ソロキャンプのスゝメ|シロクマ文芸部《熱帯夜》
熱帯夜と喧騒の都心を離れ、俺は星空の見える林間のキャンプ場で、「ひとりソロキャンプ」の時間を満喫していた。
尊敬するのは、樹乃倉巌パイセン。
装備はミニマル。孤独を楽しむ生粋のソロキャンパー。
俺の背中に付いてこいタイプの漢であった。
静謐な夜のしじま、独り野営にて思ふ。
車はいらない。電車を乗り継ぎ、最後はバスで山に入る。
自然を愛してる、火を木を水を土を。
それと同等に孤独な自分の生き方を愛している。
樹乃倉パイセンは冒頭、そういう硬派で暑苦しくナルシシズムに溢れたキャンパーとして登場した。
しかし、そう嘯いていたパイセンは、もうどこにもいない。
近刊では、料理上手でウワバミでばり博多弁の一回り年下の彼女と連れ立ってキャンプなどしており、胃袋も心も掴まれ、すっかり腑抜けになってしまった。
ふたりで!ソロキャンプです!ふたりソロキャンプしましょう!!
曰く「ふたりソロキャンプ」。
いや、しばし待て。概念からして矛盾している。
ふたりなのかひとりなのか、立ち位置を明確にすべし。
それは、正しく詭弁。詭弁中の詭弁である。
この詭弁がまかり通っているがゆえに、「ひとり」ソロキャンプをしていた、などという意味不明な冒頭モノローグをするハメになってしまったではないか。
俺は、満天の天の川の下で、カレー味のカップヌードルを啜る。
無論これをテント内でやったら後悔する。
そして独りごちる。
ひとり野営にて思ふような、硬派なソロキャンパーはどこ行った?
パイセンのあまりにもな堕落ぶりに、俺は静かに涙する。
そして、それ以上にかなり羨ましい。
ソロキャンプの哲学?そんなものは知らぬ。──こんな誰かが欲しいだけの人生だった。
カレーヌードルではなくて、スパイスの効いた本格ミーゴレンが食べたい。
誰かと翌朝の草の雫を愛でたい。
焚き火の残り火が、暗闇で小さく爆ぜた。
俺は、熱帯夜とはほど遠い深遠な孤独に、ひとり身震いした。
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