「早くして」を減らしたい人へ|元放デイ職員がまとめた「子どもが切り替えられないとき」の声かけ30選【場面別会話・記録シート付き】
「もう終わりだよ」
「早く片づけて」
「次の時間が始まるよ」
何度伝えても、子どもが遊びをやめられない。
声をかけるほど怒ったり、泣いたり、その場から動けなくなったりする。
そんな経験はありませんか?
放課後等デイサービスで子どもたちと関わっていた私も、活動から次の活動への切り替えがうまくいかず、どう伝えたらよいのか悩むことが何度もありました。
時間が迫っていると、大人も焦ります。
最初は優しく伝えていたのに、子どもが動いてくれないと、
「早くして」
「何回言ったら分かるの?」
と、同じ言葉を強い口調で繰り返してしまうこともあります。
しかし、子どもが切り替えられないのは、必ずしも「わがまま」や「反抗」だけが理由ではありません。
いつ終わるのか分からなかった
次に何をするのか分からなかった
楽しいことを急に止められた
何から始めればよいか分からなかった
気持ちをうまく言葉にできなかった
疲れや音などで余裕がなかった
このように、子どもなりの理由が隠れている場合があります。
この記事では、私が放デイで子どもたちと関わる中で学んだことと、公的機関が公開している支援情報をもとに、「切り替えを助ける声かけ」を実践しやすい形でまとめました。
単に30個の言葉を並べるだけではありません。
切り替えられない理由の見つけ方
声かけを選ぶための5ステップ
場面別の声かけ30選
うまくいかない声かけの言い換え
家庭や放デイで使える会話例
声かけが効かないときの確認項目
7日間の実践方法
そのまま使える記録シート
保存用の声かけ早見表
まで、この記事だけで実践できるようにまとめています。
この記事がおすすめな人
子どもが遊びを終えられず困っている
「早くして」と何度も言ってしまう
声をかけると泣いたり怒ったりする
子どもが次の活動へ移れない
放デイや児童福祉の仕事を始めたばかり
子どもへの伝え方を増やしたい
具体的な言葉をすぐに使いたい
職員や家族で対応をそろえたい
難しい専門用語はできるだけ使わず、家庭や支援の現場で試しやすい言葉を中心にしています。
※この記事は、個人の現場経験と公開されている支援情報を整理したものです。医療的な診断や、個別支援計画に代わるものではありません。子どもの性格、発達、体調、周囲の環境によって合う方法は異なります。危険な行動が続く場合や、日常生活への影響が大きい場合は、所属先の責任者や学校、自治体の相談窓口、医療・福祉の専門職などに相談してください。
「切り替えられない=言うことを聞かない」ではない
子どもが指示に従わないとき、大人からは「言うことを聞きたくないのかな」と見えることがあります。
しかし、実際には、
「言うことを聞かない」のではなく、
「言われたことを理解しにくい」
「終わりを受け入れる準備ができていない」
「不安や疲れで動けない」
という場合もあります。
文部科学省の支援資料でも、予定やルールを目で確認できるようにし、変更がある場合は早めに知らせることが、見通しを持つための方法として紹介されています。文部科学省「特別支援教育について」
また、発達障害教育推進センターも、予定変更への不安が強い場合には、事前に変更を知らせ、言葉だけでなく写真や絵カードなども使い、混乱が大きいときは無理強いしないことを案内しています。発達障害教育推進センター「予定を変更するとパニックになってしまいます」
つまり、大切なのは「一度で言うことを聞かせる魔法の言葉」を探すことではありません。
子どもが動けない理由を考え、その子が理解しやすい形に伝え直すことです。
声をかける前に確認したい6つの理由
1.終わるタイミングが分からない
子どもが遊びに集中しているときに、突然「おしまい」と言われても、すぐに気持ちを変えるのは難しいものです。
大人でも、好きな動画を途中で消されたり、作業の途中で別の仕事を頼まれたりすると、気持ちを切り替えにくいことがあります。
