はかせるオムツはムーニーマン。孤独な夜にはMoodymann。
同級生の友人たちと飲んで話していると、「一人目の子供が来年中学生」とか「2人目の娘が可愛くて仕方がない」とか、そこら辺のラッパーよりも強烈なパンチラインが独身の私の心をえぐってくる。
未婚の自分が独り身をいいことにダラダラ過ごしてきたまさにその期間に、既婚の友人たちがミルクを作ったりオムツを替えたりしてきた「パパとしての経験の差」は随所で見え隠れする。
パパ経験者たちは何気なく子供を抱き抱える仕草にも安定感がある。独身の私のぎこちなさったら無い。
哺乳びんは普通の洗剤で洗っていいのかとか、オムツは燃えるゴミに捨てていいのかとか、1時間ぐらいアタフタしてまだ見ぬ妻を呆れさせる自信がある。「自信」の使い方おかしいですね。ポジティブなのか馬鹿なのかギリギリのところです。
さて本題。
Moodymann(ムーディーマン)ことケニー・ディクソン・Jrはデトロイト出身。
キャリア最初期の1980年代にMr. House名義でヒップホッププロデューサーとして活動したが鳴かず飛ばずで、1990年代中頃からは地元クラブでのDJ活動と並行して自主レーベルKDJ Recordsを立ち上げ、音源のローカルなリリースを続けた。
1997年にカール・クレイグ主宰のPlanet E Communicationsよりアルバム『silent introduction』をリリースし晴れて国際的なデビューを果たし、このデビュー盤が本国アメリカのみならずフランスでも大ヒットを記録。
以降の作品も軒並み人気を博し、世界的なDJ・ハウスミュージシャンとしての地位を確立した。
Don't You Want My Love(2000) / Moodymann
Runaway (feat. Roberta Sweed, Norma Jean Bell & Pitch Black City)(2004) / Moodymann
Hold It Down(2014) / Moodymann
You're 2 Moody(2014) / Moodymann
Lyk U Use 2 (feat. Andres)(2014) / Moodymann
ディスコやジャズ、ゴスペルからのサンプリングをベースにした、ムーディー(Moody)の名に偽りのないエロティックで幽玄な極上ディープハウス。
もはや「ドープハウス」と言ってもいい。
「みんなでワチャワチャ楽しく踊ろうぜ!」的なパリピ御用達のハウスミュージックとは一線を画す漆黒妖艶なサウンドプロダクション。
若者ギュウギュウのダンスフロアやレイヴバーティー向きではない、アダルトで抑制的な「大人の逢引きを嗜む紳士淑女のための」ハウスミュージックである。
主流派ハウスシーンに対するカウンターとしてMoodymannの音楽性を位置付けて、後のローファイハウスやチルウェイヴに影響を与えたと指摘する評論家もいる。
Moodymannはパソコンを一切使わずにMPCとSP1200でトラックを制作し、DJプレイはレコードにこだわり続けているという昔気質のアナログ愛好家でもある。ヴァイナルオンリーのリリース音源も多く、 EPやシングルレコードはプレミア化して概ね高騰する。
本人のメディア露出は極端に少なく自身のパーソナリティへの言及はかなり秘匿的で、「ハウス界のカルトヒーロー」として一際独自の魅力を放つ存在である。
例えばDimitri from Parisのアップテンポな「これぞHOUSE!」なMIX CDなんかも最高なのだが、Moodymannのミッド〜スローテンポの濃厚なディープハウスに包まれる心地良さも一度味わうとクセになる。
賑やかなマイホームで同級生が我が子のオムツを交換している裏で、Moodymannを聴きながら夜に一人でドライブする人生も、それはそれで悪くないです。
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