「赤飯に甘納豆?」北海道では当たり前だった、ちょっと不思議な赤飯
前回は、北海道の郷土菓子「べこもち」を紹介しました。
北海道には、道外の人から見ると「えっ、そうなの?」と思ってしまう食べ物が、まだまだあります。
今回取り上げるのは、そんな北海道の食文化の代表格。
甘納豆を使った赤飯です。
「赤飯」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?
もち米に小豆やささげを入れて炊き、ごま塩を振って食べる。
おそらく、これを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
ところが北海道では、少し事情が違います。
小豆の代わりに甘納豆を使った赤飯が、昔から家庭で食べられてきました。
しかも、ただ豆が違うだけではありません。
赤い色は食紅で付けることが多く、甘納豆が入っているので、当然ながら赤飯そのものも甘い。
初めて聞いた人なら
「赤飯が甘いの?」
「甘納豆を入れるの?」
と驚くかもしれません。
でも、北海道ではこれが決して珍しい食べ物ではありません。
農林水産省も、甘納豆を使った赤飯を北海道の郷土料理として紹介しており、主な伝承地域は道内全域としています。
今回は、そんな北海道の「甘い赤飯」が、なぜ生まれ、どのように北海道に広がっていったのか。
そして、実際にはどんな味なのか。
ちょっと変わったように見えて、実は北海道の暮らしにしっかり根付いている「甘納豆赤飯」を調べてみました。
北海道の赤飯は、本当に甘い
まず知っておきたいのが、北海道の甘納豆赤飯は、単純に「赤飯に砂糖を大量に入れたもの」ではないということ。
基本になるのは、うるち米ともち米。

そこに甘納豆を加え、食紅で赤い色を付けます。
一般的な小豆の赤飯なら、豆を炊いたときの色が米に移ります。
ところが甘納豆は、すでに砂糖で甘く煮てあるもの。

そのため、北海道の赤飯では食紅を使って、あの鮮やかなピンク色を出すことが多いのです。
そして、炊き上がったご飯に甘納豆を加える。
すると、温かいご飯の熱で甘納豆の周りが少し溶け、そこに甘さが広がります。
これが北海道の甘納豆赤飯ならではの味わいです。
ただ、ここで面白いのが、
「甘い赤飯なのに、おかずと一緒に食べる」
ということ。
北海道の資料でも、甘納豆赤飯は甘いご飯でありながら、おかずと一緒に食べることが多いとされています。
さらに、ごま塩をかけて食べることもあります。
甘いご飯に塩気のあるごま塩。
この組み合わせを考えると、何となく味の想像がついてきませんか?
いわゆる「甘じょっぱい」味です。
なぜ北海道では甘納豆なの?
ここが、この赤飯の一番気になるところでしょう。
「昔から北海道では甘納豆だった」
だけでは、ちょっと説明が足りません。
実は、北海道の甘納豆赤飯には、比較的新しい歴史があります。
農林水産省によると、由来には諸説あるものの、昭和20年代後半ごろ、札幌の光塩学園の創設者・初代学長だった南部明子さんが考案したとされる説が紹介されています。
その背景にあったのが、
「忙しいお母さんでも、手軽に赤飯を作れるように」
という考えだったとされています。
昔ながらの小豆の赤飯は、豆を準備して炊くなど、手間がかかります。
そこで、すでに甘く煮てある甘納豆を使えば、もっと簡単に赤飯を作れる。
米を炊き、食紅で色を付け、甘納豆を混ぜる。

小豆の赤飯ひ苦手です…
これなら家庭でも作りやすい。
しかも、子どもたちにも喜ばれる。
南部さんは料理講習会などを通して、この甘納豆赤飯を各地に紹介したとされ、その後、新聞やラジオなどでも紹介されるようになり、北海道に広まっていったとされています。
「北海道では昔から甘納豆の赤飯だった」というイメージを持っている人もいるかもしれません。
でも、現在の北海道で広く知られるスタイルには、こうした昭和期の食文化の広がりが関係していると考えられているわけです。
これを知ると、ちょっと見方が変わりませんか?
北海道の赤飯は、単に「北海道民は甘いものが好きだから」という話ではなかったのです。
そこには、忙しい家庭でも作りやすい料理にしたいという発想がありました。
甘納豆赤飯は、いつ食べる?
赤飯といえば、全国的にも「お祝い」のイメージがあります。
北海道の甘納豆赤飯も、その点は同じです。
誕生日や子どもの成長祝い、入学・卒業など、ハレの日の食卓に登場してきました。
農林水産省の資料では、祭り、盆、婚礼、誕生祝いなどにも作られ、近所に配る風習があった地域も紹介されています。