この場合は、
「あと5分」
「あと3回」
「このページまで」
など、終わりを事前に伝える方法が合いやすくなります。
2.次に何をするのか分からない
子どもは、今の遊びを終えることよりも、「終わったあとに何が起こるのか分からないこと」に不安を感じている場合があります。
「遊びは終わり」だけではなく、
「遊びが終わったら手洗い。そのあとにおやつ」
と、次の流れまで伝えます。
3.楽しい活動を急に止められた
好きな遊びやゲームをしているとき、子どもの気持ちはその活動に向いています。
その状態で突然終わりを告げられると、「もっとやりたかった」という気持ちが強く出ることがあります。
この場合は、片づけを要求する前に、
「まだ遊びたかったね」
と、気持ちを言葉にすることが役立つ場合があります。
4.指示が大きすぎる
「全部片づけて」
「早く準備して」
「ちゃんとして」
これらは、大人には意味が伝わりますが、子どもには具体的な行動が分かりにくい言葉です。
何から始めるのか
何をどこに入れるのか
どこまでできたら終わりなのか
が分からず、動けなくなっているかもしれません。
その場合は、
「赤いブロックを1個、箱に入れよう」
と、最初の行動を小さくします。
5.次の活動に不安がある
今の活動を終えられないように見えて、実は「次の活動をしたくない」という場合もあります。
例えば、
勉強が難しい
集団活動が苦手
大きな音がする
苦手な相手がいる
失敗するのが不安
といった理由です。
この場合は、今の遊びを終わらせる声かけだけでなく、次の活動の内容や参加方法を調整する必要があります。
6.体調や環境による余裕のなさ
普段は切り替えられる子どもでも、疲れている日や、周囲の音が大きい場所では動けなくなることがあります。
睡眠不足
空腹
暑さや寒さ
人の多さ
大きな音
学校で嫌なことがあった
活動が続いて疲れている
こうした状態では、普段と同じ声かけが伝わらない場合があります。
「言い方が悪かった」と考えるだけでなく、その日の状態や周囲の環境も確認します。
声かけを選ぶ5ステップ
子どもが動かないと、たくさんの言葉を使いたくなります。
しかし、言葉を増やしすぎると、何をすればよいのか分かりにくくなる場合があります。
私は、次の順番で考えることが大切だと感じました。
ステップ1:子どもの状態を見る
まず、次のどれに近いかを確認します。
まだ遊びたい
終わりが分からない
次の活動が不安
やることが多すぎる
怒りや悲しさが強い
疲れていて動けない
理由によって、必要な声かけは変わります。
ステップ2:気持ちを短く受け止める
「まだ遊びたかったね」
「急に終わるのは嫌だったね」
など、短い言葉で伝えます。
長く説得する必要はありません。
ステップ3:次にすることを一つだけ伝える
「全部片づけて」ではなく、
「まず、車を1個入れよう」
と伝えます。
ステップ4:必要なら二つから選んでもらう
「自分でやる?」
「一緒にやる?」
など、どちらを選んでも次の行動につながる選択肢を示します。
ステップ5:声をかけたら少し待つ
声をかけてすぐに動かなくても、言葉を重ねず、子どもが考える時間を作ります。
急いで次の指示を出すと、最初の言葉を理解する前に、新しい言葉が加わってしまいます。
ここまでが、無料部分です。
ここから先では、この5ステップを実際に使えるように、場面別の声かけ30個と会話例を紹介します。
第1章 終わりの見通しを伝える声かけ
①「あと5分でおしまい。タイマーが鳴ったら片づけよう」
【使いやすい場面】
自由遊び、ゲーム、動画、お絵描きなどを終える場面。
【この言葉のねらい】
突然終わりを告げず、気持ちを切り替えるための準備時間を作ります。
【使い方】
時間の感覚が分かりにくい子どもには、タイマーの画面を見せたり、一緒に設定したりします。
「あと10分」「あと5分」「あと1分」と段階的に知らせる方法もあります。
【注意点】
