見出し画像

前の記事では

「AIを導入する」より前に、顧問相談したいこと
について書きました。

AI導入というと、
「どの生成AIを使うか」
「どのシステムを入れるか」
「何を自動化するか」
といった話から始まりやすいと思います。

もちろん、それらも大切です。
使うツールやシステムがある程度決まっている場合には、導入支援やプロンプト改善、業務自動化といった一般的なAI支援が、とても有効なことも多いと思います。
ただ、実際に企業のAI活用について相談を受けていると、その前に整理したほうがいいことがかなりあります。

たとえば、
「そもそも何をAIにしたいのか、まだよく分からない」
「現場からAIを使いたいという話は出ているけれど、テーマが定まらない」
「プロンプトを作ったけれど、回答品質が安定しない」
「PoCまでは作ったけれど、本当に本導入すべきなのか判断できない」
「経営者や専門家の頭の中にある感覚を、AIにうまく乗せられない」
こういう段階です。

そこで今回は、少し抽象的な「AI顧問」という言葉から一歩下りて、
実際には、どんなことを相談できるのか
を具体的に整理してみます。

ひとつ先に書いておくと、ここでいう「相談」は、完成した課題を持ってくることを前提にしていません。

「何が問題なのか、まだうまく言えない」
「AIで何かできそうだけれど、何をすべきか分からない」
「現場に違和感はあるけれど、テーマになっていない」

そのくらいの状態からでも大丈夫です。
むしろ、まだ言葉になっていないものを一緒に整理して、考えられる・試せる・判断できる状態まで持っていくことも、AI顧問の仕事だと考えています。

1. 「AIで何をするか」が決まっていなくても相談できる

意外と多いのが、
「AIを使いたいけれど、何に使えばいいのか分からない」
という相談です。

これは、まったく問題ありません。
むしろ最初から、
「チャットボットを作る」
「RAGを導入する」
「AIエージェントを作る」
と解決方法を決めてしまわないほうがいい場合もあります。

まず見るのは、
● どこで仕事が止まっているのか
● 誰が困っているのか
● どんな判断に時間がかかっているのか
● 同じ説明や作業を何度もしていないか
● ベテランだけができる判断はないか
● 顧客との会話の中に繰り返し出てくる問題はないか
といったところです。

そこから、
課題 → AIでできそうなこと → 小さく試す方法
へ変えていきます。

場合によっては、
「FAQをAI化しましょう」
と考えていたものが、
「FAQではなく、問い合わせ内容を整理して適切な担当者へ渡すAIのほうがいいですね」
となることもあります。

AIの企画を考える前に、
AIで取り組むべき課題そのものを一緒につくる。
ここから相談できます。

実際の相談でも、最初から「これを作りたい」という明確なテーマがある必要はありません。
今使っている資料や業務の流れ、最近気になっていることなどを見ながら、「どこにAIを使う余地がありそうか」から一緒に探すこともできます。
「相談したいけれど、何を相談すればいいかまだ分からない」という段階も、十分に入口になります。

場合によっては、相談した結果、最初に考えていたAI企画をやめることもあります。
「チャットボットではなかった」
「自動化より、判断支援のほうが価値がある」
「そもそもここはAIを使わなくていい」
という結論になることもあります。

もちろん、作りたいものがはっきりしている場合には、それを早く正確に実現するAI開発支援や導入支援が力を発揮します。
一方で、まだ「何を作るべきか」自体が決まっていない場合には、その一歩手前を一緒に考える役割も必要になります。

最初のアイデアを実現することより、本当に取り組むべき問題を見つけることを優先する。
私の場合は、そうした段階から関わることが比較的多いです。

2. 今あるプロンプトやAIボットを見直す

すでにChatGPTや生成AIを使っている会社では、
「一応動くけれど、何となく惜しい」
という状態もよくあります。

たとえば、
回答が長すぎる。
人によって結果が違う。
事実と推測が混ざる。
聞いてはいけないことまで答えてしまう。
毎回、人がかなり修正している。

こういう場合は、単に文章を書き換えるだけではなく、
AIがどう振る舞うべきなのか
から見直します。

たとえば、
AIの役割は何か。
何を判断してよいのか。
何を判断してはいけないのか。
どんな情報を優先するのか。
事実と推論をどう分けるのか。
分からないときはどうするのか。
どの時点で人間に判断を戻すのか。
出力をどんな形にするのか。

