🅾️O型しかいないシェアハウス🅾️
東京都世田谷区の住宅街に、ひときわ異彩を放つ一軒家があった。
その名も——「シェアハウスO(オー)」。入居条件は、ただひとつ。
“O型であること。”
「ちょっとまって。血液型で人選ぶの、普通に差別では……?」
そう抗議したのは、取材で訪れた地元フリーペーパーの記者・佐久間。
「いやいや、違うんですよ〜!」
のんきな笑顔で出てきたのは、住人代表の木本陽子。間違いなくO型の顔立ちである。つまり、おおらかそうで、なんかどこか抜けていそうで、でも妙に魅力的。そういう雰囲気だ。
「うち、かつていろんな血液型の人が住んでたんです。でもね、全員O型に統一したら、家の中がめっちゃ平和になったんです〜!」
「平和……って?」
「洗濯物は取り込んだ人の勝ち。冷蔵庫のプリンは“早い者勝ち”ルール。掃除当番? 気が向いたらでいいよ〜って言ってたら、だれも文句言わない!」
佐久間はペンを止めた。
「それ、平和じゃなくて、放置では……?」
「ちがうんです〜。適当なことに怒らない才能って、O型にしかないんですよ。たぶん」
彼女の背後から、他の住人がぞろぞろ現れた。
「ね〜? みんなもそう思うよね〜?」
「思う〜」
「超思う〜」
「え? 何の話? まあ思う〜」
O型住人たちの共通点:話の内容を聞かずに同意するスキルが高い。
「じゃあ具体的に、O型オンリーにして良かったことってあります?」
佐久間の質問に、陽子は指を折って答えた。
「まず、BBQが成功しやすい。」
「片付けがぐちゃぐちゃじゃないですか?」
「うん、でも楽しかったからOK〜!」
「次に、“だいたいでいける会計”が通る。」
「細かい清算は?」
「“千円でいいよね?”って言えばだいたい済む〜!」
「他には?」
「話の終着点がなくてもみんな満足する。」
佐久間は困惑してノートを閉じた。
「それ、取材記事にならないやつだ……」
すると、背後でガシャーンと何かが割れる音が。
「ヤバ、皿割ったかも〜」
「誰?」「あ、私かも〜」「どんまい〜」
O型たちは一瞬も騒がず、笑い合い、そして誰も拾いにいかなかった。
数秒後——
「……やばい、だれも拾いに行かないの気になる……!」
「ね、拾おっか? なんか悪い気してきた〜」
「ていうか私たち、けっこう気使いだよね?」
——そして全員で片付けた。
O型、それは放任と気遣いが同居する謎フォーメーション。
「あとね!」
陽子が両手を広げて言った。
「血液型で性格決まるなんて思ってないけど、“O型だけの場所”っていう縛りが、逆に自由なの!」
佐久間は苦笑しつつ頷いた。
「じゃあもし、A型がうっかり紛れ込んだら?」
「神経すり減らして1週間で出ていくと思う」
「B型だったら?」
「たぶん誰よりも馴染むけど、最終的に“自由すぎる”って出ていく」
「AB型なら?」
「出てくるとき、“実はO型だった”って言う。絶対」
佐久間は結局、その記事をこう締めくくった。
『O型だけのシェアハウス。その中には、たしかに小さな平和があった。
だいたい、だれも怒らない。それだけで、世界はちょっと平和だ。』
なお、記事の影響で応募が殺到し、二号館「シェアハウスO2」が誕生した。
こちらは、入居者全員がO型Rhマイナスである。超レア。
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