朝の洗面所に先回りする愛猫。蛇口から流れる水をちょいちょい触って観察する不思議な朝の日課
火曜の朝6時。
目覚ましを止めてベッドから起き上がり、顔を洗おうと洗面所へ向かう足取りは、まだ半分眠気の中にあります。
廊下をペタペタと歩いていると、背後から「タタタタッ」と爪の音を響かせながら、ものすごい勢いで追い抜いていく小さな影。
うちのぎんです。
私が洗面所のドアを開けるよりも早く、すき間からスルリと滑り込み、ピョンと洗濯機を踏み台にして、洗面台のフチに飛び乗る。
そして、蛇口のすぐ隣にちょこんと前足を揃えて座り、
「早く出してください」
と言わんばかりに、真剣な眼差しで私の顔を見上げてくるわけです。
これが、我が家の火曜日の朝の、決まったオープニングセレモニーです。
流れる水への異常な執着
リビングにはちゃんと、自動循環式のきれいな水飲み器が置いてあるんです。フィルターも毎週交換しているし、水だって毎朝新しいものに入れ替えている。
それなのに、ぎんはどうしても「洗面所の蛇口から直接流れる水」を飲みたがるんですよね。
蛇口のレバーを少しだけひねって、糸のように細くチョロチョロと水を出してあげると、ぎんの「水観察ルーティン」が始まります。
まず、顔を極限まで水流に近づけて、寄り目になりながらじーっと見つめる。
次に、短い右前足をそろそろと伸ばして、流れる水に肉球を「ちょい、ちょい」とタッチする。
当然、前足はびしょ濡れになります。
冷たいはずなのに、濡れた自分の前足を不思議そうに見つめ、ペロッとひと舐め。「うん、水だね」と納得したように、今度は蛇口から落ちてくる水を直接舌でペロペロと飲み始める。
頭のてっぺんに水滴がポタポタ落ちて、頭の毛がビショビショになっているのに、本人は全く気にしていません。
この一連の奇妙な儀式を見ていると、朝のぼんやりしていた頭が強制的に覚醒して、思わず吹き出してしまいます。
一度、大惨事になった話
実は去年の冬、この洗面所の水遊びで大失敗をやらかしたことがあります。
ぎんが水を飲んでいる最中に、私が横で歯磨き粉のチューブを取ろうと腕を伸ばした拍子に、蛇口のレバーに袖が引っかかって、水が「ジャーーーッ!」と全開で出てしまったんです。
突然の大量の水しぶきを頭から浴びたぎんは、パニックになって「ギャッ!」と飛び上がり、濡れた足で私の胸元に飛びついてきました。
結果、ぎんはビショ濡れのネズミのようになり、私の着ていたパジャマも水浸し。
そこから大慌てでドライヤーを持ってきて、怒り狂うぎんをバスタオルで包んで乾かす羽目になり、朝の貴重な30分が一瞬で消え去りました。会社にはギリギリ遅刻しそうになるし、ぎんには半日口をきいてもらえないしで、散々な火曜日でした。
それ以来、蛇口の水を出すときは、レバーを慎重にミリ単位で動かすのが私の朝の絶対ルールです。
意味なんてなくていい、朝の数分間
猫が流れる水を好むのは、野生時代に「動いている水=新鮮で安全」と本能で知っていた名残だとか、知的好奇心の刺激だとか、理屈はいろいろあるみたいです。
でも、そんな難しいことはどうでもよくて。
ただ、朝の薄暗い洗面所で、流れる水を真剣に見つめている愛猫の横顔。
冷たい水に前足をチョンチョンと当てて、一人で納得している姿。
その何の生産性もない、他愛のない時間を共有しているだけで、
「あぁ、今日もわが家は平和だな」
と、心の底から安心できるんですよね。
火曜日は一週間の中で一番地味で、仕事の現実が重くのしかかってくる曜日です。でも、ぎんに洗面台を占領されて、歯磨きを待たされているこの数分間のおかげで、少しだけ穏やかな気持ちで一日を始められる気がします。
ぎんちゃん、満足したならそろそろ顔を洗わせてくれないかな。
そして、「どんな人が書いているんだろう?」と少しでも気になってくださった方へ。
これまでのことや、noteで発信している理由などを自己紹介ページにまとめています。
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