5分と伝えたのに、実際は15分以上続けられる状態になると、予告の意味が分かりにくくなります。
できる範囲で、伝えた時間と実際の終了時間を合わせます。
②「タイマーは何分にする?3分と5分、どっち?」
【使いやすい場面】
すぐには終われないものの、数分後なら切り替えられそうな場面。
【この言葉のねらい】
大人が対応できる範囲で、子どもに終了時間を選んでもらいます。
【使い方】
子どもが選んだら、
「5分だね。鳴ったらおしまい」
と約束を短く確認します。
【注意点】
終わるかどうかを選ばせるのではなく、何分後に終わるかを選んでもらいます。
③「あと2回と3回、どっちで終わりにする?」
【使いやすい場面】
滑り台、ボール遊び、動画、ゲームなど、回数で区切れる活動。
【この言葉のねらい】
子ども自身に「最後」を選んでもらい、終わりを受け入れる準備を作ります。
【注意点】
「何回したい?」と聞くと、大人が対応できない回数を答えることがあります。
2つの選択肢にすると分かりやすくなります。
④「最後に何をして終わりにする?」
【使いやすい場面】
ブロック、おままごと、お絵描きなど、終わり方を選べる活動。
【この言葉のねらい】
急に中断するのではなく、子どもが納得できる終わり方を作ります。
【使用例】
「最後に赤い車を走らせる」
「最後に屋根をつける」
「最後に好きな色を一つ塗る」
【注意点】
最後の活動が長くなりそうな場合は、
「最後に車を1回走らせよう」
と範囲を具体的にします。
⑤「このページが終わったら、おしまいにしよう」
【使いやすい場面】
絵本、プリント、動画、漫画、ゲームなど、区切りが見える活動。
【この言葉のねらい】
「もうすぐ」ではなく、目で確認できる終わりを示します。
【注意点】
区切りが遠すぎると終わるまでに時間がかかります。
子どもが受け入れやすく、大人も待てる場所を選びます。
⑥「今は遊び。次は手洗い。そのあとにおやつだよ」
【使いやすい場面】
今の活動を終えたあと、何をするのか分からず不安そうな場面。
【この言葉のねらい】
「現在」と「次」を伝え、活動の流れを見えるようにします。
【使い方】
言葉だけで難しい場合は、
「遊び→手洗い→おやつ」
の写真や絵カードを見せます。
【注意点】
一度に一日の予定をすべて説明すると混乱する場合があります。
最初は「今」と「次」の二つだけでも構いません。
第2章 気持ちを受け止める声かけ
⑦「まだ遊びたかったね」
【使いやすい場面】
遊びを終えるときに泣いたり、怒ったりしている場面。
【この言葉のねらい】
最初から指示を出すのではなく、子どもの気持ちを短く言葉にします。
【次につなげる言葉】
「まだ遊びたかったね。最後に1回したら終わろう」
【注意点】
気持ちを受け止めることと、いつまでも遊びを続けることは同じではありません。
共感したあと、終わり方を具体的に伝えます。
⑧「急に終わるのは嫌だったね」
【使いやすい場面】
急な予定変更や、大人が事前の予告をできなかった場面。
【この言葉のねらい】
子どもが怒っている理由を一緒に整理します。
【注意点】
大人が理由を決めつけないようにします。
子どもの様子が違う場合は、
「ほかに嫌なことがあった?」
と確認します。
⑨「楽しかったから、やめにくいよね」
【使いやすい場面】
好きな活動に強く集中している場面。
【この言葉のねらい】
切り替えられないことを責めず、楽しかった気持ちに注目します。
【次につなげる言葉】
「楽しかったね。写真を撮ってから片づけよう」
⑩「怒っても大丈夫。でも、たたくのは止めよう」
【使いやすい場面】
怒って、物を投げる、人をたたくなどの行動が出そうな場面。
【この言葉のねらい】
「怒る感情」と「危険な行動」を分けて伝えます。
怒る気持ちは否定せず、危険な行動は短く止めます。
【注意点】
危険がある場合は、説明より安全確保を優先します。
落ち着いてから、たたく代わりにできることを一緒に考えます。
