第19話 息子
小学2年生。
進学校に通っていた息子は、少しずつ勉強についていくことに限界を感じていた。
中間、期末だけじゃない。
定期的なテストもある。
そして、成績が悪いと担任の先生から連絡がくる。
また電話。
またテスト。
また勉強。
息子は、興味のあることとないことの差がとても大きかった。
一度覚えたことも、数日するとゼロに戻ってしまうような感じ。
私は「どうして?」と思った。
夫も私も焦った。
何度も繰り返し教える。
できないと苛立つ。
そして、厳しくなっていった。
土日は、ほとんど勉強。
今思えば、
息子にとっては、かなり苦しい毎日だったと思う。
でも、そんな息子にも、
ピカイチなものがあった。
絵。
そしてゲーム。
そこだけは、びっくりするくらい才能があった。
夢中になった時の集中力はすごい。
でも私は、
「勉強も頑張ってほしい」
と思っていた。
今になって、ふと思う。
どうして私は、クリエイティブな仕事をしているのに、息子には勉強で頑張ってほしいと思ったんだろう。
きっと、自分のコンプレックスもあった。
自分が行きたかった世界。
自分が叶えられなかったこと。
「私立に行って、ちゃんとした教育を受けてほしい」
そんな気持ちもあったと思う。
息子のためだと思っていた。
でも、いつの間にか、
息子の人生が、私の人生にすり替わっていた。
息子の人生なのに。
私が「こうなってほしい」と思う人生を、息子に歩かせようとしていた。
病気になって、自分の生き方を振り返るようになってから、
このことにも気づいた。
あのまま頑張り続けることが正解だったのか。
今でも、正直わからない。
親だから、これが正解だったと言い切ることもできない。
でも、一つだけ感じていることがある。
今の息子は、
人生を取り戻した。
絵を描いて。
ゲームをして。
好きなことに夢中になって。
自分の「好き」を大切にしている。
あの頃の私は、
「将来困らないように」
と必死だった。
でも今は、
「この子が、この子らしく生きられるように」
と思う。
それが、親としてできることなのかもしれない。
息子へ。
あの頃は、厳しくしてごめんね。
そして、これからはもっと、
あなたの人生をあなたに返してあげたい。
あなたの人生は、あなたのものだから。
頑張って。
いや。
頑張らなくても、あなたらしく生きていってね。
