えばいいか」という意識を持って仕事をする。もちろん、それでも物量が多ければ店舗は回らない。待ち時間も発生する。しかし、患者(客)が店内を見ると、そこには必死に動いている職員の姿がある。患者(客)から見ても、「今日は混んでいるな」「人が少ない中で大変そうだな」と感じ取ることができるのである。

ところが、職員が十分にいるにもかかわらず店舗が回っていない場合は違う。連携がうまくいっていない。指揮系統が機能していない。自分の仕事が終わった職員が、他の仕事を手伝わない。手が空いている職員がいる。ゆっくり行動している職員がいる。PCの画面を眺めている職員がいる。もちろん、その職員にも必要な仕事があるのかもしれない。しかし、それは患者(客)には分からない。

患者(客)から見えるのは、「待っている自分」と「目の前で動いている職員」である。

そして、こう考える。

「こんなに人がいるのに、なぜ私の薬はまだできないのか?」

ここで、単なる「待ち時間に対する不満」に、「店舗運営に対する疑問」が加わる。

「待ち時間が長い」だけなら、混雑しているから仕方がないと納得できる。しかし、「これだけ職員がいるのに、なぜこんなに待たされるのか」と感じた瞬間、その納得が崩れるのである。患者(客)は、無意識のうちに店舗の中を見ながら、「この待ち時間は本当に仕方のないものなのか?」を判断している。

私はこれを、**「可視化された稼働量の法則」**と呼んでいる。

人が少ないときは、職員の稼働量が高く見える。全員が動いているからだ。一方、人が多いときは、一人ひとりの稼働量に差が出る。その差が患者(客)から見えてしまう。「この人はずっと動いている」「この人は手が空いているように見える」「この人はPCを見ている」「この人は自分の仕事が終わったようなのに、誰も手伝っていない」。そうした情報が患者(客)の中で一つにつながり、「人がいるのに、なぜ回らないのか」という疑問になる。

店舗側からすれば、非常に厄介な問題である。

なぜなら、実際にはその職員にも必要な仕事があるかもしれないからだ。しかし、ここで「必要な仕事だから仕方がない」と考えてはいけない。

必要な仕事をしている場合であっても、第一優先は患者(客)であることを忘れてはいけない。

問題は、その仕事が「必要か、必要ではないか」だけではない。

「今、この混雑した状況で、患者(客)を待たせてまでやる必要がある仕事なのか」

ということである。

例えば、後でできる業務なのか。今やらなければならない業務なのか。患者(客)を待たせてでも優先すべき業務なのか。それとも、目の前の患者(客)への対応を優先し、落ち着いてから実施すべき業務なのか。

この優先順位を判断することこそ、責任者の仕事である。

現場の職員一人ひとりが、自分に与えられた仕事を真面目にこなしているだけでは、店舗全体として正しい判断になるとは限らない。職員からすれば「必要な仕事」であっても、店舗全体を見れば「今やるべき仕事ではない」こともある。

だからこそ、責任者は店舗全体の状況を見て、優先順位を決めなければならない。

「その仕事は必要か?」ではなく、「今、それをやる必要があるのか?」

ここを判断できなければ、人員を増やしても店舗は回らない。

クレームが発生した際、職員が患者(客)に対して、「この職員は○○の仕事をしていました」「こちらの作業を優先していました」「実は裏でこういう処理をしていました」と説明しようとすることがある。しかし、多くの場合、これは逆効果になる。

患者(客)からすれば、「そんなことは知らない」という話だからだ。

患者(客)が知りたいのは、店舗内部の事情ではない。「なぜ、自分がこんなに待たされているのか」である。店舗側の事情を説明すればするほど、「では、なぜもっと早くできなかったのか」「それなら、なぜ他の職員は動いていないのか」と、さらに疑問を生む可能性すらある。

だからこそ、責任者が考えなければならないのは、単純な「待ち時間の短縮」だけではない。患者(客)から見える職員の稼働量である。

なぜ、人が確保されているときほど店舗が回らなくなるのか。指揮系統の崩壊、業務の属人化、責任の所在が曖昧になっている、他責的な職員が組織の中で機能していない、自分の仕事だけを終えればよいという意識、心理的な環境要因、物理的な環境要因など、様々な原因が考えられる。これらについては、これまでの【覚悟論】【チーム論】【リーダー論】【成果論】でも詳しく取り上げている。

しかし、責任者が忘れてはいけないのは、これらの問題が患者(客)から見えてしまうということである。

人が多ければ、単純に店舗の生産性が上がるわけではない。組織が機能していなければ、むしろ「人がいるのに動いていない」という状態が可視化される。そして、その光景を患者(客)は見ている。

待ち時間が長いこと以上に、「これだけ人がいるのに、なぜ自分は待たされているのか」という納得できなさが、クレームを生むのである。

だからこそ、責任者が見るべきなのは「何人いるか」だけではない。

その人数が、患者(客)の目にどう映っているか。

人員を確保した。それだけで安心してはいけない。

重要なのは、その人員が一つのチームとして機能し、その稼働が患者(客)から見ても納得できる状態になっているかである。

店舗運営では、「人がいること」と「人が機能していること」は、まったく別の話なのである。

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