⑪「今は話さなくて大丈夫。落ち着いたら一緒に考えよう」
【使いやすい場面】
泣いたり興奮したりして、話を聞けない場面。
【この言葉のねらい】
気持ちが大きく乱れているときに、理由を答えることを強制しません。
【注意点】
完全に放置するのではなく、安全を確認できる距離で見守ります。
第3章 子どもが選べるようにする声かけ
⑫「自分で片づける?一緒に片づける?」
【使いやすい場面】
片づけを嫌がっている場面。
【この言葉のねらい】
片づけるかどうかではなく、片づけ方を選んでもらいます。
【どちらも嫌と言われたら】
「分かった。最初の1個だけ一緒に入れよう」
と、行動を小さくします。
⑬「車とブロック、どっちから片づける?」
【使いやすい場面】
複数のおもちゃが広がっている場面。
【この言葉のねらい】
何から始めるのかを二つから選んでもらいます。
【注意点】
「どれから片づける?」では、選択肢が多すぎる場合があります。
⑭「歩いて行く?手をつないで行く?」
【使いやすい場面】
次の部屋への移動を嫌がる場面。
【この言葉のねらい】
移動するかどうかではなく、移動方法を選んでもらいます。
【注意点】
安全上、手をつなぐ必要がある場所では、選択肢にはしません。
その場合は、
「右手と左手、どっちでつなぐ?」
など、安全を守れる選択肢に変えます。
⑮「今片づける?1分後に片づける?」
【使いやすい場面】
少し待てば切り替えられそうな場面。
【この言葉のねらい】
始めるタイミングを子どもに選んでもらいます。
【注意点】
1分後を選んだ場合はタイマーを使い、それ以上の延長を繰り返さないようにします。
⑯「次は、椅子とマットのどっちで参加する?」
【使いやすい場面】
集団活動や学習への参加を嫌がっている場面。
【この言葉のねらい】
活動そのものではなく、場所や参加方法への不安を小さくします。
【注意点】
参加すること自体が大きな負担になっている場合は、時間や活動量の調整も考えます。
第4章 行動を小さくする声かけ
⑰「まず、立つだけでいいよ」
【使いやすい場面】
座り込んで動けなくなっている場面。
【この言葉のねらい】
移動、片づけ、次の活動を一度に求めず、最初の動作だけを伝えます。
【次につなげる言葉】
「立てたね。次はドアまで行こう」
⑱「まず、おもちゃを1個だけ箱に入れよう」
【使いやすい場面】
片づける物が多くて、動けない場面。
【この言葉のねらい】
「全部片づける」を「1個入れる」に変えます。
【注意点】
1個できた直後に、
「できるなら全部やって」
と言わず、まずできた行動を認めます。
⑲「最初の3個は一緒にやろう」
【使いやすい場面】
一人で始めることへの負担が大きい場面。
【この言葉のねらい】
大人が一緒に始めて、行動を開始するきっかけを作ります。
【注意点】
毎回すべて大人が行うのではなく、子どもができる部分を残します。
⑳「まず、ドアのところまで行ってみよう」
【使いやすい場面】
移動する距離が長く感じられ、動けない場面。
【この言葉のねらい】
移動を、
立つ
ドアまで行く
廊下へ出る
次の部屋へ行く
と小さく分けます。
㉑「手伝ってほしい?それとも見ていてほしい?」
【使いやすい場面】
一人では難しそうでも、大人に手を出されることを嫌がる場面。
【この言葉のねらい】
必要な手伝い方を確認します。
【注意点】
「見ていて」を選んだ場合は、すぐに手を出さず、少し待ちます。
第5章 次の行動に興味を向ける声かけ
㉒「片づけたら、次はおやつの時間だよ」
【使いやすい場面】
次の予定が分からず、切り替えにくい場面。
【この言葉のねらい】
「先にすること」と「そのあとにすること」を伝えます。
【注意点】
無理に言うことを聞かせるためのご褒美ではなく、予定されている流れとして伝えます。
㉓「赤いブロックを集める係をお願いできる?」
【使いやすい場面】
片づけに興味を持てない場面。
【この言葉のねらい】
片づけを、具体的な役割として伝えます。
【応用例】
「車を車庫へ戻す係」
