”Morning Shot” 居眠り議員に憤死する国民の「自業自得」――甘ったれた主権者が飼い慣らす、税金泥棒のユートピア
居眠り議員を養っているのは誰だ? 鏡を見てから怒鳴り散らせ。
居眠り議員に憤死する国民の「自業自得」――甘ったれた主権者が飼い慣らす、税金泥棒のユートピア
法も知らず、選挙もサボり、お気持ちだけで怒り狂う大衆へ捧ぐ、身も蓋もない現実講義
テレビのワイドショーやネットの動画で、国会の本会議場が映し出されるたび、お決まりの「炎上劇」が幕を開ける。映っているのは、口を半開きにして気持ちよさそうに船を漕ぐ国会議員のセンセイ方だ。それを見た茶の間やSNSの有象無象は、沸騰したヤカンのように耳から湯気を立てて叫び出す。「税金泥棒!」「即刻クビにしろ!」「なぜ処分されないんだ!」と。
おめでたい連中だな、と心底呆れる。
「処分されないのはなぜか?」だと? 答えなんぞ秒で出る。「そんな法律がないから」だ。以上、終わり。これ以上でもこれ以下でもない。法治国家において、法に規定のない罪で人間を処罰することなどできはしない。そんな義務教育レベルの理屈すら忘れて「けしからん!」と喚き散らしているのだから、笑わせてくれる。
国会法を一度でも開いて読んだことがあるだろうか。開いたこともないだろう。そこには「本会議や委員会で居眠りをした者は職務怠慢として罰する」なんて文言は、どこをどう探したって一行も書かれていない。衆議院や参議院に認められている懲罰権というものは、議場の秩序を物理的に破壊したり、暴動を起こしたりして、議会の運営を妨害した連中を排除するためにある。
つまり、椅子に座っていびきをかいていようが、涎を垂らしていようが、議長の声をかき消す大爆音でも出さない限り、「議事の進行を妨害した」ことにはならないのだ。形式上はちゃんと席に座っているのだから、法律上は堂々たる「出席」である。小学校の学級会で「先生、〇〇君が寝てまーす!」とチクるガキじゃあるまいし、大の大人が集まる立法府で「寝ていたからお仕置きです」なんて通用するわけがない。
すると決まって、知恵の足りない正義漢が顔を真っ赤にしてこう言い出す。「だったら法律を変えればいいじゃないか!」と。
本気で言っているなら、おめでたすぎて頭に花畑でも咲いているんじゃないか。法律を作るのは誰だ? その国会議員たち、立法府だ。自分の首を絞める縄を、自分の手で丹念に編み上げるような大バカが、この世のどこにいる? 「国会で居眠りしたら歳費を削り、議席を剥奪します」なんて法案を自ら提出して可決する議員がいたら、そいつは政治家ではなくただの聖者か狂人だ。
不逮捕特権に守られ、巨額の歳費を懐に入れ、どれだけ居眠りしようがタバコ休憩で姿を消そうが一切お咎めなし。確かに甘すぎるし、反吐が出る特権階級のパラダイスだ。だが、その天国を作って維持させているのは一体誰だ? 誰の責任だ?
他でもない、有権者であるお前らの「自業自得」だ。
国民主権や議会制民主主義という言葉を、自分たちに都合のいい「甘やかしの権利」だと勘違いしている人間が多すぎる。民主主義の本質とは、「主権者である国民全員が、等しく政治の結果に対して全責任を負う」という、身の毛もよだつほど冷酷で過酷なシステムだ。
議員に対する最強にして唯一の懲罰権を、国民は最初から握っている。それが「選挙」だ。居眠りをした議員を片っ端から落選させ、無職のただのオッサンやオバサンに叩き落とす事例が何十件も続けば、どんな面の皮の厚い政治屋だって震え上がって背筋を伸ばすに決まっている。
だが、現実はどうだ? 居眠りしようが、失言しようが、地元に利益を引っ張ってくれば当選させる。業界団体の締め付けや、親の代からの後援会のしがらみで投票する。あるいは「誰がやっても同じだから」と投票をサボり、組織票を持つ居眠り議員を結果的にアシストする。
そうやって落選のリスクをゼロにしてやり、無条件でバッジをつけさせているのは国民自身じゃないか。痛くも痒くもないのだから、議員がぬくぬくと居眠りするのは極めて合理的で自然な行動だ。腐った議員にエサをやり、肥え太らせている飼い主が、檻の外から「うちの豚が言うことを聞かない」と泣き言を言っているのだから、滑稽すぎて涙が出る。
「民間の会社なら、会議中に寝ていたら即刻クビだ!」と息巻くサラリーマンもいるが、これも現場の労務管理を知らないド素人の寝言だ。
民間の労働者だって、労働基準法という分厚い鎧にこれでもかと守られている。社員が職務専念義務を怠り、居眠りをしたからといって、ノーワーク・ノーペイで差し引けるペナルティには厳しい上限がある。労働基準法第91条を見ろ。1回の制裁で差し引けるのは「1日分の平均賃金の半額」が限度だ。
じゃあ居眠りを理由に解雇できるかといえば、日本の裁判所は過保護なまでに労働者の味方をする。実際に、勤務中の居眠りを繰り返した社員をクビにした事務所が訴えられ、裁判所が「居眠りの頻度は推測が混じっており証拠が不十分」「居眠りによって業務に具体的な支障が出たとは言えない」として解雇を無効にした判例すらあるのだ。
民間ですら、現場がどれほど迷惑を被っていようが、法と判例の壁によって「居眠り社員一人」を排除することすら容易ではない。一般庶民の感覚からすれば「冗談だろ」と叫びたくなるような話だが、それが法という冷徹なルールの現実なのだ。
議員も労働者も同じだ。感情や道徳ではなく、定められた法という枠組みの中でしか裁かれない。
その法律が気に食わないなら、変えるしかない。だが、居眠りを禁止する法案を掲げる候補者が現れたところで、国民はそいつに票を投じない。「もっと手取りを増やせ」「消費税を下げろ」「バラマキをやれ」と、目先の自分の懐のことばかりを優先するからだ。結局、国民自身が「政治家のモラル」なんてものに一票を投じる気などサラサラないのだ。
自分たちは汗もかかず、リスクも負わず、選挙という最大の責任からも逃げ回りながら、テレビの前でポテトチップスを貪り食い、「政治家は甘えている!」と安全圏から唾を吐きかける。主権者という名の最高権力者でありながら、その義務を放棄して怪物を育て上げた張本人が、被害者面をして愚痴をこぼしている。
これ以上のグロテスクな喜劇があるだろうか。
すべては国民の自業自得であり、それこそが国民主権国家の厳然たる結末だ。
次にニュースで、気持ちよさそうに白目を剥いて眠りこける国会議員の顔を見かけたら、怒りで血圧を上げる前に洗面所へ行って鏡をじっくり見つめてみろ。そこに映っている無気力で無責任な間抜けの顔こそが、あの居眠り議員を雇い、毎月何百万円もの血税を貢ぎ続けている「真の元凶」の姿なのだから。
〈了〉
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