上位との間にあった「性能の差」
先日UFCライト級のランカーマッチが行われた。
4位のチャールズ・オリベイラと8位のマテウス・ガムロットが対戦したランキング上位の入れ替え戦。
タイトル戦線に変化を与える可能性を含んだこの一戦には厳しい現実が滲んでいた。
それはファイターが持つ「性能の差」。
ランキング8位:マテウス・ガムロット

KSWの王者としてUFCにやってきたガムロットはグラップリングに長けたファイターであり、スクランブルにとても強いという特徴を持っていた。
その反面、打撃勝負を得意にはしておらず、ストライキングによるフィニッシュはあるものの、そこで勝負できる程の強さは感じさせていない。
加えてスタミナにも不安があり、試合の後半まで強度を保つことが出来ないという難点を抱えていた。
なのでガムロットが勝つためにはグラップリングという武器を活かす必要があり、尚且つ早い段階でコントロールできる状態へと持っていく必要がある。
そうしなければ打撃勝負を行わなくてはならない可能性が高まり、心肺機能と頭のスタミナの両方が削られることになってしまう。
その結果、相手よりも大幅に消耗していくことになれば、明らかな不利状態へと陥ってしまい、不安定さと弱点を晒すことになる。
これは限られた勝利のパターンに対して、負けるパターンは豊富にあるという非常に苦しい状態であり、グラップリングという武器が機能しなかった時は絶望的な状態になってしまうという脆さを表している。
この状態でライト級のタイトルを獲得するとなると、マハチェフと同等もしくはそれ以上のグラップリング能力が求められることになるだろう。
それぐらい突出した武器になっていなければ、脅威の一つとして数えられることにもならない。
しかし現状ガムロットが持つ武器はそこまでの強度を持ってはいなかった。
これがUFCでなければガムロットの総合力とグラップリング能力は非常に強力なものとして機能していたはずなのだが、UFCライト級の上位にはそれが通用しない。
そこにこの階級の異次元な競争力が窺える。
そんなガムロットに対してタイトル獲得経験のあるオリベイラはどうなのか。
ランキング4位:チャールズ・オリベイラ

オリベイラは打撃能力も寝技スキルも非常に高いレベルを備えたトータルファイターであり、相手を仕留めるだけの威力も持ち合わせているため、それぞれの武器がかなり高い決定力を持っていると言える。
攻撃をもらいやすいというディフェンス面の荒さはあるが、サブミッションという強力な武器に加えてスタンドでも積極的に前に出ることが出来るオリベイラは、打撃勝負でも優位を取ることが出来る強さを持っている。
なのでオリベイラはガムロットに比べると、より強力で多様な武器を持っていることになるのではないかと思う。
如実に現れた差

そういったところからも分かるように、この2人の勝負は明確な差を浮き彫りとさせることになった。
スタンドでも前に出てプレッシャーを掛けるオリベイラに対して、ガムロットは下がる場面が多く、反撃する機会もあったが効果的な攻撃にはならず、オリベイラを押し返す程のものにはならなかった。
何よりも厳しかったのはガムロットが組みの展開でオリベイラに負けてしまったことだ。
テイクダウンに成功したのはガムロットの方だったが、手足の長さと柔術テクニックに富んだオリベイラがその後の攻防を制して上手を取ることに成功。
結果的にお互いのストロングポイントとなるグラップリング勝負ではオリベイラがリードする格好となった。
下から積極的に仕掛けていくオリベイラ

打撃に勝機を見出すことが難しいガムロットがグラップリング勝負でもオリベイラにリードされてしまった為、勝負は一気にオリベイラへと傾いていくことになる。
オリベイラはスタンドでもガムロットの攻撃を全く気にしておらず、常にプレッシャーを掛け続ける余裕があった。
一方グラップリング勝負でリードされ、スタンドでプレッシャーを受け続けるガムロットは次第に消耗し、オリベイラにあっさりとテイクダウンを奪われてしまう。
そこからの展開はオリベイラの横綱相撲となっており、バックコントロールからフィニッシュまで見事に繋げていった。
ガムロットはストライキングでもグラップリングでもオリベイラに終始リードされてしまい、本来強く出ることが出来る展開でも負けてしまった。
両者ともに全部できるファイターではあるが、武器としている物の強度の差が非常に大きく、それがそのまま性能の差にへと直結した結果、反撃の機会すら与えないほどに圧倒的な試合内容となってしまった。
この一戦にはそんなライト級上位勢が見せる「性能の高さ」と、その間にある「壁の高さ」を知らしめる内容になっていたのではないかと思う。
あのガムロットでさえ一方的にボコボコにされてしまうライト級は正に魔境という表現が相応しい世界になっているのだと感じた。
