親指だけで、ギターは歌になる。——Wes Montgomery『Boss Guitar』
1963年4月22日、ニューヨーク・プラザサウンドスタジオ。
Wes Montgomery(ギター)、Mel Rhyne(オルガン)、Jimmy Cobb(ドラムス)の3人が集まった。
その年、MongtomeryはPlayboy Jazz Pollで4位に選ばれ、Miles Davis、John Coltrane、Oscar Petersonら錚々たるミュージシャンたちによる投票で「All-Stars’ All-Star Guitar」に選ばれていた。
それがこのアルバムのタイトルの意味だ。
Wes Montgomeryというギタリスト
1923年、インディアナポリス生まれ。独学でギターを学び、1950年代のインディアナポリスのクラブシーンでオルガントリオの形式を磨き続けた。
Charlie ChristianとLionel Hamptonの影響を受けながら、親指でピッキングするという独自の奏法を確立した——ウォームでホーンのような音色を生む、誰にも真似できない技法だ。 1958年にRiverside Recordsと契約し、6年間で多くの傑作を残した。本作はそのRiverside時代最後期の録音となった。
『Boss Guitar』という一枚
1963年リリース。Riverside Records(RLP 9459)。全8曲。
プロデュース:Orrin Keepnews。メンバー:Wes Montgomery(ギター)、Mel Rhyne(オルガン)、Jimmy Cobb(ドラムス)。録音:Plaza Sound Studios、ニューヨーク、1963年4月22日。 RhyneとCobbは8曲を通じてほぼソロを取らず、Montgomeryのギターを支えることに徹した。 スタンダード6曲とMontgomery自身のオリジナル2曲で構成。
——親指だけで、ギターは歌になる。
「Besame Mucho」のイントロから、Montgomeryの親指がギターを鳴らす。金属弦なのに、どこか柔らかい——それがこの奏法の魔法だ。
「Days of Wine and Roses」の3分44秒は、Henry Manciniのメロディをそのまま持ち上げて、ジャズのハーモニーで再塗装する。
「The Trick Bag」と「Fried Pies」のMontgomeryオリジナル2曲では、ギターとオルガンの間に緊張と解放が生まれる。 「Canadian Sunset」の静かな哀愁、「For Heaven’s Sake」の落ち着いた着地——8曲40分を通じて、Montgomeryは一度も急がない。
どんな夜に聴いてほしいか
バーのカウンターで飲む夜に。
誰かと話していてもいいし、ひとりでもいい。このアルバムは主張しない。ただ、空間の質を上げる。
ギターの残響が、スピーカーの間の空間を満たす——そういう録音だ。
Montgomeryの親指が弦を弾くたびに、音が丸く広がる。
それだけで、今夜が少しいい夜になる。
TRACKLIST
1 Besame Mucho
2 Dearly Beloved
3 Days of Wine and Roses
4 The Trick Bag
5 Canadian Sunset
6 Fried Pies
7 The Breeze and I
8 For Heaven’s Sake
親指だけで、ギターは歌になる。
幻音社
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