「ロダン早乙女の事件簿 SECOND・CONTACT」怨嗟の鎖 24
第8章 第1話 国立国会図書館前から奥青梅ダムへ
私は今、国立国会図書館の前にいる。昨日の捜査会議の中で、被害者二人の接点はどこにあるのかを考えていた。そこで、奥青梅ダムの近辺に遺棄されているからには、場所的に何かしらの関係があるはずだと考えたのだ。
佐々木刑事に聞くと、島尾班の捜査でダムに沈んだ村は二つあったそうだ。都庁の資料では、当時の村長の名前は二人とも柿内さんと言う人であった。しかし、それはたまたまだけで親戚ではないらしい。
ダムの底に沈むということが知らされてから両方の村とも紛糾したらしいが、一つの村会議では全員一致で賛成された。しかし、もう一つの村では議員十人のうち九人の賛成で立ち退きが決まった。一人だけ反対していた者と一部の反対者以外の賛成派は、みんな大金を手にして、それほど混乱もなく率先して移住したとのことであった。
その一人は誰であるのかと聞くと、村会議の結果は記載があったらしいが、議事録の保管はなく、反対者が誰かは分からなかったということであった。
以上から当時の新聞などによるマスコミの報道を調べにきたのである。
その前に国立国会図書館を説明しよう。
(我が国唯一であり、国会法及び国立国会図書館法に基づき設置された図書館である。国会と道を挟んで東京本館があり、それ以外に京都に関西館と東京上野に国際子ども図書館が同じ括りの中にある。この国立国会図書館は、日本の国会議員の調査研究、行政、ならびに日本国のために奉仕する図書館である。故に原則18歳以上であれば、登録さえすれば利用が可能である。外国人でも東京本館と関西館は利用できる。また、納本制度に基づいているので、発刊された本、雑誌等、日本国内で出版されたすべての出版物を収集・保存する日本唯一の法定納本図書館である。基本誰でも入場ができるので是非一度は行ってほしいものだ)
私は国立国会図書館の本館の玄関に入った。久しぶりの国立国会図書館である。以前は弁護士を辞め、心理学を学ぶために大学に入り直したので、よく利用させていただいた。今では、三年が期限なので、更新のために利用している。
さて、本館に入った。ロッカーで荷物をしまって鍵をかける。私はメモなど使用しないので登録者カード、つまりIDのみを持っていく。その後ゲートでそのIDをタッチして入館する。
本は、基本立ち入り禁止の書庫に保管されており、パソコンのインデックスから拾って、書物を探して現物を見たりする。しかし、私はスキャンされた、中身だけでいいので、借りたことはない。
空いているパソコンの前に座った。まず奥青梅ダムの歴史を探る。すると、ダムは昭和39年に完成していた。
ダム建設にゴーサインが出たのが、昭和23年になるようだ。すると、村の議会承認はその前であろう。だから戦後の昭和20年から探すことにした。
地方紙でないと扱わないだろうと思い、東京都の西側に拠点を持つ大正8年に設立された静川新聞(しずかわしんぶん)のデータを探し出す。
膨大な量であるが、ここでカメラアイが役に立つ。隣の女性の何倍も早いので、びっくりしているのが視界に入る。30分ほどして、ちょうど2年分ぐらいを読み切った時、一枚の写真が目に止まる。知り合いにそっくりな人がいた。拡大して確認したが間違いがない。
一つの仮説が頭をよぎる。しかし・・・、と自問自答している。
取り敢えず、この記事のコピーをお願いする。カウンターでコピーを受け取ると急いで図書館をあとにした。
外に出ると直ぐに伊藤さんに電話をした。
「まだ帰れませんので、昨日言った通り、講義の件、宜しくお願いします」と伝えた。心の中で、伊藤さん頑張れと呟く
続けて佐々木刑事に電話をする。
「捜査の途中であるのに申し訳ありません。至急お会いしたいのですがよろしいでしょうか」
「分かりました。お迎えにあがります。大学ですか」
「いえ、国立国会図書館にいます」
「ああ、調べ物ですか。国立国会図書館だなんて、教授ともなるとすごいところの図書館を使われるんですね」
「今日は捜査の調べものです」
「そうですか。何か分かったんですね。そりゃ早く行かなきゃ」
すぐに電話が切れたが、サイレンが鳴ったような。もしも、サイレンを鳴らしながら来た後、覆面に乗り込むのって恥ずかしいよなと思っていると、案の定サイレンを鳴らしてやって来た。注目の的だ。
車から降りて来て、さあどうぞというように、後部座席の扉を開けてもらったが、今日は車で話しがしたいので助手席に回り込んだ。
覆面パトカーに乗り慣れないので、周りを見るとみんなにジロジロ見られている気がして、恥ずかしさマックスで助手席に座っている。
ドアを閉めると佐々木刑事に、赤色灯を格納してほしいとお願いし、直してもらった。
「教授が至急と言われるということは、かなりの収穫だったんですね」
「そうです。お話しする前に、一人応援として加えていただきたい人がいるのですが、本部に許可をいただけないでしょうか。一般人ではありません。西青梅署奥多摩方面課の三枝慎吾巡査です」
「その彼である理由は?」
「彼は、初動捜査に参加したことで第一回捜査会議に出席していました。翌日私の教授室に来て、捜査に参加できるように頼んで欲しいと言われました。しかし、私が頼んでどうにかなるものでもないので、ということでお断りしました」
「では、今回参加させて欲しいというのは何か意図があるのですか」
「そうです。その時にアピールしていたことが呼びたい理由です。それは、お父さんは最後まで奥多摩方面の駐在所で勤務していたのですが、全ての駐在所を回っていて、奥多摩で知らない場所はなく、知り合いもたくさんいると話していました」
「すると、彼に道案内をさせるためですか」
「それだけではなく、ある人物の捜索も兼ねています」
「分かりました。取り敢えず先に一課長に許可をもらいます」
そう言って車の中から電話をしていた。そして、後藤捜査一課長に許可をもらって頂くことができた。
「それでは私は西青梅署まで行きますので降ります」
「いやいや、このまま一人で行かせられませんよ。私もご一緒します」と言ってくれた。その言葉に心細さが和らいだ。
それから伊藤さんに電話をして、講義が終われば直帰して下さいと話した。そして、続けた。
「今から約80年前の写真をメールするので、感想を聞かせてください」と言って電話を切った。
するとすぐに、ピンというメール音がなった。
『学生の頃の写真のように見えます』と返って来た。
『ありがとう。佐々木刑事とこれから確かめに行きます』と送った。
『教授、気をつけて下さい』と折り返しが来た。
