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営み

午後九時の閉店に間に合わせるように、心持ち気忙しい歩調で夕食の買い出しへ向かう。裏路地を縫う様に進みながら、少しひらけた道にでる。
なんとか勝ち筋が見えてきた、と曲がり角の目印である理容室の前を通り掛かると閉店間際だろうか、店は煌々としているものの客はおらず、理髪席の後ろ、待合席に一人、小柄な老人が見える。
老人は店の奥側にあるテレビに向かって待合の長椅子に腰掛け、こちらからは後ろ姿しか見えないが、自転車用の安全帽を被り、片手には花束を持ってじっと見入っていた。急ぎ足の道中ゆえにそのまま通り過ぎてしまったが、あれは一体どういう所以ゆえんの瞬間だったのだろう。
これから始まる物語だったのか、それとも物語を終えた閉店間際の最後の場面だったのか。もしかするととても奇跡的な交錯だったのかもと、ゆったりとした帰りの道中、あれこれと考えを巡らせる。

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