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”MorningShower”人の死を踏み台にして茶番に逃げた『Tシャツが乾くまで』の救い難い倫理崩壊

他人の命を踏みにじり、おふざけに逃げる軽薄ドラマに感動など1ミリもない


人の死を踏み台にして茶番に逃げた『Tシャツが乾くまで』の救い難い倫理崩壊


凄惨な事故死を置き去りにした「夫婦ゲンカコメディ」に、制作者の軽薄なドヤ顔が透けて見える



最終回のエンドロールを見届けたあと、胸に残ったのは爽やかな感動でも心地よい余韻でもない。ただただ胸焼けのするような、生理的嫌悪感に近い「猛烈な気持ち悪さ」だった。


TVerの再生数が回ってSNSがバズれば、物語の倫理などドブに捨てても構わないのか。蒼井優主演の金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』の無様な着地点を見せつけられ、私はテレビの画面に向かって怒りを行き場なくぶつけるしかなかった。


言っておくが、主人公の咲子が実はバツ4だったとか、夫の充(私と同じ名字なのも反吐が出るほど気に食わないが)に失踪癖があったとか、そういう後出しジャンケンのトンデモ設定に腹を立てているのではない。そんなものは深夜の安っぽいB級サスペンスとして笑い飛ばせば済む話だ。


私がこのドラマの制作陣を心の底から軽蔑するのは、ひとりの人間の凄惨な「死」を物語の呼び水にしておきながら、後半で平然とおちゃらけたコメディへと舵を切った、そのグロテスクな鈍感さに対してである。


第1話で起きた高速バス転落事故。園田あずさは命を奪われ、同じバスに乗っていた充との不倫疑惑が持ち上がる。最愛の妻を理不尽に奪われ、絶望の淵に突き落とされた夫・樹生と、母親のぬくもりを永遠に失った幼い息子。物語の前半は、この取り返しのつかない悲劇と残酷な疑惑を軸に、シリアスな人間ドラマの顔をして視聴者を惹きつけていたはずだ。


ところが、第8話あたりから空気が一変する。失踪した咲子の行方を追う充が、スマホのインカメラを避けようと先輩女性とドタバタとくるくる回転し、コミカルなBGMが鳴り響く。咲子の離婚歴を聞かされるたびに、松山ケンイチが白目を剥かんばかりの顔芸を披露し、最終話では「離婚したくない」と大の大人が駄々をこねる。挙げ句の果てには、妻を亡くしたはずの樹生までが咲子のバツ4を軽口でイジり倒す始末だ。


……おい、ちょっと待て。お前たちのそのヘラヘラした茶番劇の足元には、冷たくなったあずさの遺体が埋まっていることを忘れたのか?


あずさが亡くなった引き金の一端は、間違いなく身勝手な失踪癖を持つ充にある。遺された家族は、一生癒えることのない傷を背負わされているのだ。その悲劇の当事者たちが、なぜ舌の根も乾かぬうちに、小洒落た舞台劇のようなテンポで夫婦ゲンカのコントを演じているのか。


もしこれが、実はあずさが生きていて記憶喪失でしたというバカバカしいオチならまだ許せた。だが彼女は本当に死んだのだ。二度と戻らない命と、残された遺族の地獄を「サスペンスの掴み」として安売りし、話の収拾がつかなくなったら「実はこいつら、ちょっとズレた愛すべき変人夫婦でした」とコメディに逃げ込む。この浅ましさ、不誠実さには鳥肌が立つ。


最終的に咲子は誰にも依存せず「ひとりで生きる道」を選び、さも現代的な自立した女性の爽快な結末であるかのように美化されていたが、笑わせるな。他人の人生を引っ掻き回し、死人の尊厳を踏みにじって辿り着いた自己満足のどこに共鳴しろというのか。


視聴者の情緒をいたずらに弄び、人の死すらおもちゃにする制作陣の傲慢さ。乾かないのはTシャツではなく、安っぽいウケ狙いに魂を売り渡したテレビ屋の、薄っぺらで卑しい倫理観そのものである。


〈了〉


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