排泄の紙を花に偽装する、哀しき文明人の見栄/風呂敷一枚でトイレットペーパーの生活感を抹殺する作法
尻を拭く紙にすら花を咲かせる、人間の滑稽で愛おしき美学。
排泄の紙を花に偽装する、哀しき文明人の見栄
風呂敷一枚でトイレットペーパーの生活感を抹殺する作法
トイレという個室は、人間がどれほど虚飾で身を固めても「ただの哺乳類」へと還る神聖な現場。それなのに、客が来るとなった途端、人はなぜ予備のトイレットペーパーを隠そうと血眼になるのか。「私は排泄などいたしません」とでも言いたげな澄まし顔。その見栄の浅ましさ。
かといって、年数回しか来ない来客のために専用の収納ケースを買い揃えるのも、いかにも愚昧。資本主義の罠にわざわざ飛び込む必要はない。
使うのは、タンスの肥やしになっている風呂敷一枚。七十センチ四方の布切れ一つで、無機質なロールを偽装する。

布を裏返し、長方形になるよう二つ折り。端にトイレットペーパーを置く。己の生々しい生活感を包み隠すように、右へ向かって丁寧に巻いていく。

余った両端の布。少し捻りを加えながら、ペーパーの中心にある芯の空洞へと容赦なくねじ込む。仕上げに、芯から布の端を少しだけ引き出し、ふわりと花弁のように広げる。

たった数十秒の小細工。

剥き出しだった「尻を拭く紙」が、一瞬にして静謐な和のオブジェへと化ける。漂う侘び寂びの空気。
文明とは、突き詰めれば「誤魔化しの美学」。客人はその偽りの花を愛でて「素敵ね」と微笑み、やがてその奥にある紙で用を足す。この滑稽な騙し合いこそ、人間関係を円滑にする知恵。布一枚で現実を覆い隠す日本の包む文化、なかなか侮れない。
〈了〉
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