三段峡と、156mのダムと、草原の山。いこいの村ひろしまを拠点にする一泊二日
広島の観光というと、宮島と平和記念公園がまず挙がります。
どちらも素晴らしい場所ですが、県の北西部、安芸太田町のあたりにも、負けないスケールの自然があります。しかも、そこに宿がある。今回は〈いこいの村ひろしま〉(山県郡安芸太田町)を拠点にした、一泊二日の組み立てをご紹介します。
■ 三段峡——国の特別名勝という格
まず外せないのが、三段峡です。
全長およそ16kmの峡谷で、国の特別名勝に指定されています。特別名勝というのは名勝のなかでもとくに価値が高いとされるもので、峡谷でこの指定を受けているのは全国でも限られます。
見どころは点在していますが、よく知られているのが「黒淵」と「猿飛」。どちらも渓流に渡舟が出ていて、切り立った岩壁のあいだを水面すれすれに進みます。歩くだけでも十分ですが、舟から見上げる景色は角度がまるで違います。奥のほうには、三段になって落ちる「三段滝」があります。
夏は水音が涼しく、秋は紅葉。訪れる季節で印象が変わる場所です。渡舟の運航は時期や天候によりますので、お出かけ前に最新の状況をご確認ください。
■ 温井ダム——高さ156mの壁と、観光放流
もうひとつの目玉が、温井ダムです。
堤高156mのアーチ式ダムで、この形式では日本でも屈指の高さです。真下から見上げると、コンクリートの壁がそのまま空をふさぐような迫力があります。
そして年に何度か行われるのが「観光放流」。2026年は4月10日から11月16日までの指定日に実施され、基本は11時から(週末など14時からの回もあり)、1回あたりおよそ10分間です。放たれた水が霧になって舞い、下流に虹がかかることもあります。日程は変更されることがありますので、公式情報でご確認のうえお出かけください。
ダム湖の「龍姫湖(りゅうきこ)」ではSUPやカヤックの体験も行われています(運航期間・条件は運営者にご確認ください)。
■ 深入山——1時間で登れる、草原の山
そして、宿のすぐ目の前にあるのが深入山です。
標高1,153m。木がまばらで、山頂まで草原が続く珍しい山容をしています。麓から1時間ほどで登れるので、本格的な登山装備がなくても歩けます。遮るものがないぶん、登るにつれて視界がひらけていく感覚が気持ちいい山です。
安芸太田町は森林セラピーの認定を広島県内で最初に受けた町で、深入山にはセラピーロードも整備されています。「登る」ほど気合いを入れなくても、森のなかを歩くだけで十分に価値のある場所です。
■ たとえば、こんな一泊二日
1日目:昼過ぎに戸河内ICを降りて、まず三段峡へ。黒淵の渡舟に乗って2時間ほど歩き、夕方にいこいの村ひろしまへチェックイン。大浴場で汗を流して、夕食は会席膳。
2日目:朝食のあと深入山を1時間ほど歩き、下山して温井ダムへ。11時の観光放流を見て、龍姫湖を眺めながら昼食。午後に広島市内へ戻る。
移動距離を欲張らず、それでいて自然のスケールをひととおり味わえる行程になります。
■ 宿を拠点にするということ
いこいの村ひろしまは、深入山の南麓に広がる蔵座高原、西中国山地国定公園のなかにあります。全27室、収容119名。大浴場「セラミック温泉」(天然温泉ではなくセラミックを用いた人工の機能性浴です)にはジェットバスとサウナがあり、歩いたあとの体をほぐせます。
アクセスは中国自動車道の戸河内ICから国道191号を北上しておよそ25分。広島駅からは路線バス(新広益線)も出ています。日帰りパック(7,700円〜)もあり、泊まらずに立ち寄っていただくこともできます。
■ 結びに
三段峡も温井ダムも深入山も、日帰りで行けなくはありません。ただ、どれかひとつを見て帰るのと、ひと晩泊まって三つとも見るのとでは、旅の濃さがまるで違います。
秋の紅葉はこれからが本番です。今年の行き先を考えるとき、広島の北西部という選択肢を思い出していただけたら嬉しく思います。
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