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仕事ができる人は、たぶん“マップ画面”を見ている | ランプの消灯後 #06

こんにちは、GeNiE企画担当のAyaです。

スプラトゥーンというゲームがあるのですが、Xボタンを押すとマップ画面を見ることができます。
味方はどこにいるのか。どこから裏取りされそうなのか。
今、自分は前に出るべきなのか、いったん引くべきなのか。

そういうことを確認するために、時々マップを開く必要があります。

仕事でもこれに似たことがある気がします。目の前の状況、目の前のタスクを片付けることも大事なのですが、それだけを見ていると案件全体の状況を見落とすことがあります。

“マップ画面”を開けるかどうか。
それが、いわゆるメタ認知なのかもしれません。

……ということを、先日、ネイルに行く途中で会社に財布を忘れた時に考えました。

急いでいる時こそ忘れ物をする

先日、ネイルの予約時間が迫っていて、少し急いでいたときのことです。

会社を出て、お店に向かって、「よし、なんとか間に合いそうだぞ」と思った瞬間に気づきました。

財布がありません。

見事に会社に忘れてきてしまいました。
ダッシュで会社に戻り、無事に財布を回収し、なんとかネイルには間に合いました。

そのあと、爪を綺麗にしてもらいながら、ネイリストさんに何気なく話しました。
「急いでいて、会社に財布を忘れてしまったんですよね。急いでいる時こそ、忘れ物をしてしまいますよね〜」
ネイリストさんは「ですよね〜!」と優しく笑ってくれました。ここまでは、どこにでもある平和な会話だと思います。

ただ、私は(頼まれてもいないのに)こう続けました。

「急いでいない時は、脳のメモリが余っていて冷静ですし、自分で持ち物のチェック工程を走らせているので、忘れ物をしにくいんです。でも急いでいると、焦って脳に負荷がかかって冷静さを欠きますし、チェック工程をスキップしちゃうんですよね。だから結果的に忘れ物というバグにつながるんです」

すると、ネイリストさんに少し引いた……じゃなくて、驚いた顔で言われました。

「……そうなんですか!?」

「急いでいると忘れ物をしやすい」ということには、きっと多くの人が共感します。
でも、「なぜ急いでいると忘れ物をするのか」まで、自分の行動プロセスを脳内でシステムエラーのように分解して考える人は、もしかするとそれほど多くないのかもしれません。

「急いでいたから忘れた」で終わらせない因数分解

財布を忘れた、という出来事だけ見れば、とても些細な話です。
原因を一言で言えば「急いでいたから」で終了です。

ただ、これを私のように(若干めんどくさく)分解すると、実際にはこういうステップが起きています。

  1. 急いでいた(状況)

  2. 焦っていた(心理状態の変化)

  3. 普段より注意力が落ちていた(脳内リソースの枯渇)

  4. 持ち物を確認する工程を飛ばした(行動の省略)

  5. その結果、財布を忘れた(現象)

「急いでいたから忘れた」というのは、現象の説明としては間違っていません。でも、それだけだと対策が「次からは気をつけます!」という、何の役にも立たない精神論になってしまいます。

本当は、その間にいくつかのプロセス(というか、いつもと違う状況)があります。
自分の状態や思考、行動を、一歩引いた「一段上の視点」から客観的に見る力。
それがいわゆる「メタ認知」というやつです。

スプラトゥーンで言えば、ちょいちょいXボタンでマップ開いて塗りの状況を確認するみたいなことですね。

脳内の「メイン画面」と「マップ画面」

前述のネイリストさんの反応を振り返って1つの仮説が頭をよぎります。

「……もしかして、みんなあんまマップ画面見てないの!?」

私にとって、自分の行動や思考を一段上から眺めるのは、「目を開けば見える」くらい当たり前のことでした。
脳内で常に、メインの画面とマップの画面を切り替えて状況を見ている感覚です。

メイン画面(主観):ネイルに遅れそうで焦って走っている自分。
マップ画面(客観):「あ、焦って確認工程をスキップしたな」と引きの画(ドローン映像)で観察している自分。

全人類、こういうマルチアングルで生きているものだとばかり思っていました。

しかし、色々な人と仕事をしたり、今回のネイリストさんの反応を見たりするうちに、どうやら驚愕の事実があることに気づきました。

世の中には、メイン画面だけを映画館の超巨大スクリーンに投影して楽しんでいる人が、実はめちゃくちゃたくさんいる。

メイン画面だけの世界線の人たちの脳内は、おそらくこんな感じです。

  • 視界が常に自分が操作するイカ(インクリング)とその周辺しか見えていない

  • 財布を忘れたら「財布がない! 最悪! 急いでたからだ!」という感情だけでモニターが100%埋まる

  • 相手のイカを倒すことに全力を注いでいるので、スクリーン外から自分を眺める(マップ画面)という発想自体がない

本人が不真面目なわけでも、要領が悪いわけでもなく、本当に脳内モニターに「ジャイロでぬるぬる視界が変わるライブ映像」しか映っていないのです。

仕事の「考えていませんでした地獄」を解剖する

前々回の連載でも書いたんですが、私は永遠の「なぜなぜ期」なので仕事中もしょっちゅういろんな人に質問しています。「なんでこういうUIなんですか?」とか、「これは規制上問題ないんですか?」とか。そしてしばしば「考えていませんでした」という言葉に出会います。