こうしたものを整理します。

プロンプトというより、
小さなAIシステムの仕様書をつくる
感覚に近いです。

プロンプトの改善だけで大きく良くなるケースもありますし、定型業務であれば、一般的なプロンプト設計やAIツール導入だけで十分なこともあります。
ただ、それでも安定しない場合には、プロンプトそのものより、その前提となるAIの役割や判断範囲を見直したほうがよいことがあります。

3. 「こういうAIがあったら」を、その場で小さく試す

AIの企画では、資料だけを何週間も作るより、
一度動くものを見たほうが話が早いことがあります。

そこで、
「こんなAIがあったらどうでしょう」
という話が出たら、必要に応じて、
簡単なプロンプト、
専用GPT、
チャットボット、
分析AI、
専門家AI、
簡易Webアプリ、
AIエージェント、
などへ小さく形にしてみます。

本格的に作るものが決まっているなら、専門のAI開発会社やエンジニアにお願いするほうがよい場面も当然あります。
ここで私が作る小さな試作品は、その前に「そもそも何を作るのか」「本当に作る価値があるのか」を確かめるためのものです

完成品を作るのではありません。
まず、
触れる仮説
をつくります。

実際に触ってみると、
「これは便利」
「これは思ったほどいらない」
「この機能より、こっちが大事」
「AIではなく普通のシステムでいい」
ということが見えてきます。

大きな開発へ進む前に、
本当に価値があるのかを、小さく確かめる。
そのためのPoCやMVPづくりです。

ここで大切なのは、速く作ることそのものが目的ではないということです。
小さく作るのは、早く完成させるためではなく、早く「違う」と分かるためでもあります。

実物を見ることで、
「この機能はいらない」
「ユーザーが欲しいのは別のところだった」
「もっと単純な仕組みでいい」
と判断できれば、それもPoCの成果です。

試作品は完成品のミニ版ではなく、次の判断をするための道具だと考えています。
そのため、「こんなことはAIでできるだろうか」というまだ粗いアイデアを持ち込んでもらうこともあります。
文章で説明しにくければ、既存の業務画面や資料を見ながら考えたり、その場で簡単な形にして確かめたりすることもできます。
「企画書を書く前に、一度動くものを見て考えたい」という相談とは特に相性がいいと思います。

4. 経営者や専門家の「なんとなく」をAIで扱える形にする

生成AIで難しいのは、データがないことだけではありません。
むしろ企業には、すでにたくさんの知識があります。
ただし、それが人の頭の中にあります。

たとえば、
「この提案は、なんとなく弱い」
「このお客さんには、この言い方は刺さらない」
「数字は合っているけれど、うちらしくない」
「ここは経験上、ちょっと危ない」
こうしたものです。

これをAIに、
「いい感じにやって」
と言ってもうまくいきません。

そこで、
なぜ違和感があるのか。
どこを見て判断しているのか。
何と何を比較しているのか。
例外は何なのか。
どんな条件なら判断が変わるのか。
と分解していきます。

