ミラーワールド 修正版。 第八話。
トキヲシティ市街地に冷たい雨が降る————
かつて近代的だったであろう都市の道路はボコボコと穴だらけと化していた。
降りしきる雨の中、ブルー達は大小のブタと戦闘を繰り広げていた。
息を切らせたアリアが背後のブルーに愚痴る。
「クソッ、数が多い」
「ああ、一匹ずつなら弱いんだがな。だが、これで最後だ!!」
ブルーが右足からキックを繰り出すと、最後のブタが水溜まりへと叩きつけられた。
水溜まりに溶け込むブタの黄色い体液。
「この辺りのブタ共は片づけたか」
赤いフードの袖で額の汗を拭うブルー。
降り続いていた雨が止む。
息を切らせるアリア。
アリアを見るとカイルは皆に話しかけた。
「雨も止んだ。少し休もう」
「そうですね兄貴、そうしましょう」
そう言うと、パトリックは背中の大きなバッグを降ろしペットボトルの水を取り出した。
水を配るパトリックが皆に質問する。
「皆さん、昔からこんなことを?」
「昔から?」
アリアはペットボトルを受け取るとパトリックに聞き返した。
ペットボトルの水を口に注ぎ込むと回想を始めるアリア。
「あの頃くらいからか……」
数年前————
シブサワシティのギルド内。
幼き日のアリアとルナが手を繋ぎ立っていた。
空腹なのか頻繁に左手で腹をさするルナ。
アリアは繋いでいたルナの右手を離しカウンターへと歩いて行った。
アリアは少し背伸びをすると、カウンターに肘をかけ、眼鏡をかけたギルドの男性に話しかけた。
「ねぇ、林さん。何か仕事ない?」
林は腹をさするルナをチラリと見ると、眉をしかめパソコンを叩き始めた。
そして、ハッとした表情をするとアリアに優しく語りかけた。
「そうだね、今の君達にはこれくらいかな。パン泥棒を探せ」
サフィル地区のマーケットは色とりどりの食材で溢れかえっていた。
ベーカリーの女性が常連と覚しき男性にバゲットを手渡す。
その様子を盗み見る幼き日のレイン。
男性がパンを受け取ろうとした時だった。
男性の目の前からバゲットが消えた。
すると、バゲットはレインの手の中に————
事の顛末を覗き見ていたアリアが振り返り、後ろのルナに話しかけた。
「見たかルナ?パン泥棒だ!!」
サフィル地区の外れにあるゲットー。
狭く薄汚れた部屋で、幼き日のセラとブルーがテーブルを挟むように椅子に腰かけていた。
そこへレインが家に帰ってくると、セラは立ち上がり出迎えた。
「お帰りなさい、レイン」
「ただいま、セラ」
レインはセラに挨拶すると、盗んだバゲットをテーブルの上に置き、椅子に腰かけるブルーに話しかけた。
「ブルー、今日の晩飯だ」
その様子を窓の外から見るアリア。
すると、アリアはドアを蹴破り部屋に入った。
アリアがバキバキと指を鳴らす。
「そこまでだ!!パン泥棒!!」
ブルーは立ち上がり、険しい顔でアリアを見ると近づいた。
そして、小さく口を開き呟いた。
「すまない……家族の為だ死んでくれ」
アリアは鼻から血を出し倒れた。
倒れたアリアを見るとルナが駆け寄った。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!!」
ルナはアリアを必死で揺さぶった。
何の反応もないアリアを抱きしめるとルナは大粒の涙を流した。
「死んでる……。たった一人の家族だったのに……」
「……家族?」
その様子を見守っていたセラは倒れているアリアに近づくと、両手を合わせ、祈るように技を唱え始めた。
「傷つきし、命に光、芽吹かせん……。ミラクル!!」
「う……ううん」
セラが技を発動させるとアリアは意識を取り戻した。
ルナは息を吹き返したアリアをギュッと抱き締めた。
アリアはギルドに戻りカウンター越しに林に話しかけた。
「ねぇ、林さん。お仕事ちょうだい」
「アリアちゃん、仕事が欲しい?どうして?」
林は優しく返事をするとアリアの後ろを見た。
そこには、ルナ、レイン、セラ、ブルーの四人が立っていた。
アリアは林の目を見るとうつむいた。
そして、少し考えるとアリアの口元がニコリと緩んだ。
アリアは頭を上げ、再び林の目を見つめ話した。
「新しい家族が出来たからさ!!」
そして、現在————
アリアはトキヲシティ市街地で空になったペットボトルの蓋を閉めると回想を終えた。
そして、アリアは笑みを浮かべると空のペットボトルをブルーに投げつけた。
「あの時は酷い目にあった。セラがいなきゃ死んでたな」
アリアにペットボトルを投げ返すブルー。
セラが二人を見ながら静かに言った。
でも、生きてる————
灰色の瓦礫に腰掛けパトリックが呟いた。
「なるほど、そんな過去が……」
「そろそろ、出発しよう」
カイルは皆に話しかけた。
ブルー達は王宮へと向かった————
ミラーワールド 第八話。終わり。
