「データは誰のもの?」北欧・英国に学ぶ、金融の「哲学」 | 海外事例から読み解く「日本のエンベデッド・ファイナンス」 Vol.4
皆さん、こんにちは。GeNiE代表の齊藤です。
連載第4回は、僕が「仕組みの美しさ」において最もリスペクトしているエリア、北欧とイギリスにスポットを当てます。
アメリカが「利便性」、中国が「国家戦略」主導だとすれば、このエリアは「個人の権利とデータの民主化」の聖地です。2026年現在、彼らが辿り着いた境地は、日本の金融DXにとっても非常に大きなヒントになります。
2025年「MiCA」全面適用と、北欧の「キャッシュレス9割超」の衝撃
直近の欧州のニュースで絶対に外せないのが、2025年に全面適用された「MiCA(暗号資産市場規制)」です。
これにより、ステーブルコインやデジタル資産が「信頼できる決済手段」として法的に、ガッチリ保護されました。これ、実はエンベデッド・ファイナンスの世界においては大事件なんです。企業のポイントや独自通貨が、より安全に、よりシームレスに銀行預金とつながる土壌が整いました。
また、スウェーデンなどの北欧諸国では、ついに「現金決済比率が1桁となった」という報告も出ています。もはや「現金はお断り」という店舗が当たり前の世界です。
しかし素晴らしいのは、それが一部の人のためのものではなく、高齢者まで当たり前に使いこなしている点です。この「誰一人取り残さないデジタル化」の設計思想こそが、北欧の本当の凄さだと実感します。
なぜこのエリアは「透明性」が高いのか?
これには、彼らの徹底した「哲学」と法的枠組みがあります。
1. 「データは個人の持ち物」という大原則
イギリスで始まった「オープンバンキング」の根本にある思想です。銀行に預けているデータは銀行のものではなく、僕たち個人のもの。
だから「このアプリにデータを渡して、自分に最適なローンを提案させて」と個人が指示すれば、銀行はそれを拒否できません。
2. API連携の「義務化」
日本だと「銀行にお願いして連携させてもらう」というニュアンスがまだ残っていますが、欧州では法律で「外部と連携するための窓口(API)を作りなさい」と義務付けられました。
この強制力が、スタートアップによる爆発的なイノベーションを生み出したのです。
僕たちは「壁」を「窓」に変えられるか
日本でも金融機関のAPI公開は進んでいますが、まだ「どこと組むか」を銀行側が慎重に選んでいるフェーズです。
しかし、北欧や英国が証明したのは、「銀行をオープンにすればするほど、結果的に金融市場全体が活性化する」という事実でした。
僕たちGeNiEがやりたいのは、銀行という「堅牢な城壁」に、使い勝手のいいサービスという「窓」をたくさん作ることです。
「銀行から借りる」のではなく、「お気に入りのサービスを使っていたら、いつの間にか最適な資金サポートが届いていた」。そんな、押し付けがましくない、最高にパーソナルな体験。
これを実現するには、北欧やイギリスのような「データの民主化」の精神が不可欠だと感じています。
おわりに
2026年の今、金融は「管理するもの」から「解放するもの」へと変わっています。
誰のものでもない、あなた自身のデータを、あなた自身の幸せのために使う。そのための頼もしいパイプを、僕たちが作りたいと考えています。
さて、次回はいよいよ最終回です。 僕が今、「日本で何を仕掛けようとしているのか」その決意と未来像をお話しします!
どうぞお楽しみに!
執筆者:齊藤雄一郎 (さいとう ゆういちろう)
GeNiE株式会社 代表取締役。 2005年、アコム株式会社に新卒入社。経営企画やマーケティング業務での責任者を経験し、2022年アコム株式会社の社内起業家としてGeNiE株式会社を設立。 エンベデッド・ファイナンスを通じて、新たな “信用のカタチ”をデザインする「マネーのランプ」を提供中。

