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借りるのは“理屈”ではなく“感情” | カードローンと行動経済学 Vol.01

借りるのは“理屈”ではなく“感情”
―行動経済学が変えるカードローンの見方―

こんにちは、GeNiE株式会社代表の齊藤です。
突然ですが、みなさんは「カードローン」と聞くと、どのようなイメージがありますか。

多くの人は「金利」「返済額」「借入上限」といった“数字”を思い浮かべるでしょう。
ですが実際に人がカードローンを使う瞬間は、計算ではなく感情で決めていることがほとんどです。

将来の負担よりも「あと少し足りない」「今すぐほしい」という気持ちが勝ってしまう。
そんな「非合理な人間の行動」を科学的に説明する学問が行動経済学です。
人は“理性的に損得を計算して動く”という古い経済学の前提は、現実の私たちには当てはまらないのです。

今回から複数回に分けて、カードローン業界における行動経済学について、不定期に更新していきたいと思います。ぜひお付き合いいただけますと幸いです。


「今この瞬間」という現在バイアスの正体

行動経済学には、遠い将来の利益よりも現在すぐ得られる利益を過大評価してしまう「現在バイアス」という考え方があります。
合理的に判断しようとしても、将来的な損得より、目先の小さな幸福や便利さを選んでしまうことが少なくありません。

「次の給料で返せばいいや」と思いながらつい借りてしまい、いざ返済の時期になると当時の高ぶった感情はもう薄れている。そんなことが誰にでも起こりうるのです。

つまり損得ではなく、“感情”が意思決定に大きな影響を与えている。
金融行動を理解する上で、この視点は欠かせません。


人の弱さを責めず、前提にしてデザインする

では、金融サービスはこの“人間の非合理さ”をどう扱うべきでしょうか。

行動経済学では、「正しいと分かっていても、人はその通りに動けないことがある」という前提に立ちます。合理性を外側から要求するよりも、合理的な行動をとりやすい環境や設計を整えることが重要です。
つまり、人の弱さを責めるのではなく、弱さを前提にUXをデザインすること。

たとえば、返済シミュレーションを申込画面のすぐ横に配置するだけで、「今借りると、来月こうなる」という未来の実感を持たせることができることができます。

また、返済が完了したときに小さな達成感を演出すれば、「返すこと」そのものが前向きな体験になります。これらのように、“人をコントロールする”のではなく、人が正しい選択をしやすくする工夫のことをナッジ(nudge) と呼びます。


金融は“行動のデザイン”へ

いま多くのフィンテック企業や金融機関が、サービス設計に行動経済学を取り入れ始めています。
カードローンのUXデザインも、同様です。

金利を下げることより、心理的なハードルを下げるほうがユーザーの行動を変えることができる。
返済を促すより、返済を「したくなる」ように設計する方が長期的な信頼を生むことができる。
つまり、金融とは“行動のデザイン”そのものになりつつあります。

人は理屈ではなく感情で借りる。

だからこそ、金融のデザインは感情を理解するところから始まるのです。
行動経済学は、人間の弱さを暴く学問ではなく、その弱さを見るためのレンズであり、カードローンをめぐる新しい金融UXは、そのレンズを通してこそ見えてくるのです。

つづく


執筆者:齊藤雄一郎 (さいとう ゆういちろう)
2005年、アコム株式会社に新卒入社。支店勤務を経て経営企画部に異動。
企画部門を中心に全体戦略の立案およびマーケティング業務に従事。
2016年、イノベーション部門を立ち上げ、デジタル領域におけるサービス企画・立案、新規事業開発に取り組む。
2022年4月 アコム株式会社の社内起業家としてGeNiE株式会社を設立。