もちろん、人間なので考慮漏れは起きます。私だって毎日「あれ忘れてた~~~!!!」を連発しています。最初からすべてを完璧に考えられるスーパーマンはいません。
だから、「考えていなかったこと」を素直に認められるのは、分かったふりをするより100倍大事で素敵なことです。

ただ、問題はその先にあります。
「考えていませんでした(完)」で思考停止してしまうのか。それとも、「なぜ考えられていなかったのか」をメタ認知しにいけるのか。

たとえば、企画案について「ここの運用面はどう考えていますか?」と聞かれたとします。
その時に「考えていませんでした」で終わってしまうと、次はどう改善すればいいのかがモヤの中です。

でも、もしメタ認知が働いていて、こう言えたらどうでしょうか。

  • 「今回はスケジュールを優先していて、運用面の影響まで見られていませんでした」

  • 「法的な論点は確認していましたが、世間からどう見えるか(レピュテーション)の観点が抜けていました」

  • 「自分の中で他部署判断の領域だと思っていて、判断材料を揃えるところまでが自分の責任だと捉えられていませんでした」

  • 「Aという指摘を、Aだけの問題として受け止めてしまい、同じ構造の論点が他にもないかを広げられていませんでした」

……こういう風に言ってくれたら、次は「考えていませんでした」が減るんだろうなって想像できます。

考えていなかったという事実は同じです。でも、自分の思考のどこで「論点のスキップ」が起きたのかが見えているだけで、信頼感は天と地ほど変わります。

原因が分かれば、次への打ち手は簡単です。
スケジュール優先でも確認しておくべき運用のポイントをまとめておくとか、法的な論点だけでなくレピュテーションという別のチェック軸を脳内にインストールするとか。

「考えていませんでした」は、ただの現象です。その手前には、必ず何かがあります。
「マップ画面では何が起きていたのか」を説明できるかどうかで、仕事の質が変わります。

さいごに

私は今まで「なんで目の前のことばっかりやるの?」「ゴールから逆算して案件進めようよ!」と思うことが何度もありました。

でもそれは、その人がサボっているわけでも、ましてや能力が低いわけでもなく、単に「メイン画面に集中している状態」なのかもしれません。

目の前のイカちゃんを倒すことに集中していて、一生懸命ローラーをバシャバシャ振っている。でもマップ画面を開いていないので、全体の塗り状況や、味方の位置や、裏取りされそうなルートが見えていない。

仕事でも同じです。

目の前のタスクを片付けること。
指摘された箇所を直すこと。
締切までに資料を作ること。

もちろん、それも大事です。

でも、それだけでは足りない場面があります。

この案件は誰の意思決定に関わるのか。
どの部署に影響するのか。
どこにリスクがあるのか。
何が未決のままだと、後工程のどこで詰まるのか。
自分は何を分かっていて、何を分かっていないのか。

時々マップを開いて、今自分がどこにいるのかを確認する必要があります。

ただ、「マップ画面を見てください」と言うだけで、すぐに見えるようになるものでもないのだと思います。誰かにマップを見てほしいと思うなら、「視野を広げて」と言うだけではなく、一緒にメモリープレイヤーを見るような時間も必要なのかもしれません。

○○部の人だったらなんて言うか? 役員は何を気にするか? といった複数の視点から多角的にものごとを捉え、自分の思考や行動を一段上から見直す訓練を重ねていく。

メタ認知とは、特別な才能というより「今、自分は何を見ていて、何を見ていないのか」を確認し続ける習慣なのかもしれません。


書いた人:Aya
GeNiEの企画担当、プロダクトマネージャー。スプラトゥーンが下手すぎて1週間で諦めた結果、なぜかスプラトゥーンがうまいVTuberを推していた。VCC INK FESの不破湊さんマジでかっこよかったですね。普段あんまり持たない武器も新鮮で、「不破さんのウルトラチャクチかっこいい……!」とメロついてました(不破さんの持ち武器のスペシャルはメガホン)。

「ランプの消灯後」は、仕事やプライベートを通じて個人的に感じたことを“ジブンらしく”つづっていく不定期連載です。ランプの魔法が解けたあとのリアルな日常をお届けします。