痛い場所を、最初に触らなかった理由。

腰が痛くて来たのに、なぜか最初に足首を動かされた——そういうことが、ここでは起こります。
「なぜ腰を先に触らないのか」と感じる方もいると思います。今日はその判断の過程を、できるだけ正直に書きます。

痛い場所は「結果の場所」かもしれない
施術の最初にやっていることは、痛い場所の「前にある問題」を探すことです。
腰が痛い、というのは事実です。ただ、その腰に負担がかかっている理由が、腰そのものにあるかどうかは、まだわかっていない。それが出発点になっています。
たとえば骨盤の向き、足首の動きの左右差、呼吸に連動した胸郭の動きかた——これらがかみ合っていないとき、そのしわ寄せが腰に集まってくることがあります。こうした見方をしているので、痛みの場所よりも先に、「何がその場所に負担をかけているか」を確認することになります。

土台から見る、という習慣
宮大工だった曾祖父がよく言っていたのは、「建物が傾いているときに、傾いている壁だけ直しても意味がない。まず土台を見ろ」という言葉でした。
施術に入ってから22年以上経ちますが、このことは体を見るときの姿勢として、今でも残っています。痛い場所が「悪い場所」とは限らない。腰はしわ寄せが出た場所であって、問題の起点がそこにあるかどうかは、別に確かめる必要がある。
だから最初に触るのは、痛い場所ではなく、「どこからその痛みが作られているか」を確かめるための場所になります。

「早く痛い場所を触ってほしい」という気持ちも、よくわかる
痛くて来ているのだから、そこを先に触ってほしい——それは当然の感覚だと思います。
ただ、痛い場所だけを繰り返し触っても戻ってくる、という経験をされる方もいます。戻ってきやすい場合のひとつに、「負担をかけている場所への確認が不十分だった可能性がある」と考えることがあります。
もちろん、痛い場所に直接的な問題が起きているケースもあります。痛みの状態によっては、整体での対応より先に医療機関でご確認いただくことをお勧めする場合があります。それも判断のひとつです。
何を見て、どこを先に触るか
実際の確認では、こういった点を手がかりにしています。
体重を両足で支えたときの左右差はどのくらいあるか。歩き方の中で骨盤がどう動いているか。深呼吸をしたときに胸郭が均等に広がるか。仰向けで脚の長さに差があるか。
これらは「痛い場所」とは離れた場所の情報ですが、腰に何が起きているかを読むための手がかりになることがあります。
こうした確認を経て、どこから手をつけるかが決まります。それが腰になることもあれば、骨盤まわりになることも、足首になることもある。
「何も考えずに触っているわけではない」ということを、知っておいてほしい
施術中に黙って体を動かしているとき、こういう判断の過程を経ています。
痛い場所をすぐに触らないのは、その場所を軽く見ているのではなく、その場所に何が起きているのかを、まず丁寧に読もうとしているからです。
そのことを、少しでも伝えられていれば、と思っています。
