按分
電車の中で視線がぶつかると、その気まずさから慌てて目を逸らす。そこで電車の窓から外を見ていると、互いにその身を寄せ合うように別の電車と横並びになる。駅への入線間際、似たような減速度合いで並走する向こう側にも、自分と同じく窓の外を眺める者がこちらを見ている。
互いに正面を真っ直ぐに眺めている、少々特殊なのは視線が動くのではなく、互いの立位置が動いた結果、固定された視線がぶつかったということ。伝来の土地の権利を主張する者の如く、互いにこちらが元々真っ直ぐ見据えていた視線なのだからとばかりに譲らず、見合う形になる。加えてどうせまた即ぐに離れていくという担保された安心もあり、互いに譲らずにいるとそんな我々を図ったかのようにか細い視点が一切ずれることなく、完璧な同調を見せたまま進行していく。ここまで進んでしまっては、こちらも大人気ない矜持に懸けて視線を外すことは出来ないでいる。そうやって真正面を見据えていると、漸く入線し、左右へと分離して今回は幕を閉じた。
異なる電車同士の緩慢な追い越しや並走なら、配慮なくゆっくりと視線を合わせられる。たいして知らない人間だから割り振れる、振る舞える役割がある。かてて加えてそこに痛みがないならば。我が身の保安が約束されているならば。
その扱いに当て嵌めるべき人間を割り振る。粗末な扱いにさえ。
