#せりふ三題噺 ゼラニウムの花
男は、樹脂粘土を丸めて、団子を作っていた。
「それなあに?」
たまたま通りがかった子供が、男に声をかけてきた。
だが、男は答えない。
「おじさん、耳が聞こえないの?」
子供はかわいそうだ、という顔で尋ねた。
男はそこで、初めて子供の顔を見た。
そして、舌打ちをした。
それを聞いた子供は、走り去っていった。
男が丸めていたのは、ただの樹脂粘土ではなかった。
最近発見された、ゼラニウムという同位元素を練り込んだものだった。
今、男が扱っているように、素手で扱っても被曝することはない。
しかし、一度核分裂が始まると、誰にも止められなくなるという、物騒なものだった。
男は団子に小さな管を差し込んだ。
それは、誕生日ケーキに立てる蝋燭のようにも見えた。
そして男は、手早く団子を鞄に詰めて歩き出した。
子供が走り去っていった、駅の方へ。
下記企画に参加させていただきました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
いいなと思ったら応援しよう!
応援よろしくお願いします。頂いたチップは記事の購入などに使わせていただきます!