じおふろ編集室#10 桂川・木津川・淀川
わたしのYouTubeチャンネル「じおふろ / GeoFlow」では、Google Earthを使った空撮動画を投稿しています。
今回は、関西を代表する川、「淀川」の本流と、2つの支流「桂川」と「木津川」、この3本の動画を公開しました。
「淀川」は、大阪湾から琵琶湖まで、「桂川」と「木津川」は、淀川との合流地点から源流まで、それぞれ流れをさかのぼる形で上空を飛んでいます。
【空撮】桂川を淀川合流点から源流へ|京文化を育んできた川
【空撮】木津川を淀川合流点から源流へ|都の造営を支えた川
【空撮】淀川を大阪湾から琵琶湖へ|大阪・京都・滋賀
「じおふろ編集室」では、動画制作にまつわるエピソードを気軽に読んでいただける形でお届けしています。いわば編集の裏話です。
今回のこの3本の動画のテーマである淀川は、関西を代表する大河川。
いつかしっかりと動画制作に取り組みたいと思っていた川です。
今回の動画制作での気づきを中心に、3つの川を順に振り返っていこうと思います。
・桂川
「桂川」、どんなイメージをお持ちですか?
そもそも、川に対するイメージってみなさんどんな感じなのだろうか。
毎日通勤通学で渡る川、なにげに渡る橋の下を流れる川。
「そこに水の流れがある。」って、しっかり意識する瞬間って少ないのではないのかなって思います。
それでもたしかにそこには水が流れています。
「桂川は京都の川」っていうのは、知っていらっしゃる方は多いと思います。
ただ、私は知りませんでした。
ずいぶん昔のこと、トロッコ保津峡で川沿いの線路をトロッコ列車でさかのぼり、保津峡下りで船での川下りを楽しんだ「保津川」もまた、桂川だったんですね。
ひとつの川が、場所によって呼ばれ方が変わるのはよくあること。
川の景色を、地点地点で覚えていることは多いです。
下流から上流まで、景色を変えつつ一つの流れが続いているっていう、当たり前に知識として持っていることを、川の動画に取り組むとよく、知識と認識のずれを再確認することが多いです。
一つの川が桂川ともよばれ、大堰川ともよばれる。あるいは保津川ともよばれる。日本の河川の名のややこしさである。(中略)…統一せよ。という声がたとえあっても、それぞれの名に歴史・風土の上の実感が累積しているために、そうはいかない。“歴史・風土の上での実感”ということが、ひとことでいえば文化そのものなのである。(中略)地名を統一しようとした郵政省のようなやり方は、合理主義であっても文化にとっては敵なのである。
保津川下りで見た景色は、まさに川の上流といった雰囲気のある絶景の渓谷でした。
トロッコ列車の終点だった亀岡の街。
ここでは桂川は、その呼ばれ方は「大堰川」と変わります。
さらに上流では、また「桂川」と呼ばれる場所があり、その上流では「上桂川」と呼ばれます。
あの、川の上流の景色そのもののような保津峡も、すぐ上流で亀岡盆地に出た後、そこから源流までまだまだずいぶんと距離のある川でした。
亀岡盆地で亀岡市に、そしてその上流は日吉ダムのある南丹市。
そしてさらに宇津峡までさかのぼったところで京都市に戻ってくるのも面白いなと思いました。
源流の佐々里峠までずっと京都市です。
そして佐々里峠は、日本海側へ由良川水系の佐々里川が流れ出る中央分水嶺です。
もともと持っていた「桂川」という言葉へのイメージは、この動画の制作の過程で大きく変わりました。
こんな大きなスケール感のある川だと思っていませんでした。
この「へえー!」が連続するこの感じ、ワクワクが続くこの感じが、わたしの動画制作の大きな楽しみでありモチベーションになっています。
・木津川
この川の名前もおそらく、地元の方だけではなく全国に知られる名前なのではないでしょうか。
「木津川市」という一つの自治体の名前にも使われる名前です。
この木津川の動画制作作業の一番最初、この川を上流へたどると、京都から南下したあとに奈良ではなく三重に向かうことがいちばんの驚きでした。
そもそもなのですが、わたしは京都府と三重県が接しているという認識が無かったんです。
名古屋から大阪に向かうときは、国道1号も名神高速も三重から滋賀経由。
名阪国道を使ったとしても三重から奈良経由。
この真ん中、木津川が通る京都と三重の県境は、日本の大動脈にはなれなかった関西本線が通っているのですね。
古い街道では、脇往還の大和街道がこの木津川沿いに通っていました。
京都と三重の府県境のあたりにある、木津川沿いの島ヶ原という宿場。
グーグルストリートビューで街を巡ってみると、ずいぶん趣のある宿場町の雰囲気でした。
さらに上流へ向かうと、一気に開けて上野盆地が現れます。
木津川をさかのぼり上野盆地に着いた場所、盆地の北西部は、特に広い農地が広がり、だだっ広い雰囲気があります。
上野盆地の水の出口が実質的に木津川だけなので、ここに遊水地があるため、このような景色になるのですね。
わたしじつは、「遊水地」っていう言葉、聞いたことはあるのですが、どのようなものなのかわかっていませんでした。
「上野遊水地」という言葉を頼りに、地図の中に池を探していました(笑)
普段は農地などに利用されている場所に、洪水被害を防ぐため、大雨や台風で川の水があふれそうなときに一時的に水をためる場所のことを「遊水地」って言うんですね。
以前、荒川の動画を制作した時にも、同じような施設があったことを思い出しました。
