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中学校の一覧を開いては閉じた夜|①AIに頼りながら、わが家の中学受験ツールをつくった

娘が寝たあと、私はダイニングテーブルで、中学校の一覧が載っているサイトを開いていた。

中学受験の志望校を考え始めたころだった。

まずは、どんな学校があるのかを知らなければと思った。

学校名。

所在地。

偏差値。

女子校か、共学校か。

学校ごとの簡単な紹介。

画面には、たくさんの中学校が並んでいた。

学校名をひとつ押せば、その学校について紹介しているページが開く。

そこから学校の公式サイトへ進めば、教育方針や校風、制服、部活動、施設の写真まで見ることができた。

調べようと思えば、情報はいくらでも出てきた。

ここもよさそう。

この学校も、娘に合うかもしれない。

でも、そうやって学校名を眺めているうちに、だんだん何を基準に選べばいいのかわからなくなっていった。

娘にも、ときどき聞いてみた。

「どんな学校がいい?」

返ってくる答えは、だいたいいつも似ていた。

「制服が可愛いところ」

「入りたい部活があるところ」

「できれば近いところ」

どれも、よくわかる。

毎日着るなら、気に入った制服のほうがいい。

やってみたい部活があることも、その学校へ通いたいと思う理由になる。

近いほうが、朝も少しラクだろう。

大人が考えるより、ずっとまっすぐで、生活に近い希望だった。

ただ、それだけで何百校もの学校から候補を選ぶことはできなかった。

そもそも、こちらが好きな学校を自由に選べるほど、成績に余裕があるわけでもない。

行きたいと思えば、どこへでも行けるわけではない。

制服が可愛い。

部活が楽しそう。

家から近い。

その希望と、実際に受験できそうな学校が、まだうまく重ならなかった。

娘に聞いても、私が一覧を眺めても、候補はなかなか絞れなかった。

気になる学校を見つけると、私はその学校の公式サイトを開いた。

校舎の写真を見る。

学校生活の様子を読む。

部活動の一覧を見る。

制服の写真も確認する。

娘が通っているところを、少しだけ想像する。

けれど、しばらく眺めたあと、私はまた中学校の一覧へ戻っていた。

その学校がよくなかったわけではない。

ただ、ひとつ大事なことが、よくわからなかった。

この学校には、うちからどうやって通うのだろう。

学校の住所を確認する。

最寄り駅を探す。

今度は乗換案内を開いて、自宅の駅から検索する。

電車を二回乗り換える。

駅からさらにバスに乗る。

朝の時間帯なら、もう少しかかるかもしれない。

画面に出てきた所要時間を見ながら、娘が毎朝その道を通うところを想像してみる。

まだ小学生の娘が、朝早く家を出て、混んだ電車に乗る。

雨の日も、荷物の多い日も、試験のある日も、その道を往復する。

学校そのものは素敵に見えた。

でも、毎日となると、少し遠い気がした。

乗換案内を閉じ、また中学校の一覧へ戻る。

次の学校を押す。

公式サイトを読む。

住所を確認する。

最寄り駅を調べる。

乗換案内を開く。

そして、また戻る。

その夜、私は同じことを何度も繰り返していた。

情報が足りないわけではなかった。

むしろ、多すぎるくらいだった。

どんな学校があるのか。

どのくらいの偏差値なのか。

女子校なのか、共学校なのか。

どんな教育方針なのか。

制服はどんな形なのか。

どんな部活動があるのか。

大学への進学実績はどうなのか。

学校によっては、在校生の一日の過ごし方まで紹介されている。

検索すれば、知りたいことは次々と出てくる。

それなのに、学校選びは少しも進んでいる気がしなかった。

たくさん読んだはずなのに、候補は絞れない。

学校名はいくつも覚えたのに、どこから見ればいいのかわからない。

情報を集めれば集めるほど、学校名だけが頭の中に増えていった。

私は、中学受験について調べるというのは、学校をよく知ることなのだと思っていた。

偏差値や教育方針を比べて、娘に合いそうな学校を見つける。

制服を見て、部活動を調べて、説明会へ行く学校を選ぶ。

もちろん、それも大切なのだと思う。

でも、その前に私が知りたかったのは、もう少し生活に近いことだった。

朝、何時に家を出るのか。

電車を何回乗り換えるのか。

駅から学校までどのくらい歩くのか。

帰りが遅くなった日にも、無理なく帰ってこられるのか。

六年間、その通学を続けられそうか。

娘は「近いほうがいい」と言っていた。

私も、そう思っていた。

ただ、近いというのが、どこまでなのかがわからなかった。

同じ都内でも、路線によっては思ったより通いやすい学校がある。

地図では近そうに見えるのに、乗り換えが多くて時間がかかる学校もある。

少し離れた場所にあっても、一本の電車で通える学校もある。

学校の所在地だけでは、毎日の通いやすさまでは見えてこなかった。

偏差値が高いか低いかより先に、

「この学校は、わが家の毎日の中に置けるのか」

を知りたかった。

けれど、中学校の一覧は、だいたい偏差値順や地域別に並んでいた。

偏差値順が悪いわけではない。

地域別が使いにくいわけでもない。

中学受験を考えるうえでは、どちらも必要な見方なのだと思う。

今の学力で、どのあたりの学校が候補になるのか。

挑戦する学校と、少し安心して受けられそうな学校をどう組み合わせるのか。

それを考えるためには、偏差値も必要になる。

学校がどの地域にあるのかを見ることも大切だ。

ただ、そこに並んでいる学校が、うちから通いやすいのかどうかは、学校名や地域を見ただけではわからなかった。

結局、一校ずつ調べるしかなかった。

一覧から学校を探す。

公式サイトを見る。

最寄り駅を確認する。

乗換案内を開く。

少し遠いとわかる。

また最初の一覧に戻る。

私は、中学校の一覧を開いては閉じた。

学校の公式サイトを開いては閉じた。

乗換案内を開いては閉じた。

画面の中には、たくさんの答えが並んでいるように見えた。

それなのに、私が欲しかった答えには、なかなか近づけなかった。

もしかすると私は、情報をもっと集める必要があるのではなく、見る順番を変えたかったのかもしれない。

最初に、わが家から通えそうな学校だけが見える。

その中から、偏差値や校風を調べていく。

制服を見る。

部活動を調べる。

説明会へ行って、娘がどう感じるかを見てみる。

そうできたら、もう少し学校を選びやすくなる気がした。

通学時間の短い学校を、そのまま志望校にしたかったわけではない。

近ければ、どこでもいいわけでもない。

娘が「ここに通いたい」と思えることも大切だ。

ただ、何百校もの学校を前にして、最初から全部を同じように比べることはできなかった。

まずは、毎日通える範囲を知りたい。

そこから、学校選びを始めたかった。

その夜、閉じたばかりの中学校の一覧を眺めながら、ふと思った。

学校を、うちから通える順に見られたらいいのに。

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ここまで読んだあとに、
もう少しだけ言葉のそばにいたいときのために、
続きの置き場所を残しておきます。

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