つまり、
「赤飯=お祝いの日に食べる」
という文化そのものは全国と共通している。
ただ、その中身が北海道では甘納豆になった。
そう考えると、北海道の赤飯は「全国とはまったく違う食べ物」というより、共通する文化が北海道らしく変化したもの、と見ることもできます。
そして現在では、特別な日だけではなく、スーパーやコンビニでも甘納豆赤飯が販売されています。
北海道では学校給食に登場することもあり、子どもの頃から食べている人も少なくありません。
北海道民なら、みんな甘納豆赤飯?
ここは少し注意したいところです。
「北海道の赤飯=絶対に甘納豆」
というわけではありません。
北海道でも家庭や地域によって違いがあり、小豆を使った赤飯を食べる家庭もあります。
ただ、農林水産省は北海道の甘納豆赤飯について、道内全域に伝承され、北海道の食文化として定着していると紹介しています。スーパーやコンビニでも甘納豆の赤飯が多く販売されているそうです。
つまり、
「北海道民全員が甘納豆赤飯を食べる」ではないけれど、「北海道を代表する赤飯文化の一つ」であることは間違いない。
このくらいの表現が一番しっくりくるのではないでしょうか。
実際に作ってみよう!北海道の甘納豆赤飯
ここまで読んで、
「そんなに簡単なら、自分でも作れるの?」
と思った方もいるかもしれません。
実際、甘納豆赤飯は比較的簡単に作れるのも特徴です。
農林水産省が紹介しているレシピを参考にすると、まず、うるち米ともち米を混ぜて洗い、30分ほど水につけてから水を切ります。
4人分の目安なら、うるち米ともち米をそれぞれ1.5カップ、甘納豆100g程度。
甘納豆はそのまま大量に入れるのではなく、手早く洗って水気を切ります。
これは甘納豆の表面についた砂糖をある程度落とすためです。
次に、米を炊く準備。
水に塩と少量の食紅を加え、米を入れて炊きます。
農林水産省のレシピでは、沸騰後に中火、さらに弱火で炊き、火を止めて蒸らす段階で甘納豆を加えます。
炊飯器を使う場合も、米、水、塩、食紅をセットして炊き、炊き上がってから甘納豆を加えて蒸らす方法が紹介されています。
ここで大切なのは、甘納豆を最初から一緒に炊かないこと。
最後に加えることで、甘納豆の形をある程度残しながら、温かいご飯に甘さをなじませることができます。
炊き上がったら、しゃもじで甘納豆をつぶさないように、さっくり混ぜる。
器に盛って、ごま塩を振れば完成です。
好みで紅しょうがを添えるレシピもあります。
こうして見ると、普通の赤飯よりもかなり手軽。
「赤飯を作るのは大変」というイメージを、甘納豆赤飯はいい意味で裏切ってくれます。
なお、うるち米ともち米の割合や甘納豆の量などは、家庭やレシピによって違いがあります。
農林水産省のレシピでも、米の割合は好みによって分かれるとされています。
だからこそ、自分の家好みの甘さやもちもち感を探してみるのも面白そうです。
甘いのに、なぜか「ご飯」なんです
甘納豆赤飯を実際に食べると、最初は少し戸惑うかもしれません。
見た目は完全に赤飯。
でも、口に入れると甘納豆の甘さがやってくる。
さらに、ごま塩をかければ塩気が加わる。
この組み合わせが、何とも不思議です。
おはぎのようなお菓子とは違う。
かといって、普通の赤飯とも違う。
ちゃんと「ご飯」として、おかずと一緒に食べられる。
ここが甘納豆赤飯の面白いところだと思います。
北海道で育った人にとっては、この味が「赤飯の味」。
逆に、道外で小豆の赤飯に慣れている人が食べれば、
「赤飯なのに甘い!」
と驚くでしょう。
同じ「赤飯」という名前なのに、地域によってこれほど違う。
これも、日本の食文化の面白さですよね。
まとめ
今回紹介したのは、北海道の甘納豆赤飯。
小豆ではなく甘納豆を使い、食紅で鮮やかな色を付ける。
そして、甘いのにご飯として食べる。
初めて知った人には、かなり不思議な食べ物かもしれません。
でも、その背景を調べてみると、忙しい家庭でも手軽に作れるようにという発想から広まったとされる歴史があり、今では北海道の家庭や学校給食、スーパーやコンビニなどにも定着しています。
「北海道では赤飯が甘い」。
この一言だけでも十分面白いのですが、その裏側には、北海道の暮らしに合わせて変化してきた食文化がありました。
前回のべこもちもそうでしたが、身近すぎて当たり前だと思っている食べ物ほど、調べてみると意外な歴史が見えてきます。
さて、3日目はさらに身近なものを取り上げます。
もしかすると、北海道の家庭にある人なら、
「え?これも北海道限定なの?」
と思うかもしれません。
次回紹介するのは、料理そのものではなく、北海道民にはおなじみの調味料「めんみ」。
煮物、麺類、炒め物……いろいろな料理に使える、北海道の家庭の味です。
「めんみって全国で売ってるんじゃないの?」
そう思った方。
実は、ここにも北海道ならではの事情があるんです。