この上野盆地の中を走る名阪国道。
これを発見した時にもびっくりしました。
わたし、何度かここを走ったことがあるんです。
奈良から、道の駅針テラスの峠を越えた先にある広い場所の景色は、記憶の中にありました。
でもしかしですよ、関西からずいぶん峠を越えた先にあるこの場所に、木津川の上流、もっと言えば淀川の上流があるんですよね。
ものすごい違和感を感じました。
関西から車でひと山超えた場所にある川は、山を越えず下るだけのルートで関西に届いている。
こういうのを見つけたときこそ地理好きのワクワク感は最高潮になっちゃいますよね。
そしてさらに木津川をさかのぼったその先は、伊勢湾を望む青山高原です。
グーグルアースでのここからの景色は、遠くに知多半島が見えるんです。
こんなとこから来てるんだなって、なんだか感慨深さがありますよ。
川って、あるべくしてそこにあるものなんだと思うんです。
それでもそこに、深いストーリー性を感じ取れるのが、とても面白いなと思います。
・淀川
「琵琶湖の水止めたろか」
滋賀県民が京都府民・大阪府民に対して使うとされるお決まりフレーズです。
この言葉がWikipediaのひとつの記事としてまとめられているのを見つけて面白かったです。
淀川は、琵琶湖から流れ出て大阪湾にそそぐ川。
大阪では「淀川」、京都では「宇治川」、滋賀では「瀬田川」と呼ばれる、淀川水系の本流です。
大阪~京都~滋賀、ここを実際に移動するルートを思い浮かべてみます。
わたしは車で移動することが多いのですが、大阪~京都はイメージできます、平地でつながっているイメージです。
京都~滋賀はどうなるんだろう。
車での移動だと、小さな峠を越えて山科、そのあと府県境の逢坂峠を越えて大津です。
当然川は峠を越えることはできないですよね。
ここに今回のわたしの「へえー!」が詰まっていました。
まず気になったのは、川沿いにある京都競馬場のど真ん中にある池。
その真ん中に島があるんですよ。
「なんだこれは?」
調べていくと出てきたのが「巨椋池」という池の名前です。
ここには、豊臣秀吉の時代に伏見城が築かれたときから干拓で姿を変えつつも、昭和の初期の干拓事業で農地になるまでずっと、「池」よりも「湖」と呼ぶ方がふさわしい規模の池がありました。
京都と奈良を結ぶJR奈良線が、伏見の南から東寄りにぐるっと大回りしているのも、この路線が建設されたときにはまだ、巨椋池が存在していたからです。
そして、この京都競馬場の馬場の真ん中にある池も、巨椋池の名残だといわれています。
現在の巨椋池の跡地は、第二京阪道路と京滋バイパスが交差するように貫き、自動車交通の要衝になっています。
そして、京都で宇治川と名前を変えた淀川は京都盆地の東の端の宇治市へ。
平等院がある宇治公園のすぐ上流から、山の間をさかのぼります。
今回の3つの動画、「桂川」、「木津川」、そして「淀川」。
3つすべてが京都の街を超えた後、山の間を深い谷でさかのぼる区間があるのがおもしろいです。
天ヶ瀬ダムの建設によってつくられた鳳凰湖に沿って、渓谷を大津市へ。
この動画の制作の過程で、「先行河川」「先行谷」という言葉を知りました。
山が隆起するときに、もともとあった川が流れの削る力のほうが強かった時、その川の流れはその場所に残り、以前からの流れを「先行谷」として維持します。
このような川を「先行河川」と呼びます。
その特徴的な深い谷の景色を見て、頭に浮かんだのが「江の川」の景色です。
わたしが住む広島県から中国山地を突き抜けて島根県へ流れ出る江の川も、典型的な先行河川です。
あの深い谷の景色を、桂川の亀岡へ抜ける区間、木津川の上野盆地へ抜ける区間、そして、この宇治川(淀川)の大津へ抜ける区間の景色を見て連想しました。
たしかに規模は違うかもしれない、でもなんとなく同じような雰囲気を感じ取り、「先行河川」という言葉で答え合わせができたこの流れ。
こういうのが大好きです大好物です。
これが楽しくて、Google Earthの空撮動画をつくっています。
長い時をかけ削ってできた流れを進み、琵琶湖から大阪湾へ流れる淀川。
これも同じく、あるべくしてそこにある流れなのですが、空から眺めて浮かんだ「なぜ?」のパズルが解けていく感じ、これが本当におもしろいと思うんです。
・編集室よりさいごに
見慣れた景色が、少し違って見える。
地理を流れで感じる、
「じおふろ / GeoFlow」です。
わたしは、動画をご覧いただいた皆さんに、これを実感してほしいんです。
テロップを最小限、ナレーションは無し、このスタイルの動画を貫いているのは、みなさんの動画の見かたを固定したくないから。
自由に感じてほしいから。
「いつも見てるあの川、あんなところまで行くんだ」とか
「あそこでよく遊んだ」とか
「ここはよく渋滞する」とか
自由に見ていただいて、自由に何かを感じてほしい。
わたしが動画を制作しながら、Google Earthの空撮の景色を見て感じたことは、このnoteで残していきます。
「地名がわかるテロップがもっと欲しい」
よくいただくコメントです。
わかります、ホントよくわかります。
申し訳ないなという気持ちもあります。
ぜひ、動画と一緒に地図を開いて楽しんでください。
きっと、見慣れた景色が少し違って見え、地理を流れで感じることができると思います。
動画とこちらの記事をお楽しみいただき、ありがとうございます。
また次回、よろしくお願いします。