すると、
感覚 → 判断軸 → AIが扱えるルール
へ変えることができます。

これは、経営者、営業、CS、デザイナー、研究者、コンサルタントなど、
専門性の高い人ほど面白い領域だと思います。

AIに専門家を置き換えさせるというより、
専門家が無意識に使っている判断を、AIと一緒に使えるようにする
イメージです。

これは、単に「ノウハウを文章化する」こととも少し違います。
専門家の判断には、数字やルールだけでは表しにくいものがあります。

「少し違和感がある」
「この顧客には刺さりそう」
「正しいけれど、この会社らしくない」
といった感覚です。

そうした曖昧さを消してしまうのではなく、
何を見てそう感じたのかを少しずつ分解し、AIでも扱える判断軸へ変えていく。

AIを正解生成装置にするというより、専門家の感覚や世界観まで一緒に考えられる相手へ近づけていきます。

5. 普段の会話からAIのテーマを見つける

AI案件は、必ずしも
「AIプロジェクトを始めます」
というところから始まるわけではありません。

日々の打ち合わせで、
「毎回、この資料を作るのが大変なんですよね」
「この質問、お客さんから何度も来ます」
「新人さんには、この判断が難しいんです」
「この会議、結局いつも同じ議論になります」
という話が出ることがあります。

こうした何気ない一言の中に、
AI活用のテーマが隠れていることがあります。

そのため、AI顧問的な関わり方では、
正式なAI案件になる前の会話もかなり重要です。

日常の相談から、
違和感を拾う

課題として整理する

AIで試せる形にする

小さなサンプルを作る
ところまで、そのまま進めることができます。

「AI案件を探す」のではなく、
普段の仕事の中からAIで変えられる場所を見つけていく
というやり方です。

6. AIを「使わないところ」も決める

AI活用というと、
どこにAIを入れるか、
ばかり考えてしまいます。

でも実際には、
AIを使わないところを決める
こともかなり重要です。

たとえば、
ここはAIが必要。
ここは普通の検索でいい。
ここはルールベースで十分。
ここは今のシステムを残す。
ここだけは人間が判断する。
と分けます。

何でも生成AIにすると、
仕組みが複雑になったり、
コストが増えたり、
挙動が不安定になったりします。

AI化そのものが目的ではありません。
一番シンプルに目的を達成できる形を探す。

場合によっては、
「ここはAIにしないほうがいいですね」
という判断もAI顧問の仕事になります。

AI顧問だからといって、AIの利用量を増やすことが成果だとは考えていません。
AIを増やすことで複雑になるなら減らす。
普通のプログラムで十分なら、そちらを使う。
人が判断したほうがよいところは、人に残す。

AIを入れることではなく、全体として仕事がよくなることを基準にする。

その意味では、「AIをどう導入するか」と同じくらい、「どこまでAIにしないか」を一緒に決めることも重要です。

7. AIを「判断するため」に使う

AIというと、
文章を書く、
画像を作る、
要約する、
という使い方が目立ちます。

でも、企業活用ではもうひとつ大きな使い方があります。
それが、
判断するためにAIを使うこと
です。

たとえば、
10個あるAI施策を比較する。
新規事業案を複数の評価軸で見る。
競合サービスを並べる。
顧客インタビューを横断分析する。
PoCを続けるか撤退するか判断する。
こうした場面です。

AIに正解を決めてもらうわけではありません。

AIを使って、
選択肢を広げる。
比較する。
反対意見を出す。
評価軸を増やす。
見落としていたリスクを探す。
そして最後は、人が決める。

つまり、
AIに意思決定を渡すのではなく、人が決めやすい状態をつくる。
こういう使い方もできます。


8. 調査や資料作成も、次の行動までつなげる

もちろん、
市場調査、
競合調査、
AI活用事例調査、
技術調査、
提案資料作成、
なども生成AIでかなり高速化できます。

ただし、調べて終わりにはしません。

重要なのは、
「調査結果を読んで、次に何をするか」
です。

たとえば、
競合調査

自社との差分を整理

新しい仮説をつくる

プロンプトで試す

顧客に見せる

反応を見る
までつなげます。

AIによって情報量を増やすことよりも、
情報を、次の仮説・判断・行動へ変える
ことのほうが重要だと思っています。

AI活用には、ツール選定、研修、プロンプト改善、業務自動化、システム開発など、それぞれ専門的な支援があります。
課題が明確なら、そうした専門支援を直接利用するのが最短なことも多いと思います。

