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「聞き書き青春記」㉛青春の光と影

「ひどいと思いませんか?」
D君の語気が荒い。
「大学時代、よくフラれたんです。つれづれなるままに、いつもの喫茶店に行きました。いるはずの仲間たちは、どこに行ったのか、いません。出席を稼ぎに講義を受けに行ったのか。冷たい珈琲を頼んで、本を読んでいると、『元気ないな』と言いながら一人の男が前に座りました。同じ研究会、同期のKです。待ち合わせの暇つぶしにぼくを見つけたようで、注文取りに来た店員に、『後で』と言いいました。『元気ないな』に気を許してしまったぼくは、フラれた話をしました。『またかよー』と言って、精一杯の慰めの言葉をかけてくれました」
D君が咳をひとつして、私を見ました。ビールならあるよ、と言うと冷蔵庫から取り出して一口飲みました。いい顔をしていました。
「『あのなあ、Dよ、フラれる方が、何倍もいいぞ。フルのはつらいぞ』ぼくはKに反論しようとしましたが、Kは待ち合わせの女の子が来ると、ーー新しい彼女のよう、そっちのテーブルに移っていきました。そして話をしながら二人でチラとぼくの方を見ました」
私は涙を浮かべ、D君に気前よくもう一本ビールを空けてやりました。
「噂話ですが、北海道から来た男が、ゴキブリとコオロギを勘違いして部屋で飼っている、――北海道にはゴキブリはいません、と聞いたことがあります。ぼくはそれがKではなかったかと今でも思っています」
復讐を果たしたD君の顔は晴れやかでした。それもそのはず、最近、彼女が出来たと聞いていたからです。私は、勘違いでなければいいがと、つい思ってしまいました。

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