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#せりふ三題噺 決勝戦

天野龍介は数多の勝負に打ち勝ち、決勝戦へと駒を進めてきた。

決勝戦の相手は、飫肥おび隆景たかかげ
飫肥流宗家の嫡男にして、次代の総帥と目される男だ。

先攻後攻を決めるのは、由緒正しいシーグラスじゃんけんだ。
審判が大きな声で合図する。
「両者準備は良いな!それでは、シーグラスじゃんけん、じゃい!」

天野と隆景は審判の「じゃい!」に合わせて、シーグラスを頭上に掲げた。

「長角の水青と厚鈍の濃緑!厚鈍の濃緑、飫肥の先攻!」
審判の宣告に、観客が沸き立った。

「ちっ!やはり方丸の薄黄で勝ちだったか!」
と天野が叫ぶと、すかさず、隆景が返した。
「フハハハハ。我が飫肥流に勝てると思っているのかい?」
「くそー。先攻を取られちまったぜ」
「龍介くん頑張って!」
花代の応援が飛んだ。

「おう!まかせとけ!」
天野は花代に応えると、盤に向き合った。

「飫肥の先攻!はじめ!」
審判が開始を告げると、会場に静けさが戻った。

「じゅうびよう」
カウントの音声が会場に響いた。
隆景は慎重に、右手の人差し指で、将棋の駒を静かにスライドさせた。

「先攻、桂馬!」
観客が、また沸き立った。

「龍介くん、大丈夫?」
花代が心配そうに、龍介の顔を覗き込む。

「心配ないって。いつもこれくらいの逆境は跳ね除けてきただろ」
そう言って龍介は、左手の人差し指を高く掲げて将棋盤をじっと睨んだ。
その姿を見た観客は、固唾を飲んだ。

「ふふふ、調べないほうがいいよ
隆景が龍介に声をかけた。
「いくら調べたところで、この配置だと、歩を取るしかない」

「俺には、これがある!」
龍介は懐から、合皮を取り出した。
「何だと!それをどうするつもりだい?」

「こうするのさ!」
龍介は、合皮を左腕に巻きつけた。
「左腕の筋肉を圧迫することで、より繊細な人差し指の動きが可能になる!!」
「何だと!そんなことで…」

しかし、龍介は動かない。

「にじゅうびよう」
カウントが会場にこだました。
龍介の額に汗がにじむ。

龍介の背後に、駒を二本の指でつまむ老人の幻が浮かび上がった。

次の瞬間。
駒の山から、人差し指が音を立てずに駒をスライドさせた。
「後攻、銀!」

「なん、だと…」
隆景の顔が、蒼白になった。

決勝戦は、まだ始まったばかりだった。


下記お題に参加させたいただきました。

■セリフ
「調べないほうがいいよ」
■三題
・合皮
・シーグラス
・将棋

最後までお読みいただきありがとうございました。


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