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復活の狼煙を上げた、かつての絶対王者。

かつてUFCウェルター級の絶対王者として君臨していたカマル・ウスマンは、レオン・エドワーズとの一戦で衝撃的なKO負けを喫すると、そこから負けを重ね、王座を失い3連敗となったウスマンはランキング5位にまで後退していた。

エドワーズとの再戦では非常に小さな差で敗戦し、チマエフとの一戦ではショートノーティスでの参戦であったことに加えて、一階級上のミドル級での試合となっていた為、色々と厳しい条件の中で戦い、判定負けを喫する結果となっていた。

なので、その内容を振り返るとウスマンの能力低下が疑われるような要素が詰まっていた訳ではないのだが、これまでが圧倒的だったこともあってウスマンに対する衰退の印象は広く浸透しつつあった。

そんな中で迎えられたバックリーとのランカーマッチ。

ウスマンにとっては正念場の一戦であり、4連敗を喫して7位へと後退するか、5位を死守して望みを残すかという明暗がはっきりとした分岐に差し掛かることになっていた。


©︎Getty Images / UFC | Cooper Neill

連敗中のウスマンにとって6連勝中のバックリーは脅威以外の何物でもなかったと思われるが、絶対王者として君臨していたウスマンのスキルを考えると、ランカーでも攻略することが難しい厚みを持っているという見方が出来る状態でもあった。

実際にウスマンのスキルはバックリーを凌駕し、試合を優勢に進め、続け様にラウンドを奪っていく展開を作り出していた。

その中でも特筆すべき要素となっていたのがウスマン最大の武器「レスリング」である。

ウスマンの高いテイクダウン技術とトップコントロール能力に対抗することは難しく、肩を並べられるだけのスキルを有しているファイターはそこまで多くはない。

また、テイクダウンに対するディフェンスにも長けているウスマンは、グラップリングの攻守に優れているという強みを土台にしながら勝ち星を築いてきた。

そこに打撃能力が加わったことでより強力な存在へと成長を遂げたウスマンだったが、今回のウスマンは連敗を脱出する為にも堅実な戦い方を選択しており、得意のレスリングをメイン武器とするかつてのファイトスタイルでバックリーを苦しめ、打撃勝負で生まれるリスクをなるべく排除する形で試合を組み立てているように見えた。

それは単純にバックリーの強いところで勝負しないという合理的な判断によるものだったのかもしれないが、何にせよウスマンの仕掛けは上手くハマり、バックリーは自分の展開を作ることが出来なくなっていた。


©︎Getty Images / UFC | Cooper Neill

このように6連勝中のランカーに違いを見せる試合内容を展開することで、ウスマンは自身が未だにトップクラスの実力を有していることを示して見せた。

そういった所からもMMAにおいて、レスリング能力に秀でているというのは非常に強力な武器になるということを改めて感じることが出来る試合内容になっていたのではないかと感じる。

ウスマンの強力なレスリングはまだまだウェルター級の中で脅威となっていくのではないだろうか。

そんな堅実なスキルで勝利を掴み取ったウスマンだったが、その中でも気になったポイントが一つあった。

それはウスマンの消耗速度である。

消耗しやすくなっている?ウスマンの懸念点


©︎Getty Images / UFC | Cooper Neill

ウスマンのレスリングは確かにバックリーを苦しめ、打撃の思い切りを封じ込めることにも成功していたが、2R辺りからすでにウスマンは疲れを滲ませているように見えた。

力を使う展開になっていた為、消耗することにはなると思うが、自分のペースで試合を進めていたことを加味しても攻め疲れが見られるにしてはちょっと早いのではないかと感じられた。

後半戦になるとさらに消耗した様子が見られ、仮にバックリーにテイクダウンを切られていたとしたらスタンドでかなり厳しい状態になっていただろう。

培われたスキルは変わりなく強さを発揮することが出来るが、年齢による心肺機能の変化によってパフォーマンス強度に影響が出ている可能性が考えられる。

最終ラウンドはかつての悪夢が頭をよぎるような非常に危なっかしい展開となっており、バックリーにあと少しでも元気が残っていたらまさかの事態が起きることになっていたかもしれない。

それを考えるとウスマンが今後上位勢と戦っていく中で、彼のレスリングという武器は「諸刃の剣」になる可能性が高いのではないかと思う。

3Rマッチでテイクダウンを奪う展開を作ることが出来れば、安定感のある試合運びが可能になると思われるが、タックルを切られレスリングに対応されるような状況に陥ったり、5Rマッチという長いラウンドで後半の消耗した状態を狙われるようなことになれば、強みは一転して厳しさを生み出すことになる。

38歳というウスマンの年齢を考えると残された時間はそこまで長くはないと思うが、その中でウスマンが自身の強みをどこまで有効に発揮していくことが出来るのか。

その上で、かなり望みの薄い期待にはなってしまうが、ここから調子を戻したウスマンがデラ・マダレナやマハチェフと対戦する展開を期待したい。

もしも全盛のウスマンとライト級の絶対王者マハチェフが対戦するということになっていたら、それこそ歴史に残る名試合となっていたはずだ。

流石にそんな機会が生まれることはなかったが、最高のタイミングとはいかなくても夢のカードが実現する可能性がここで出て来たというのは非常に興味深い。

3連敗から復帰を果たしたウスマンが改めてその強さを見せていくのか、それとも弱さを見せることになるのか、その点も合わせて今後に注目していきたい。

復活の狼煙を上げたかつての絶対王者がここから築いていく第2章に期待が向けられる。

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