誰も止めなかった。だから14分58秒の奇跡が残った。——Grant Green『Idle Moments』
深夜0時過ぎ、最後のレコーディングセッションで、Greenは間違えた。32小節のはずが、64小節ソロを弾き続けた。
Henderson、Hutcherson、Pearsonが後を追った。誰も止めなかった。14分58秒の奇跡は、そうして生まれた。
1963年11月4日・15日、ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのVan Gelder Studioにて録音。Blue Note Records BST 84154として1965年2月にリリース。プロデュースはAlfred Lion。1999年にRudy Van Gelder Editionとしてリマスター。全6曲(オリジナル4曲+オルタネイトテイク2曲)。
Grant Greenという音楽家
1935年6月6日、ミズーリ州セントルイス生まれ。独学でギターを学び、セントルイスのジャズ・ブルースシーンで腕を磨いた後、1960年にニューヨークへ移り、Blue Noteレーベルと出会う。シングルノートラインを主体とする簡潔でソウルフルなギタースタイルで知られ、ブルース、ゴスペル、ジャズを分かちがたく融合させた。Miles Davisは「最も好きなギタリストの一人」と語った。本作での共演者——Joe Henderson、Bobby Hutcherson、Duke Pearson、Bob Cranshaw、Al Harewood——は、「これはGreenのアルバムであるのと同じくらい、HendersonやHutchersonやPearsonのアルバムだ」と評されるほどの強力なアンサンブルを形成した。
『Idle Moments』という一枚
レーベル:Blue Note Records。全6曲(Spotify版はRudy Van Gelder Edition)。「Idle Moments」とは無為な時間——何もしない、急がない、ただそこにある時間のこと。Duke Pearsonが書いたタイトル曲は、当初7分以内に収める予定だった。当時のLPの収録限界を超えてしまうからだ。しかしGreenが間違えた。そしてその間違いが、ジャズ史上最も心地よい14分58秒になった。
——誰も止めなかった。だから14分58秒の奇跡が残った。
表題曲「Idle Moments」——GreenのソウルフルなギターがDuke Pearsonのエレガントなピアノ、Bobby Hutchersonの水晶のようなビブラフォン、Bob Cranshawの揺るぎないベース、Al Harewoodの繊細なドラム、そして最後にJoe Hendersonの壮大なテナーサックスと出会う。各奏者が順に霊感を受け、より高みへと引き上げられていく14分58秒——「時間も悩みも溶けていく」と評された。続く「Jean de Fleur」はGreenのオリジナル、ブルースの土の匂いがする6分51秒。MJQのスタンダード「Django」はギャンゴという名のジプシーギタリストへのオマージュを、Green流のソウルで塗り替える。Pearsonのオリジナル「Nomad」は遊牧民のように12分18秒を漂い、このアルバムを静かに閉じる。
どんな午後に聴いてほしいか
秋の午後、何もしなくていい時間に。「Idle Moments」——無為な時間。急がなくていい、どこにも行かなくていい。ただこの14分58秒が、あなたの部屋に満ちる。
TRACKLIST
1 Idle Moments
2 Jean De Fleur
3 Django
4 Nomad
5 Jean De Fleur (Alternative Take)
6 Django (Alternative Take)
誰も止めなかった。だから14分58秒の奇跡が残った。
幻音社
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