「絵本を並べる係」
「タイマーを止める係」
㉔「次の部屋まで、静かな忍者で行ってみよう」
【使いやすい場面】
移動を嫌がっている場面。
【この言葉のねらい】
移動に、子どもが興味を持ちやすい遊びの要素を加えます。
【注意点】
興奮して走り回る遊びではなく、安全に移動できる設定にします。
㉕「昨日もタイマーが鳴ったら片づけられたね」
【使いやすい場面】
「できない」と言って動けない場面。
【この言葉のねらい】
以前にできた経験を、具体的に思い出してもらいます。
【注意点】
「昨日できたんだから今日もできるでしょ」と責める言い方にはしません。
第6章 声をかけても動けないときの言葉
㉖「今は難しそうだね。少し休んでから、もう一度やってみよう」
【使いやすい場面】
何度伝えても動けず、疲れている様子がある場面。
【この言葉のねらい】
声かけを増やすのではなく、気持ちや体を整える時間を作ります。
【注意点】
休憩を罰や反省の時間にしないようにします。
㉗「音が嫌だった?それとも疲れた?」
【使いやすい場面】
普段はできるのに、その日は切り替えられない場面。
【この言葉のねらい】
動けない理由を一緒に探します。
【注意点】
理由を言葉にできない子どももいます。答えを無理に求めず、表情や周囲の環境も確認します。
㉘「全部は難しそうだから、今日は3個だけにしよう」
【使いやすい場面】
その日の体調や気持ちによって、普段と同じ量が難しい場面。
【この言葉のねらい】
ゼロか全部かではなく、その日にできる量へ調整します。
【注意点】
毎回すぐに減らすのではなく、子どもの状態を見て判断します。
㉙「いつものやり方が難しいから、今日は方法を変えよう」
【使いやすい場面】
タイマーや予告など、普段の方法がうまくいかない場面。
【この言葉のねらい】
予定どおり進めることだけにこだわらず、参加方法や手順を調整します。
【変更例】
全部片づける予定を3個にする
集団参加を見学に変える
大人と一緒に移動する
静かな場所で休んでから参加する
㉚「今日は何があったから切り替えられたと思う?」
【使いやすい場面】
活動が終わり、子どもが落ち着いている場面。
【この言葉のねらい】
うまくいった方法を一緒に振り返ります。
【答えの例】
「タイマーがあったから」
「一緒に片づけたから」
「写真を撮ったから」
【注意点】
切り替え直後に長く質問せず、落ち着いている時間に短く確認します。
実際の場面を想定した会話例
場面1:ゲームを終えられない
大人:「あと5分で終わりだよ。タイマーを一緒に設定しよう」
子ども:「まだやりたい」
大人:「まだやりたかったね。あと1回と2回、どっちで終わる?」
子ども:「2回」
大人:「分かった。2回したら終わりにしよう」
この場面では、
終わりを予告する
気持ちを受け止める
回数を選んでもらう
という順番で伝えています。
場面2:片づけを始められない
大人:「そろそろ片づけよう」
子ども:「嫌だ」
大人:「まだ遊びたかったね。車とブロック、どっちから片づける?」
子ども:「車」
大人:「分かった。まず赤い車を1個入れよう」
「全部片づける」と伝えず、
片づける種類を選ぶ
最初の1個を示す
という形にしています。
場面3:作った物を壊したくない
大人:「あと5分でブロックはおしまいだよ」
子ども:「まだ完成してないから嫌だ」
大人:「途中で壊すのは嫌だよね。写真を撮る?それとも続きができる場所に置いておく?」
子ども:「置いておく」
大人:「分かった。名前のカードを置いて、明日続きができるようにしよう」
「遊びを終えたくない」のではなく、「作った物を壊されたくない」ことが理由の場合もあります。
場面4:急な予定変更で怒っている
大人:「今日は雨だから、公園は中止になりました」
子ども:「嫌だ!公園に行く!」
大人:「急に変わるのは嫌だったね」
子ども:「公園がいい!」
大人:「今日は公園には行けないよ。室内でボール遊びと工作、どっちにする?」
