見出し画像

築古ホテルの内見で、私が必ず見る7か所——修繕費の当たりをつける

築古の宿泊施設を見に行くと、まず案内されるのは客室とロビーです。

きれいに掃除されていて、写真映えする角度で説明してくれる。それはそれで大事なのですが、私が本当に見たいのは客室ではありません。裏側です。

客室の壁紙は、正直どうにでもなります。数十万円で見違えます。問題は、数百万円から数千万円かかるものが、どういう状態にあるかです。今日はそこを書きます。

■ ① 屋上・屋根の防水

まず屋上に上げてもらいます。鍵がない、危ないから、と断られることもありますが、可能なかぎり食い下がります。

見るのは、防水層のふくれ、ひび割れ、シートの端の浮き、排水ドレンの詰まり。そして最上階の天井に雨染みがないか。

陸屋根の防水改修は、規模にもよりますが数百万円から。しかも「いま漏れていないから大丈夫」ではありません。防水は寿命がある部材です。前回いつ改修したかを必ず聞きます。分からない、という答えなら、それは「やっていない」と同義だと考えています。

■ ② 受水槽・ポンプ・給水管

次に機械室です。

受水槽の材質と設置年、ポンプの銘板に書かれた製造年、そして配管が何でできているか。古い施設だと鉄管が生きていることがあり、赤水の原因になります。

ここが厄介なのは、配管の更新は建物中に手を入れる工事になるということです。壁を壊し、天井を開ける。客室を止めながらやるので、工事費だけでなく休業損失も乗ってきます。「あとで直せばいい」がいちばん通用しない箇所です。

■ ③ 空調の室外機

屋上や裏手に並んでいる室外機の年式を、片っ端から写真に撮ります。

業務用空調の耐用は概ね15年前後。20年物がずらりと並んでいたら、それは「近いうちに、まとめて壊れる」という意味です。1台ずつ壊れてくれるならまだしも、同時期に設置されたものは同時期に寿命が来ます。

客室数×1台の交換費用を、購入直後の数年で見込んでおく必要があります。ここを計算に入れていない収支計画を、私は何度も見てきました。

■ ④ キュービクル・電気容量

高圧受電のキュービクルがあれば、その年式と点検記録を見ます。

そして電気容量。これは意外と重要で、リノベーションでIHや大型空調、EV充電器などを増やそうとすると、容量が足りずに引き込みからやり直しになることがあります。「増設できます」と口では言われますが、金額を確認するまで信じないほうがいいです。

■ ⑤ 消防設備

自動火災報知設備、スプリンクラー、誘導灯、消火器。そして消防用設備等点検結果報告書。

過去の点検報告書を見せてもらうと、指摘事項が並んでいることがあります。それは、そのまま「引き継いだ瞬間にやらなければいけない工事のリスト」です。

宿泊施設は用途上、消防の要求が厳しくなります。休館していた建物を再開するとき、あるいは用途を変えるときは、現行基準への適合が求められることがあります。ここは必ず、契約前に管轄の消防署へ図面を持って相談に行きます。

■ ⑥ エレベーター

保守契約の種類(フルメンテナンスか、POG=パーツ・オイル・グリースか)と、制御盤の年式。

エレベーターは、リニューアルとなると1基あたり相当な金額になります。そして止まると宿として営業できません。上階の客室が売れなくなるので、売上への影響が直撃します。

保守会社を独立系に変えて月額を下げる、という手もありますが、部品供給の問題があるので安易には勧めません。

■ ⑦ 厨房と排水

レストランや宴会場がある施設なら、厨房を必ず見ます。

グリストラップの状態、ダクトの油汚れ、排水の流れ、ガス設備の年式。厨房のダクト火災は本当に怖いので、清掃履歴は聞いておきたいところです。

そして、そもそもその厨房を使うのかどうか。使わないなら閉じる判断も含めて、購入前に決めておきます。「とりあえず残しておく」がいちばん高くつきます。

■ 見た結果を、どう値段に反映するか

この7か所を見て回ると、たいてい数百万円から数千万円の「これから必ず出ていくお金」が見えてきます。

大事なのは、それを理由に諦めることではありません。金額として把握して、価格交渉の材料にするか、購入後3年の資金計画に組み込むかを決めることです。

修繕費が読める物件は、実は怖くありません。怖いのは、読めないまま買って、営業を始めてから順番に壊れていくことです。宿は止まると売上がゼロになる商売なので、突発的な工事の影響が賃貸物件よりずっと大きい。

内見は、たいてい1〜2時間しかもらえません。客室をじっくり見て終わってしまうか、屋上と機械室に時間を使えるか。この差が、数年後の手残りを変えます。

案内してくれる方に「機械室と屋上を見せてください」と言うのは、最初は少し気が引けます。ただ、真面目に検討している買い手だと伝わりますし、断られるようなら、それはそれで一つの情報です。

不動産投資・ホテル投資についての個別相談やセミナーのご依頼は、noteのお問い合わせ、またはX(@takashifudousan)のDMからお気軽にどうぞ。

#不動産投資 #ホテル投資 #収益物件 #資産運用 #セミナー

いいなと思ったら応援しよう!