一方で、
「そもそも何を相談すればいいのか」
「これはAIの問題なのか」
「作ったあと、どう評価すればいいのか」
といった境目の部分は、担当が決まりにくいところでもあります。

私がAI顧問として関わるのは、そうした専門領域と専門領域のあいだに残る部分でもあります。


AI顧問は、何か一つを納品する仕事だけではない

もうひとつ、AI顧問という関わり方で大事にしているのが、考える人・作る人・評価する人をできるだけ分断しないことです。

戦略を考えて終わりではなく、その場でプロンプトにする。
プロンプトだけで終わらず、必要なら簡単な画面やMVPにする。
作って終わらず、実際に触って「続けるか、変えるか、やめるか」を判断する。

戦略 → AIの振る舞い → プロンプト → UX → MVP → PoC → 事業判断
をできるだけ一続きに扱うことで、途中の翻訳ロスを減らします。

ここまで書いてみると、
AI顧問という仕事は、
「チャットボットを作ります」
「プロンプトを書きます」
「AIコンサルをします」
のどれか一つではありません。

実際には、
まだ曖昧な相談

課題を見つける

AIでできる形にする

小さく作る

触ってみる

評価する

続けるか決める

必要なら改善する
という流れ全体に関わります。

そして、入口はどこでも構いません。

「AIについて何かやりたい」
でもいい。
「このプロンプトがうまくいかない」
でもいい。
「業務のここが面倒」
でもいい。
「こんなサービスを作れないだろうか」
でもいい。
「なんとなく、この仕事のやり方に違和感がある」
でもいい。

むしろ、
まだきれいに課題になっていないところ
から一緒に考えられることが、AI顧問のひとつの価値なのかもしれません。

つまり、こんな段階から相談できます

AIで何ができるか分からない。
何をAI化すべきか決めたい。
既存のプロンプトを改善したい。
専門家の知識をAIに乗せたい。
簡単なPoCを作ってみたい。
AI施策を比較して優先順位を決めたい。
AIを入れたけれど現場で使われない。
AIにする部分と、人に残す部分を整理したい。
新規事業やサービスの可能性をAIと探索したい。

こうしたものはすべて、
「AIを導入する」と決めたあとだけの話ではありません。

むしろ、
AIを導入するかどうかを考える前から相談できる。

そのくらいの距離感でAI顧問という役割を考えています。

AIに何をさせるか。
その答えを急いで決めるのではなく、
まず、
いま何が起きていて、何を変えたいのか。

そこから一緒に考える。
そして必要なら、その場で小さく作ってみる。

もし今、
「AIについて一度整理してみたい」
「今あるプロンプトや仕組みを第三者に見てほしい」
「この業務がAIのテーマになるのか相談したい」
「大きな開発をする前に、小さく試してみたい」
といったものがあれば、その状態のまま相談してもらって大丈夫です。
完成した要件を持ってきてもらうというより、まだ決まっていないところから一緒に考えることを前提にしています。


AI活用というと、つい「何を導入するか」「どこまで自動化するか」から考えたくなります。

けれど、本当に大切なのは、その少し手前にあるのかもしれません。

いま何に困っているのか。
どこに違和感があるのか。
何を変えたいのか。
そして、その中のどこをAIに任せ、どこを人が担うのか。

まだ答えが出ていなくても、きれいに課題が整理されていなくても構いません。
話しながら考え、小さく試し、触ってみて、違えば戻る。その繰り返しの中から、自分たちなりのAIとの付き合い方が少しずつ見えてきます。

AI活用は、完成した答えを持って始めるものではなく、まだ輪郭のぼんやりした問いを持ち寄るところから始まるものなのかもしれません。

そのくらいのところから始めるのが、むしろちょうどいい。
そして、長く使えるAI活用は、案外そんな小さなところから育っていくのだと思います。


#生成AI
#AI活用
#AI導入
#AI顧問
#AIコンサル
#PoC
#業務改善
#プロンプトエンジニアリング
#DX
#意思決定

いいなと思ったら応援しよう!