この場面では、
気持ちは受け止める
変えられない予定は短く伝える
代わりの選択肢を示す
という順番にしています。
場面5:泣いて話を聞けない
大人:「急に終わるのは嫌だったね」
子ども:「嫌だ!」
大人:「今は話さなくて大丈夫。ここで少し休もう」
落ち着いてから、
大人:「次はタイマーを使う?あと3回と決める?」
と、次回の方法を一緒に考えます。
気持ちが大きくなっているときは、説得よりも安全確保と落ち着く時間を優先します。
伝わりにくい声かけの言い換え例
「早くして」
→「あと5分で終わり。タイマーが鳴ったら片づけよう」
「いつまで遊んでいるの?」
→「最後に1回したら終わりにしよう」
「みんなはもうできているよ」
→「まず、おもちゃを1個箱に入れよう」
「泣かないの」
→「まだ遊びたかったね」
「何回言ったら分かるの?」
→「次にすることを一緒に確認しよう」
「いい加減にしなさい」
→「今は遊びを終えて、手を洗う時間だよ」
「ちゃんとして」
→「椅子に座って、手を膝に置こう」
「もう知らない」
→「今は難しそうだね。落ち着いたら一緒に考えよう」
「言うことを聞かないなら、おやつなし」
→「先に片づけ、そのあとにおやつだよ」
「できるまで一人でやって」
→「最初の3個は一緒にやろう」
抽象的な言葉や、ほかの子どもと比較する言葉よりも、
いつするのか
何をするのか
どこまで行うのか
を具体的に伝えることが大切です。
声かけが効かないときのチェックリスト
声かけを変えても、うまくいかない日はあります。
そのようなときは、次の項目を確認してください。
子どもの状態
睡眠不足ではないか
お腹が空いていないか
疲れていないか
学校などで嫌なことがなかったか
痛みや体調不良がないか
周囲の環境
音が大きすぎないか
人が多すぎないか
暑すぎたり寒すぎたりしないか
周りから複数の指示が出ていないか
伝え方
言葉が長くなっていないか
一度に複数の指示を出していないか
終わりを事前に伝えたか
次の予定を伝えたか
子どもが理解できる言葉だったか
声をかけたあと、待つ時間を作ったか
活動の内容
片づける量が多すぎないか
次の活動が難しすぎないか
子どもが不安を感じる内容ではないか
最初の一歩が分かるようになっているか
声かけだけで解決しようとせず、体調・環境・活動内容も一緒に見直すことが大切です。
7日間で「その子に合う声かけ」を探す方法
1日目:切り替えにくい場面を一つ決める
例:
「ゲームからお風呂へ移るとき」
「自由遊びから片づけへ移るとき」
最初からすべての場面を変えようとせず、一つに絞ります。
2日目:これまでの様子を記録する
何時ごろだったか
何をしていたか
次の予定は何だったか
どんな声かけをしたか
子どもはどう反応したか
を簡単に残します。
3日目:使う声かけを三つに絞る
おすすめは、
「あと5分でおしまい」
「まだ遊びたかったね」
「まず1個入れよう」
の三つです。
4日目:目で見える物を追加する
タイマー、時計、写真、絵カードなどを追加します。
声かけだけの場合と、目で見える物を使った場合の違いを確認します。
5日目:声をかけたあとの待ち時間を意識する
伝えたあと、すぐに次の言葉を重ねず、子どもの様子を見ます。
6日目:大人同士で対応を共有する
家庭なら家族、放デイなら職員同士で、
「5分前に予告する」
「タイマーが鳴ったら最後に1回する」
など、対応をそろえます。
7日目:うまくいった方法を一つ残す
すべてを続ける必要はありません。
一番反応がよかった方法を残し、次の1週間も試します。
そのまま使える「切り替え記録シート」
【日付・時間】
【切り替えにくかった活動】
【次に予定していた活動】
【そのときの子どもの様子】
【事前に予告したか】
【使った声かけ】
【タイマーや絵カードを使ったか】
【子どもの反応】
【最終的に切り替えられた方法】
【次回試したいこと】
記入例
【日付・時間】
9月1日・15時ごろ
【切り替えにくかった活動】
ブロック遊び
【次に予定していた活動】
おやつ
【そのときの子どもの様子】
作品を完成させようと集中していた
【事前に予告したか】
5分前に伝えた
【使った声かけ】
「タイマーが鳴ったら片づけよう」
【タイマーや絵カードを使ったか】
タイマーを使った
【子どもの反応】
鳴ったあとも続きを作りたがった
【最終的に切り替えられた方法】
作品を置いておく場所を作り、「明日続きができる」と伝えた
【次回試したいこと】
遊ぶ前に、途中の作品を置く場所を確認する
この記録から、
「この子は、遊びをやめたくないだけではなく、完成していない作品を壊したくなかったのかもしれない」
と、切り替えにくかった理由を考えられます。
よくある質問
Q1.選択肢を出しても「どっちも嫌」と言われます
その場合は、選択すること自体が負担になっている可能性があります。
「最初の1個は一緒に入れよう」
と、大人が最初の行動を手伝います。
Q2.タイマーが鳴っても終われません
タイマーは、鳴らせば必ず動ける道具ではありません。
鳴ったあとに何をするのかまで伝えます。
「タイマーが鳴る」
「最後に1回する」
「片づける」
という流れを事前に確認します。
Q3.毎回同じ場面で泣きます
声かけだけでなく、次の活動への不安や、時間帯、疲れ、周囲の音なども確認します。
記録を残すと、共通する原因を見つけやすくなります。
Q4.ご褒美を使ってもよいですか?
何でも物で釣る形になると、ご褒美がないと動きにくくなる可能性があります。
まずは、
「片づけのあとはおやつ」
「宿題のあとはゲーム」
のように、予定されている流れを分かりやすく伝える方法から試します。
Q5.危険な行動が出たときも、気持ちを受け止めるべきですか?
気持ちを受け止めることは大切ですが、安全が最優先です。
人をたたく、道路へ飛び出す、危険な物を投げるなどの場合は、まず安全を確保します。
その場で長く説明せず、落ち着いてから振り返ります。
保存用|声かけ早見表
終わりを知らせる
「あと5分でおしまい」
「あと2回と3回、どっちで終わる?」
「このページが終わったらおしまい」
気持ちを受け止める
「まだ遊びたかったね」
「急に終わるのは嫌だったね」
「楽しかったから、やめにくいよね」
選んでもらう
「自分でやる?一緒にやる?」
「車とブロック、どっちから片づける?」
「歩いて行く?手をつないで行く?」
行動を小さくする
「まず、立つだけでいいよ」
「おもちゃを1個だけ入れよう」
「最初の3個は一緒にやろう」
動けないとき
「今は難しそうだね」
「少し休んでから、もう一度やろう」
「手伝ってほしい?見ていてほしい?」
まとめ
子どもが切り替えられないとき、つい「早くして」「もう終わり」と何度も言いたくなります。
しかし、大切なのは、子どもを無理やり動かすための言葉を探すことではありません。
子どもが、
いつ終わるのか
次に何をするのか
最初に何をすればよいのか
を理解し、気持ちを整えられるように手助けすることです。
今回紹介した30個を、すべて一度に使う必要はありません。
まずは、次の3つから試してみてください。
「あと5分」と終わりを予告する
「まだ遊びたかったね」と気持ちを受け止める
「まず1個入れよう」と行動を小さくする
同じ子どもでも、その日の体調や気分、周囲の環境によって合う声かけは変わります。
うまくいかなかったときも、
「この声かけはダメだった」
と決めつける必要はありません。
「今日は何が難しかったのだろう」
「次は何を変えればよいだろう」
と少しずつ振り返ることが、その子に合った支援につながります。
そして、切り替えられたときは、
「自分で最後の1個を片づけられたね」
「タイマーが鳴ってから動けたね」
と、できた行動を具体的に伝えてみてください。
この記事が、子どもへの伝え方に悩んでいる保護者や、放デイ・児童福祉の現場で働く方にとって、困ったときに何度も読み返せる「声かけの手引き」になればうれしいです。
